第一話 登校は大変だ
『それでは次のニュースです。今日の12時からNASHI社の超人能力分析プレート”スーパーアイ”が発売されます。それに伴いNASHIストアの店頭にはかつてないほどの行列が出来ています。』
(ふぅーん、とんでもない時代になったもんだ。今年から超人科の生徒の健康診断に組み込まれるのかな。組み込まれて欲しいな、ロマンしかない。事前情報によると超人能力の命名もこれでできるらしい。俺の超人能力だったら熱の魔術師とかにしてほしいな。)
朝食を食べながらニュース番組を見ているやや赤みがかった髪を持つ少年竜田火色は考える。
今日は超名門校で火色も通う高校の入学式だ。火色は初対面だけでもクールな男に見せたいと自身の能力で肌の温度をマイナス5度くらいに調整している。
(温度の調整難しいんだよな。特にマイナス方面。今日は5分かからずにできるかな。意識して調整しないと間違ってとんでもない温度になっちゃうから大変なんだよな。でも、この能力のおかげであの白鳳高校の超人科に入れたし感謝しかない。)
そう、火色には肌の温度を変えられるという能力がある。能力が判明した頃は体温からプラスマイナス3度までしか変えられなかったが地道な努力の結果下はマイナス10度上は80度まで変化できるようになった。また、この能力の副次的効果として周りの温度に全く影響されない体を手に入れた。
(さあ、行くか)
火色は家から学校まで30kmもある距離を自転車で向かう。
そんなことをする理由は唯一つ。火色の夢はアスリートだからだ。
(やっぱり風を切るこの感覚、最高だな。道は確認したし迷わない。なんも問題がなく気持ちよく通学ができる。ますます高校生活が楽しみだ。)
火色は爆速で自転車を漕いでも一切疲れることのない超人的な体力を持っているのだ。しかも火色は運動も好きだ。だから火色にとっては本当に最高の時間だろう。
しばらく走って学校まで残り6kmほどになったとき目の前の道には金色で川崎錦之会という文字が書いてある特攻服を着た男が3人、道を塞いでいる。なにか簡易的な家みたいなものも立てている。
(なんだ?あの道、チンピラみたいな奴らが塞いでるぞ。まあどうせ違法だろうし強行突破するか)
「どけどけどけー!」
「なんだガキ!?ここは俺らの縄張りだぞ!」
「川崎錦之会に喧嘩売るってのか?」
「言っておくがここらにサツはいないし俺らは超人だぞ!!」
「すまん!俺はあの白鳳の超人科の超人なんだ!このまま突っ切らせてもらうぞ!」
「まじかよこんなやつがあの名門に!?」
「これでも俺は鍛えてるんだいくらエリート様でもぶっ飛ばすぞ?」
「かかってこいやあああ!!」
(やばい。啖呵を切ったもののセットした温度を変えたくないから高熱パンチを食らわせることはできない。肌に直接触って冷たさでビビらせてその隙に逃げるか)
ガラの悪いチンピラはそれぞれ、体に少しの弾性をもたせる能力(ゴ○ゴ○の実の超劣化版)、的中率70%程度の勘の能力、瞬時に爪を鋭くする能力を持っている。
勢いよくチンピラたちは突っ込んでくる。
火色は自転車をチンピラたちに投げつけそのまま殴りにかかる。
(やっべ。調子に乗って移動手段をぶん投げちまった!もうこのまま潰すか。喧嘩売ってきたコイツラが悪いんだし)
チンピラたちの能力も火色の能力も全く効果を成さず純粋な火色の身体能力がチンピラたちを蹂躙した。
「がほっ…」
「ごべんなざいぃぃぃ」
「すいません!喧嘩売った俺たちが悪いんですがどうか、どうか見逃してくれませんか!?」
土下座しながらチンピラたちは謝り続ける。
「大丈夫だからそんなに謝らないでくれ!あと俺は急いでるんだ!」
(やり過ぎた…交番に行かれたらヤバイ)
「ほんとですか!?ありがとうございます!!俺たちは川崎錦之会に所属してるんで舎弟になることはできませんが何かあればいつでも助太刀します!」
チンピラたちは自身の電話番号を書いた豪華なプレートを火色に渡す。
(これは嬉しい…のか?絶対に厄介ではある)
「ああ…機会があれば呼ぶよ」
こんな調子で竜田火色は学校に着いた。