プロローグ
どこにでもある普通の一軒家。その家の二階の自室に彼はいた。
今年、高校2年になる彼はPCモニターに映るアニメを見ていた。
「い〇リ、逝かないでくれ…」
彼は、画面越しに届くはずもなく、すでに決められている結末だが言葉を絞り出さずにはいられなかった。
しかし、物語の内容を改変できるわけもなくキャラクターは消えてしまった。
彼は、そのシーンを見て涙を流し続けていた。
彼の名前は「柊 朱雨」デビューできず毎日苦心している売れないライトノベル作家兼オタクである。
ペンネームは「弓矢 藍」というペンネームで活動している。
なぜ、このような状況になっていたかというと至極単純である。
彼が自身の小説創作の息抜きととしてみたアニメだったが、ついつい止まらず最終回まで見てしまった末路である。結果、最終回のヒロインが死に彼はショックで泣き崩れていた。
「分かっていた…分かってはいたんだ…」
そうこのアニメは何回も見ている。エンディングも飽きるほど見た。
しかし、それでも再び見たくなるのはオタクの性というやつなのではないかと朱雨は考える。
「うわぁぁぁぁぁぁぁい゛の゛り゛ぃぃぃぃぃぃぃ」
そして朱雨は小一時間ヒロインが死んだことによる虚無感と戦い続けた。