表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】婚約破棄された女騎士には溺愛が待っていた。  作者: まるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/60

20

「私達は、帰った方がいいだろうな」

「はい、お父様」


すると子爵は今回の件に関してアンネリア嬢にも責任があるのだから私達に一言謝罪すべきだろうと言って私達を再び席に着くように話をした。

私としてはあまり関わりたくないと思ったのだけれど、子爵から同席するようにお願いがあったのだから仕方がない。


執事はすぐにアンネリア嬢を執務室へと通した。彼女は簡素なドレスを着て執務室にやってきた。


「初めましてアルモドバル子爵様並びに夫人。私、アンネリア・ラッスカと言います。現在ダイアン様とお付き合いしていますわ」


彼女は私達家族の事を気にする事無く子爵へ挨拶をした。


「で、今日先触れもなしにやってきたのは何故かね?」


子爵は厳しい口調でそう話す。ダイアンはあわあわと落ち着かない様子を見せている。まさか婚約破棄の日に彼女が突然くるとは思っていなかったのだろう。


「シャロアさんがここに居ると言うことは婚姻に関して両家で話し合いをしていたのでしょうか? 間に合って良かったわ! ごめんなさいね、シャロアさん。彼との婚約は破棄になってしまうわね……」


アンネリア嬢は私に向かって申し訳なさそうに言うけれど顔には笑みが零れている。


……嫌味なのか。


「どういう事でしょうか?」

「本当ならダイアンと会った時に言おうかと思ったのですが、嬉しくってつい、先触れもなく子爵様の邸に来てしまいましたの」


私の言葉を無視するように子爵に笑顔で話し続ける彼女。父達は苛立ちを隠せない様子。痺れを切らした子爵がアンネリア嬢に聞いてみる。


「で、何が言いたいのかね?」

「私のお腹の中には、将来のアルモドバル子爵の跡取りが居るのですわ」


部屋に居たアンネリア嬢以外が息を呑んだ。


「アン、それは、本当なのかい?」

「えぇ、もちろん! 本当よ? 先ほど王宮の医務官に見てもらったの。間違いないわ」


その言葉にアンネリア嬢は勝ち誇ったような満面の笑みを私に向けてきた。対照的にダイアンは今にも死にそうなほどの暗い顔になっている。


もう私には関係のない話でしょうけれど。


「アンネリア様、妊娠おめでとうございます。来月の式場をまだキャンセルしていなくて良かったですわ。私が選んだドレスもどうぞお使いください。ダイアン様、いえ、アルモドバル子爵子息様、アンネリア様とどうかお幸せに。

子爵、夫人、この度は誠におめでとうございます。私が至らない事は多々ありましたがいつも温かく見守って頂いた事本当に嬉しく感じておりました。今後はこうしてお邪魔する事は無くなりますが、いつでもお二人の健康と子爵家の繁栄を願っております。

では、私たちはお邪魔のようですのでそろそろお暇します」


私は子爵達に挨拶をしてから部屋を出た。


もう涙もでない。すらすらと出た言葉。すっかり冷めきってしまったのだと思う。愛ってこんなにすぐに無くなってしまうのね。自分自身に驚くと共に溜息が漏れてしまう。


「シャロア、無理しないでいいわ。今日は色々あったのだし、ゆっくり休みなさい」


邸に戻ってから母は心配するように声を掛けた。この後、父と母は二人で話し合うのだろう。私は部屋に戻った後、訓練着に着替えて庭でひたすら剣を振り回す。心が重いせいか身体も重く、思ったように剣を振ることができないでいる。


……今日は駄目ね。部屋に戻ろう。


私は何もする気が起きず部屋でこの日は過ごした。


翌日、いつものように仕事へ出勤する。今日は父と兄二人と一緒に歩いて王宮へと向かった。父は無表情のまま、兄は私の顔を見るなり、『まぁ、仕方がない。そんな事もあるさ』と苦笑していたわ。


出掛けに母は木剣を持っていたので私達を見送った後、庭で木剣を振り回していると思う。両親共に私には何も言わなかった。


「おはようございます! 昨日はお休み有難うございました!」

「シャロア、もう大丈夫なのか?」

「えぇ! おかげさまで完全に吹っ切れました。婚約も無くなった事ですし、行き遅れ街道をひた走ります」

「そ、そうか」


団長は私の言葉にタジタジになっている。


「あ、ラダン副団長、これを。有難うございました」


私は借りていたハンカチを副団長に返す。


「もう大丈夫なのか?」


副団長は私が泣いていた事を知っている一人。なんだか恥ずかしくなる。


「あの時は申し訳ありませんでした。でも、もう大丈夫です。彼への気持ちもすっかり冷めてしまいましたから」

「そうか。ならいいんだが」


私はその日から恋愛なんて過去の物だと心に蓋をして一心不乱に仕事に取り組んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ