投票結果発表・完走した感想など
〇投票結果
【5位】獅束麗生の日常
作者:壱潟満幸
獲得点数:5点(2、1、1、1)
〈他参加者からの感想〉
・初めて使う道具は、ちゃんと説明を聞きましょう(鈴本恭一)
・「令嬢」を物語の中でどう使うか、私も他の方も色々考えていましたがこちらのアイデアが一番面白かったです。あくまで立場であるため主人公は普通の高校生であり、しかしその立場ゆえに主人公は日々戦いに身を投じているという話作りに活かされていたと思います。(JOE)
・古来(およそ昭和の時代から)より「女子学生」+「銃」の化学方程式は創作界隈では長く語り継がれてきましたが、令嬢という血や荘園の臭いとは無縁の、花と香水の香りに包まれた存在が無骨な銃器を手に無双するのは何とも言えぬエクスタシーを覚えてとても素晴らしいものでした。(七篠狐)
・近未来ギアで戦うエージェントもの、といった印象。
主人公が令嬢という情報によって、「パーティ」という隠語を字義通りのパーティーへの出席であると誤認させるミスリードの完成度が高くて良かったです。
強いて言えば主人公のひとり言が多めで、台詞がやや浮いている感があったので、仕事現場以外でも主人公と会話劇をやれる相手がいると座りが良くなりそうな気がします。(海雀撃鳥)
〈作者より〉
(コメントなし)
◇
【4位】ある田舎領主の回顧録
作者:七篠狐
獲得点数:10点(4、2、2、2)
〈他参加者からの感想〉
・幽霊お嬢様との一期一会に、清涼感と一抹の寂しさを感じました(鈴本恭一)
・私は一万文字をいかにフルに使って使って使い切るかしか考えていませんでしたしいかに「令嬢」というテーマを捻って使うかしか考えていませんでした。
しかしこの作品は3000文字以内で語り手の少年時代の懐かしい日々の話とテーマである「令嬢」との交流を素直に書ききった素晴らしい作品です。
本作の「令嬢」が当企画で読んだキャラクターで一番魅力的でした。(JOE)
・幽霊の令嬢とのニアミス、方向性が明確な短編でした。
もう少し尺を長めにとっても、と思わなくもないですが、逆にこの短さが短編としての純度を高めているのかも。令嬢のキャラも空気感もよかったです。(海雀撃鳥)
〈作者より〉
風邪で自分がぶっ倒れたり同僚や知り合いがぶっ倒れたりで散々な2022年の夏でしたが、めげずにのど飴舐めながら頑張りました。
本当は安直に人外百合を書こうかと思ったんですが、前回で既にやっちゃってたので、今回は夏らしく、若干のホラー味をキメてみました。
テーマとしては「一昔前のラジオホラー特番風味」。
実を言うと語り部君には取り憑かれた挙げ句に化け物にでもなってもらおうかと思っていたのですが、「そこまで行くとただのB級パニックホラーじゃん」となったので止めました。命拾いしたな。
如何せんホラーものに対する経験値が少ないので、当初のプロットから大分かけ離れた──例えるなら「オムレツ作ろうとしたらスフレパンケーキができた」的な──ものとなりました。色々と出しそこねた小ネタもあって若干消化不良な部分もありますが、僅かにでも楽しんでいただければ幸いです。
◇
【3位】悪役令嬢ウォルフラム・フィルム・ストロングホールドの食い倒れ帰郷
作者:海雀撃鳥
獲得点数:11点(4、3、3、1)
〈他参加者からの感想〉
・ウォーターマジックが便利すぎる
・ウォーターマジックが便利すぎる
・ウォーターマジックが便利すぎる
・ウォーターマジックが便利すぎる
・ウォルフラム嬢とシャムシェルさんの気の置けない掛け合いが楽しいです
・悪役要素が全然ないのはお約束
・全編ほぼ調理シーンだけを重ねていたので途中途中に別アクションを挟まれるとなおメリハリが出て良かったと思います
・文章力と台詞の滑らかさは全作品で一番でした(鈴本恭一)
・総合的なパワーでは私はこちらが一番だと思います。何といっても読みやすさがいい。設定にしろ心理描写にしろ何が書きたいかが「分かる」を超えて向こうからこちらに飛び込んでくるのです。
余談なんですがシャムシェルは女の子のはずなのにCV.塩沢兼人で再生されるんすよね。(JOE)
・降りしきる雨の中で食べる食事は、晴れの日とはまた違う趣があって良いものだと思います。
湿気た土や葉のじっとりとした重みのある香りに交じる、火の通った食事の芳しい香り。やや寒気の強い山の中で知り合いと狭い天幕の中、身を寄せ合いながら簡素な器に注がれたスープを飲むと、いつもと違った味わいを感じられて良かったものです。
そんな昔感じたものと同じ空気感を文中からも感じられて、非常に良かったです。(七篠狐)
〈作者より〉
普段は奥ゆかしく隠しているのですが、私は暴力の嵐みたいな話が大好きなので、最初は令嬢同士が王子の婚約者の座を巡ってステゴロするプロットで考えていました。
しかし前の「火焔砲の魔術師」とほぼ同じ構成になるのと、「せっかく令嬢ってテーマなのに、普段通り暴力で解決する話にするのはよくない気がする……もっと新しいものに挑戦すべきでは……?」と思ったため、思い切って死者ゼロ・暴力ゼロの会話中心の話をやることになりました。
結果として会話劇とか情景描写とかにリソースを割けて楽しかったのですが、「戦闘をしない」ことを意識するあまり、全体にアクションの少ない平坦な構成になった感があります。課題は多いですね。
◇
【2位】竜骨の町の機竜、竜星を臨みて翔る
作者:鈴本恭一
獲得点数:11点(4、3、3、1)
〈他参加者からの感想〉
・私が参加するにあたって特に苦慮したのが「どんな話にするか」、正確には「どんな一万文字前後で締める話にするか」でした。
その中でこちらの作品は壮大な設定と盛り上がるシーンと綺麗な余韻とを小さくまとまることなく一万文字前後でやり切った点が良かったです。(JOE)
・百合はお好きかい? 僕は大好物SA。種族の垣根、空と大地の大きく隔たれた境界線を超えて思い合う二人が出会う物語は数あれども、やはり何度読んでも飽きないものです。(七篠狐)
・ロボット要素のあるファンタジー異種百合物、馴れた手つきを感じます。上位存在並みに力の差がある相手が好感度マックスで懐いてくるのいいよね……。
オリジナリティがありつつ、理解してしまえば筋が通っていて魅力的な世界観が特徴的です。ただ心なしか1万字の1.5倍くらいあるような……?
固有名詞をあえて明確に説明せず書き進めていくスタイルからは「読んでいけば解る」「むしろ未知の単語を読み取っていく過程を楽しんでくれるはず」という読者への信頼を感じますが、情報量の密度が高いので人によってはとっつきづらさを感じるかもしれません。私は好きですが。(海雀撃鳥)
〈作者より〉
レギュレーションって言葉、知ってる????(ひと月前の自分へ)
本当に申し訳ありません。行けるかと思ったのですが、1万字に収まるプロットではありませんでした…。
実を言うと今回のお話は当企画のために考えたわけではなく、企画発表の前から考えていました。
競馬の繁殖システムをファンタジーで貴族風に表現できないかとアイデアを練っていたのですが、そこに今回のお題を聞いて、これは書けと神様が言っているのだと思った次第です。
……一応、最初はお題に沿って「○○お嬢様」を脳内大喜利大会で開催したのですが、何をやっても某100万点のお嬢様系一般人Vtuberの方のパチモンになってしまい、「あの人より面白いキャラを創作するの無理だよぉ…」と泣いて諦めた次第です。
参考にしたのは競馬の他にもイギリス貴族の爵位の継承システムであったり、モンスターハンターライズの操竜システムであったり、無限のリヴァイアスの操縦システムであったりProject Nimbusの武装だったり水星の魔女だったり米津玄師さんの『M八七』だったり星街すいせいさんの『天球、彗星は夜を跨いで』だったりと、色々混ぜ込みました。
好意を隠そうともしない懐き度MAX犬系幼馴染みと、クール系激重感情幼馴染みという性癖もぶち込みましたので、自分的には大満足です。
闇鍋企画は前回も思いましたが、まるで文芸部にいるかのようでとても楽しいですね。読んでくれる人がいる、というのも大きいです。書いたことのある人間達が集まって書いて読む、というのは、本当に貴重な経験です。また次回があれば是非参加したいです。主催者様、参加者の方々、本当にありがとうございました。
◇
【1位】令嬢荒野に走る
作者:JOE
獲得点数:13点(4、4、3、2)
〈他参加者からの感想〉
・集団バ美肉お嬢様はおハーブ生えますわ!
・聖書由来なネーミングがお洒落ですわ!
・主人公がピンチになって弱き者が窮鼠猫を噛んで逆転する流れは王道ですわ!(鈴本恭一)
・お止めなさい! 場美肉は美少女になりたいと願う、世に遍く人々の夢を叶えるもの。貴方がたサロメのそれは本当の場美肉ではありませんわ! この私が、PTTバトルで本当の場美肉というものを教えて差し上げますわ!! 喰らえ! 必殺・セイロン=パンチ!! 悪は滅びゆく定め! ですわー!
──それはさておき、王道な勧善懲悪のストーリーは、短編ながらもいい読み応えを感じられ、そこに一捻りを加えた面白い設定が加わって、とても面白い作品でした。(七篠狐)
・これ連載しないかな、そう思わせるポテンシャルを感じる作品でした。
開幕三行で「あーはいはいはい」と納得できる単純明快な世界観。天丼のように重ねられるお嬢様要素。そしてカジュアルな暴力。まさにパルプフィクション。
荒廃した世界に学生服のお嬢様という取り合わせもキャッチー。ポストアポカリプスに付き物のサイボーグやレイダー集団に「場美肉」や「首斬女【サロメ】」といった流行りのネーミングを織り込んでテーマに合わせているのも見事でした。(海雀撃鳥)
〈作者より〉
(コメントなし)
〇主催者より結びの言葉
なんか続いてしまった小説闇鍋企画第2弾、皆様ご参加ありがとうございました。
前回はひとり2票で投票して頂いた結果、票が数作品に集中して(それ自体は当然のべきことですが)得点の競り合いがあまり起きなかったため、今回はそれぞれが付けた順位によって点が入るボルダ式得点法を採用してみました。結果として全体の点数が増え、2位以下の作品にも得点が行き渡る形となったのではないかと思います。
今のところ第3回をやる予定はありませんが、やるとしたらささやかに商品を用意してみたりして、大きめの規模でやってみたいなとぼんやり考えています。
参加者の皆様、こうして作品に目を通してくださっている皆様に心より感謝いたします。どうもありがとうございました。あばよ! いぇい!