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浮遊少女が語る幻想世界の住民たち  作者: 零眠れい
第一章 『足跡』「うみってなに……?」
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27話 白衣少女は腕相撲する

「――さて、次はいよいよ本命か」


 不敵な笑みを浮かべているのがありありと伝わってくるその語調に、白衣少女も座りながら持ち前の恐れ知らずな不敵な笑みを返す。


「ああ。けど、その前に一つ。私の右腕のことだが……」

「知っているよ。とある危険極まりない研究で右腕を失い、自らが開発した義手を付けているんだよね」


 どこまでもセリフを先取りする強い占い師の発言に、白衣少女は目を見張る。


「未来予知ってのは凄いな。とびきり正確らしい……」

「――というのは建前で、本当の右腕は白衣の中に仕舞い、腕相撲用に開発した腕の形をした機械を取り付けている」

「……」


 今度こそ白衣少女は――いや、彼女のみならず傍で見守る二人までもが、目を丸くした。何から何まで見られ、見抜かれている。この強い占い師にとっては、これまでの出来事が八百長に過ぎなかったということか?

 昨日浮遊少女に声をかけられたところから、全て……。


(……まずいな)


 ここまでくるとどこまで見抜かれているのか計り知れない。まだ二人に言っていない『本当の姑息なズル』についても対処されているかも……だとしたら、この機械のみで戦わなくてはならないことになる。自信はないが、テストはしていないし彼女の強さは並大抵ではない。

 だが、白衣少女は負ける訳にはいかなかった。

 彼女の占い結果は絶対に欲しいというほどではないが、あれば飛躍的に調査が進む。できることなら欲しいところである。

 何よりここで負けたら自分のプライドが許さねぇ……! 腕相撲に負けたのが悔しくて作ったんだ。一度も使ってない上に今日まで忘れていたけど、これでも思い入れのある品。筋肉やら神秘やら無茶苦茶なもんに後れを取ってたまるかよ。

 もしもこの強い占い師が勝敗を知っていて、それでも勝負し相手をボコすという人を手のひらに転がして愉悦を覚えるような奴ならなおさらボコしたい……が、未来予知が能力ならタイムパラドックスを起こさない限り勝つことは不可能。さてどうしたものか……。

 白衣少女が腕を構えず、表情から焦りが見え始めた頃、強い占い師が嬉々として怪しく笑う。


「ふふふっ……腕相撲専用の科学文明兵器と戦える日が来るなんてね。長いこと挑戦を受けてきたけど、こんな対策を取られたのは初めてだよ。だからか勝利の女神がどちらに微笑むか、まるで勘が働かない」

「……その口ぶりからして、勝負の結果までは見てないのか?」


 聞き逃せないその発言に問う白衣少女。強い占い師は肯定する。


「当たり前だろう? いくら何でもそこまで予知してしまったらつまらないからね。試合が始まってからの未来は見ないように心掛けているのだよ」

「ふーん……」


 自分を乗り気にさせるため……ともとれるが、それが事実なら話は別だ。まだ勝敗が決まっていないのならやるだけ。

 白衣少女は機械の腕で、強い占い師の生身の手を握る。


「約束は守れよ占い師」

「守るさ。これでも商売だからね」

「――それでは第二回戦、行くよー」


 白髪少女にしがみつかれながらも再び伸び伸びとした声で、両者によって生み出された中央の拳に手を置く浮遊少女。

 そこにあるのはバチバチとした火花だけ。住宅街、登校中「おはよー」と言い合う生徒や、昨夜ゲームのやりすぎで寝不足気味のサラリーマンが交差する最中、立ち込める殺気に似た闘争気。

 強い占い師は本気を出そうと神経を尖らせ、左手で台を押さえる。

 対する白衣少女は、白衣の中に仕舞っていた右手でリモコンを握り直し、左手は台の下に入れた。

 左手の動作は更なるイカサマのためか、あるいは傲慢から出た動作か……どちらにせよ、強い占い師は咎めなかった。イカサマであるならその上で叩き潰す、傲慢であるならその鼻っ柱をへし折るまで。


「レディー……ゴーっ!」

「ふっ――!」

「くっ――!」


 コングがなり、白衣少女はリモコンを器用に操作して、強い占い師は腕に渾身の力を入れる。

 戦況はまず――拮抗した。双方の力はぶつかり合い、相殺する。機械がミシミシと音を立て、白衣少女は滲む冷や汗が止まらない。しかし……


(ちっ……)


 先に内心で舌打ちをしたのは、強い占い師だった。圧倒までいかずとも、せめて押したかったというのに。

 体力が無尽蔵にある機械相手ではこの状態はやばい。疲れてしまったら負けが確定する。早く勝負をつけなければ……。

 だが、腕相撲に必殺技なんてものがあるわけでもなく、瞬間的に増していた強さも徐々に弱まっていく。白衣少女の優勢となる。

 ここから逆転するには相手の機械が故障するのを期待して粘るか、こっちから指なりを破損させてしまうかのどちらか……もはや迷うまでもない。

 余っている力を振り絞り、彼女を棄権に追いやろうと圧力をかける強い占い師。その意図を勘付く白衣少女は、それでもどうすることもなくただ相手の甲を台に着かせることに徹した。

 とうとう強い占い師の甲が台に着くのもあとわずか――間に合えと機械の指部分を更にミシミシと悲鳴を上げさせ――確かな壊れた感触を味わったその時、急に機械の力が増大し、強い占い師の甲は地面に着く。


「そこまで! この勝負、白衣ちゃんの勝利!」

「……ふぅぅぅ~……」

(……?)


 いや、機械の力が増大? 本当にそうか?

 敗北によるショックよりも、先ほど感じた違和感に頭がいっぱいになる強い占い師。

 確かに急に、機械が強くなった。だが――それは少し表現がおかしくて――何というか、下に引き寄せられたのだ。そう……ちょうど彼女が台の下に入れた左手の位置に。


「……完敗だ。まさか負けるとはね」


 しかし、強い占い師は苦笑するばかりで指摘はしなかった。仮に狡い手を使われていたとしても、それを了承した上での真剣勝負である。その正体を看破することはできなかったし、こんな面白い相手と当たれただけでも満足だ。


「もしも次なんてものがあれば、その時は改造したものを持って戦ってくれよ」

「おう、私もあんたみたいに強い人とやれて良かったよ。改善点を見つけられたしね。人の身でありながら指を壊せるとは……筋肉も侮れないな」

「ははっ、鍛えてるからね」

「……は? 壊し……え?」


 腕そっくりな機械を外して、右袖に本物の腕を通す白衣少女。浮遊少女の後ろから観戦していた白髪少女は、彼女らの会話に絶句するが、スルーされた。それを拾うのは、超人ではない浮遊少女である。


「おや見習いくん、いつもの迫力とキレのあるツッコミはどうしたんだい?」

「迫力とキレなんてあの人の前で出せるかよ……」

「すっかり怖がられてしまったみたいだね。まぁいいけど」


 慣れているのか、澄ました口調の強い占い師。


「何はともあれ、腕相撲で私に勝利したんだ。約束通り道標を示そう」

「わーい!」

「それで? 私たちはこれから何をすればいい?」


 冒険好きの三人組は、瞳をキラキラと輝かせた。

 次の試練、次の冒険内容について、占い師は笑って、厳格を感じさせる声を辺りに響かせる。

 ――次の課題を提示しよう。

 汝らがこれから通るべき道に幸あらんことを願って。


人幻にんげんを探せ。人の字に幻と書くあれだ」


 さすれば君たちは真実に辿り着くことができるだろう――そう、占い師は予言した。

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