◆八日目
やっと異世界から戻ってきました
今日もコンビニ弁当の夕飯を終えると、私はもう何度も見返したその絵を見て、ため息をついた。
一枚目は、泣いている女の子。その後ろには、両親だろうか、男性と女性が倒れている絵。
二枚目は、コックと思しき人が、女の子にあのパフェを差し出している絵。
三枚目は女の子が嬉しそうにパフェを食べている絵。
鉛筆か何かで描いているようで、色はついていないけれど、私よりもよっぽど上手……というか写実的な絵だ。
ふわふわの髪の女の子。着ているのもアニメや映画で見るような、膝丈のふわふわドレス。
両親を亡くして悲しんでいた女の子が、パフェをもらって笑顔になった。絵だけを見るならそういうことだ。
でも、明らかに日本人じゃない彫りの深い顔の女の子。端っこにいくつか書かれた文字も明らかに日本語じゃない。それどころかアルファベットでもない。
漢字とも違うし、ハングル文字とも違う。かといってアラビア文字ってわけでもないようだ。
書かれている内容より、一体誰が書いているのかが気になった。
この絵のコックっぽい人がパフェを持っているんだから、きっとこの人がパフェを作った人なんだろう。
でも、この人と絵を描いた人が同じかというと違う気がする。
じゃああの冷蔵庫に現れた手は?
一つ一つのことが繋がらない。全部がちぐはぐな印象で、自分が一体、誰とやり取りしているのか分からない。
そもそもの話として、向こうはどこなのか。なんでよりにもよって、うちの冷蔵庫からパフェを持っていったのか。どうやって繋がってて、私がやり取りしてるのは誰なのか。
昨日まではわけがわからないまま、何となく気持ちが伝わってきて、何となくふわふわとしていた気持ちが萎んでいく。
得体のしれない違和感と、訳の分からない不気味さが戻ってきて、私はため息を付いた。
私、時計を持った白兎を追いかけたわけでも、意味ありげなクローゼットを開けたわけでも無いんだけどなあ。
「眠い。寝よう」
こちらは今日も仕事で疲れていて、明日も仕事で早いのだ。
本当かどうか知らないけど、あの絵だけを見れば、女の子が喜んだんだからもう良いのよね?
もう冷蔵庫から手は出てこないんでしょう……たぶん……そうであって欲しい。
これで終わったんだと、自分に言い聞かせて、私はお風呂もそこそこに、歯磨きだけしてベッドに潜り込んだ。
今回短かったので、次回はまた明日投稿します。




