表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊少女が語る幻想世界の住民たち  作者: 零眠れい
第一章 『足跡』「うみってなに……?」
14/41

14話 浮遊少女はリーダーじゃない

 認識――されない……?

 それは……つまりどういうことだ? 靴を探し回ったのは徒労だったということか?

 疑問より、早合点にそう思った白髪少女。浮遊少女は黙って白衣少女の言葉を待つ。

 前でしゃがむ頼もしい子供は、少し考える素振りを見せてからもう一度シャッター音を鳴らす。その結果に一人で頷いた後、こちらに背を向けたまま厳かに二本の指を立てた。


「大きく分けられる可能性は二つ。『本物』か『偽物』かだ」

「……ふむ」

「詳しく解説してくれ。参謀」

「え、私参謀なの?」


 浮遊少女から参謀呼ばわりされ、思わず振り向く白衣少女。厳かな雰囲気が消えた。


「あれ……言ってなかったかい? 君参謀だよ? 参謀兼司令官だよ?」

「初耳だよ! お前らとつるんでもう何年かするけど聞いてないよ!」


 白衣少女はたまらず絶叫する。あ、もうこれ厳かな雰囲気に戻れないわ。


「お前参謀と司令官の意味知ってるか!? 参謀ってのは司令官を補佐する役割だぞ!? 司令官やりながら自分で自分をサポートしろと!?」

「だいじょーぶ。白衣ちゃんならできる」


 他人事のように親指を立てる浮遊少女。しかし白衣少女は全力でカメラを持ってない方の手を振る。


「いやいやいや、私はあくまでもできる限りの助言をするだけしてあとは発明品作っていたいんだよ! やだよ作戦とか考えて指揮するの!」

「いうて君、今の今までやってたよ? 馬車馬のように私たちが君の手となり足となって働いてきたじゃないか」

「私だって動いてるぞ! こうして現場に向かってるぞ!」

「そんなことは関係ないのだよ。君が指針を示してる時点でその役割は決定されている」

「勝手に押し付けんな! 対人スキルが求められるのは苦手なんだよ! つかまさか、お前も私のことそんな目で見てたのか!?」

「……え? ……あ……うん……」


 白衣少女がこちらに向き直り訊かれ、眼が点になりながらかろうじて答える白髪少女。「だああぁぁぁ!!」と白衣少女は頭をかく。相当嫌らしい。というか自覚なかったのに驚きだ。


「なんでこんな奴(自分)を司令官に置いてんだよ! このチーム終わってるわ!」

「こらこら、そうやって自分を卑下するのは良くないよ。十分我らを導けてる。もっと自信を持て」

「ちげーよ私は生涯孤独の発明家としての在り方を貫こうとしてたんだよ……普通私みたいな奴をそんな役割に置くか?」

「私たちが決めたというより、成り行きみたいな感じでなっていたよ。こっちが何も言わずともリーダーっぽいこと言うんだもん」

「りりり、リーダー!? あのメンバーの士気高めたりまとめたりするあれ!?」


 リーダーという途方もなく明るいワードに、ふらつきさえ覚える白衣少女。なんてことだ。そんな目で見られてたなんて……。


「いや、私たちは元々士気高いからその必要はない。このチーム内では私たちに何をするべきか教え、目の前にいてくれたらそれでいい」

「…………そ、それなら……いやでも……」


 何を想像しているのやら、白衣少女は顔を真っ赤にして両手で顔を覆い隠した。確かに大層な役割といえばそうだが、どうやら自然体で自分たちをリードしてくれていたらしい。本人としては好き勝手にやっていただけなのだろう。

 ただ……と浮遊少女は考える。

 割と軽い発言をしていたつもりだったのだが、ここまで話が発展するとは思わなかった。彼女が好きなことをやっている時、周りが見えてないことには気づいていたが、あまり見えてないどころかとんでもなく見えてないのかも。それか、基本的に数人で行動していたからそういう一面が判明しづらかっただけで、大勢の前だと恥ずかしいという感情が芽生えるのか? ……いや、それはないか。

 おそらくリーダーの素質というものに対する誤解があるのだろう。あるいは己に対する誤解か。どちらにせよ誤解は解かなければなるまい。

 今となっては事件より白衣少女の方に興味が引かれてきた浮遊少女。そんな中、白髪少女が弱々しく声を上げる。


「あ、あの……それより偽物と本物って……」

「ままま、まぁあ!? 参謀は恐らく自分にあってる役職だろうし!? それは別にいいんだけど……司令官とかリーダーは絶対私のガラじゃないって!」

「おいおい何を思い込んでいるんだい。リーダーというのは誰よりも好奇心が強く、事件の真相を何としてでも解きたいと思っていればそれでいいんだ」

「そりゃお前のことだろ! お前がやれよ!」

「私より君の方が素直で派手で曲がらないだろう。君の方が適任だ」

「興味失った途端に豹変するよ! それを何とかするのがリーダーだろ!? お前よく仲立人になってくれるじゃん!」

「それは否定しないし、事のきっかけを作るのも私だが……私が君たちを一度でもリードできたことはあるかい? みんなの手本になるような事件への真摯な姿勢を見せたことが?」

「――――ッ! さっきから何も言わないお前はどう思ってるんだっ!?」

「すっげーどうでもいいです」

「くぅぅぅ……」


 今更すぎることにはっきり「どうでもいい」と口にする白髪少女。白衣少女は爪を噛んで、何とかリーダーという自分に合わないだろう役職から外れられないかと画策する。

 彼女の言う通り、浮遊少女がそういう人として手本となるような振舞いをすることは滅多にない。白髪少女もこの中で限定するとどちらかといえば消極的な方だ。

 自分しか……いないというのか? しかしそんな……人をまとめるなんて、もっと社会的な人間がやるべきことだろう。自分はただ欲求に素直なだけの発明好きだ。誰かに誘われなければ人と接することはおろか、部品の買い出し以外で外に出ることもない。なぜ二人はこんな自分を司令官にと思えたんだ……!?

 悶々と思考を巡らす白衣少女に、浮遊少女が落ち着いた声色で声をかける。


「それにね白衣ちゃん」

「……ん?」

「私はリーダーとか司令官なんて責任を負わなければならない立場が一番嫌いなんだ。投げるだけ投げて放っておきたい」


 ああ。やっぱこいつダメだ。人として。

 堂々と言い放つ浮遊少女に、白衣少女のみならず白髪少女でさえもジト目を向ける。

 しかし……その眼差しを切って、白衣少女は目線を下げた。


「……でも、私だって似たようなもんだよ。『責任は私が持つ!』とか『ここは俺に任せて先に行け!』とか『仲間を見殺しにはできない……!』なんて一生言えないよ……」

「せめて最後のセリフは言えよ!」


 深刻そうな面持ちをする白衣少女に、さすがの白髪少女も突っ込まずにはいられなかった。

 だが、浮遊少女はそれでいいと、白衣少女の肩に手を乗せる。


「言えなくていいさ。言わないでいい。それでこそ白衣ちゃんだ。そんな君に私たちはリードされる。先も述べたように、好奇心が強くて真相を明かしたいと思ってくれればそれでいい」

「……」

「見殺しにするなよ……するなよ……!」


 なぜ二人が、そんな光みたいな役割に影みたいな自分を推すのか、何を聞いてもわからない。好奇心に身を滅ぼす勢いで突っ走り、事件の真相を明かしたいなんて……そんな簡単なことを思うだけでいいのか?

 ……でも、こんな自分でいいと言ってくれるなら、それはそれでアリなのだろうか?

 …………この二人を信じて。


「……わかった。ただし何も期待するなよ」

「いいさ。これまで通り、何も考えずに振舞ってくれればいい」


 ひとまず和解して、白衣少女が司令官兼参謀になることが決定された。


「これからもよろしく頼むよ。司令官参謀リーダー殿」

「う、うん……」


 浮遊少女の顔を、とてもじゃないが直視できず曖昧な視線で白衣少女は頷く。


「……え? 今話で足跡について解説されないの?」


 白髪少女の呟きは、二人に聞こえることなく海に流されるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ