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「シャロア様お待ちしておりました」


執事がすぐに夫人のいるサロンへと案内してくれた。夫人はいつものように刺繍をしながら待ってくれていたようで私を見るなり刺繍を置いて立ち上がった。


「シャロちゃん! 先触れを貰ったわ! どういう事なの!?」


私は夫人に促されるまま隣に座り、話始める。


「お母様、すみません。王宮内の食堂でダイアンと言い合いをしてしまいました。皆が見ている前だったのに抑えきれず、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

「ダイアンとどんな事で言い合いになったの?」

「それが……」


私が口にしようとした時にその場の光景を思い出して涙が出そうになる。興奮して言ってしまった事も、言い過ぎたんじゃないかって思うと言葉が詰まって上手く出てくれない。


「ゆっくりで良いから話してちょうだい」


夫人は私に優しく諭すように話した。


「……はい。実は、王宮内の食堂でダイアンを見つけたので一緒に食事をしようとしたらダイアンは令嬢と仲良さそうに歩いていたのです。

きょ、距離がとても近くて恋人同士のように見えてしまって……。名前を聞いたのです」

「令嬢の名前はなんて言うの?」


「アンネリア・ラッスカ男爵令嬢だそうです。彼女は上位貴族の婚約をいくつも破棄させて来た嫡男狙いの令嬢で有名だと先輩たちは言っていたのです。

ダイアンからアンネリア嬢の名前を聞いた時に私、つい、カッとなって言ってしまったのです」


「なんて、言ったのかしら?」

「何故そんなにくっついているのかと。私は器量が狭いから彼女と仲良くしてほしくないと言いました」

「ダイアンはなんて言ったの?」

「彼女はダイアンに相談があると言うので聞いていただけだ、と……」


私の感情が揺り動かされ言葉を詰まらせると、夫人は私をギュッと抱きしめて頭をポンポンする。


「辛かったわね。嫌だったわよね」


その言葉を聞いた途端、堰を切ったように涙が溢れる。


「ううっ。本当は、言いたくなかった、んです。でも、ピタリとくっついている彼女が嫌で、ダイアンも拒否しなくて、二人とも名前で、呼び合っていて……」


夫人は私が泣き止むまで手を握ってくれている。夫人はどうやら怒っているようだった。


「あのバカ息子。シャロちゃんを泣かせるなんてどういう神経をしているのかしら。

それに……いつの世にも相談女っているのよね。男は馬鹿だからコロッと乗せられるのよ。一度締め上げないといけないわ。

シャロちゃん話してくれてありがとう。今日はもう帰りなさい。あとはこちらで話をします」


「はい、お義母様。ご迷惑をお掛けしてすみません」

「良いのよ。これくらい迷惑だなんて思っていないわ。むしろうちのバカ息子が迷惑を掛けてしまったわ。こちらこそごめんなさいね」


私は反対に夫人から謝罪されてしまった。もう少しで婚姻するというのにこんな事になってしまった。


その後、家に戻ると既に家族全員が執務室へと集合していたわ。

兄や父も今日は仕事を切り上げて帰ってきたのだとか。


「お帰り、シャロア。目が腫れているわ。可愛い顔が台無しよ。目を冷やしなさい」


母が開口一番にそう言うと姉が怒っていた。


「シャロア! 情けない。その場でもっと言ってやっても良いの! 男はちょっと可愛い子に声を掛けられてウキウキ浮かれ気分で気持ちよくなっているだけなんだから!」


「でも、姉様。私も大人げなかったの。ただ一緒にいて本当に相談に乗っただけかもしれなかったのに大勢の前で聞いてしまったんだもの」


私はまた思い出して眉を下げる。きっと彼の事だから、優しいから本当に相談に乗ってあげただけなの、と思いたい。


「まぁ、なんだ。その、もう少し様子を見るしかないな」


クレート兄様がそう話をすると家族も頷いている。


「あの後、ダイアンに直接俺から注意しておいた。あの令嬢と会うな、と。婚約者を不安にさせるような男とは結婚させられないとな。

ダイアンは分かったとだけ言っていたがどうだか。クレートの言うようにまずは様子をみるべきだな」


ジルド兄様はあの後ダイアンに釘を刺してくれたようだ。


それからは普段と変わらない家族団欒で過ごすことができた。きっと私が心配しすぎなのかもしれない。

ダイアンには明日会ったら謝ろう。


私はそう考えながら眠りについた。


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