◆十日目
随分と日が空いてしまって、申し訳ありませんでした。
よろしくお願いします
「うわぁ……すっごく美味しそう」
いつも通り仕事から帰って、シャワーを浴びて。明日は休みだし、ゆっくりご飯を食べようと冷蔵庫を開けた。
そこにあったのは、一つのパフェだった。
もちろん、こんな豪華で美味しそうなパフェを買った記憶はない。
パフェをもらった記憶も、冷蔵庫に入れた記憶もない。
少々慣れてきた感があるこの展開。
終わってなかったか。
ああ、終わってなかったんだな。
ピピッピピッという冷蔵庫の音。
少しぼうっとしてしまっていたことに気が付き、慌ててそれを取り出した。
その下には紙も一枚挟んであったので、それも手にとって、テーブルにつく。
パフェは、前と同じ様なものに見えるけど、前よりも層が多くて、一番上はチョコや赤いソースで飾り付けされててとても洗練されているように見えた。
何だか、すごく手が込んでいるみたいだけど、これ、多分、私に食べろってことだよね?
やっぱり意図がわからなくて、一緒に入っていた紙を広げて見る。
ぶはっ。
……失礼。ちょっと取り乱した。
そこには、私と同じか、それよりもたどたどしい絵で、頭を下げているコック?たぶん、前の絵に描かれていたコックさんの絵が描いてあった。
笑っちゃ悪いとわかっているけれど、何とも言えない味のある絵だ。
頭を下げているのは、ありがとうってこと?
いや、横にパフェの空き瓶、空の袋っぽいものが描いてある。
思わずぽんと手を打った。
ーーああ、食べちゃったごめん的な?
最初にパフェがなくなった時のショックを思い出す。
確かにあの時は、折れた心をさらにグリグリとされた気分だったけど、その後のゴタゴタですっかり忘れていた。
ということは、このパフェはそのお詫びってことでいいのかな。
この綺麗なパフェを作ったのは、多分この絵を描いた人なんだろうな。
ーー食べちゃって、悪かったと思ってくれていたんだ。
悪いと思っても、つい食べちゃったんだろうか?
気を抜くと、ぶふぉっと吹き出してしまいそうな可笑しさを抱えながら、スプーンを用意した。
せっかくだし、ありがたくこのパフェはいただくことにしよう。
一口食べると、前回よりも酸味の強い果実を使っているようだった。あ、ほら、カシス。カシスのような強い酸味。それにチョコレートがよく合う。
生クリームも、中のムースも、一つ一つが美味しい。カシスっぽいムースとチョコのムースを一緒に口に入れると、くーっとなる。
はぁー満足。
今日は幸せな気分で眠れそう。
私は少し考えて、付箋にスマホの絵文字を真似てにこにこマークを描く。舌を出して美味しかった風に。隣にスプーン。
洗ったパフェの器にそれを貼って、冷蔵庫に戻した。
「ごちそうさまでした」
そう冷蔵庫に声をかけると、私は甘い香りに包まれて、幸せな気分で眠りについた。
次回については、またいつになるかわかりませんが、頑張って最終話までいきたいと思います。
よろしくお願いします




