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怪しい社

「この先だよ」

 歩くたびにどんどんと辺りからは人気がなくなっていき、商店街の裏通りを抜け、路地裏を抜け、たどり着いたのは小さな森だった。手入れされていないのか鬱蒼と草木が茂り、視界がひどく悪い。

「この森の中?」

 鈴がれいんにそう訊ねた。れいんはこくりと頷く。

「それっぽくなってきたわね。ワクワクするわ!」

 鈴が意気込んで言った。いやいや、待てよ、と柑吉がすかさず制する。

「ここを通るのか? 危ないだろ、道らしき道もないし。小さな子もいるんだぞ、もし何かあったら……」

「なぁに? ビビってるの、中部くん?」

「馬鹿、そんなんじゃねえ! 猪とかもいないとは言い切れねえだろ」

「まあ、確かに、お客さんに何かあったら僕らは責任取れないからね……」

「大丈夫! わたし、いつもここで遊んでるから」

「あ、そう? なら大丈夫かな」

 鈴も詩京には逆らえない。だから店長が同調してくれたとき、勝ったと思ったのに、れいんの一言に詩京はあっさり首を縦に振ってしまった。

 本当に大丈夫なのかよ、と柑吉は呟くように言ったが、その声が聞こえていようといまいともはや関係がないことだった。こうなってしまえばもう自分の意見が通らないのは分かりきっていることなのだから。



「……なぁ、嬢ちゃん」

 柑吉はれいんにそっと耳打ちした。……つもりだったのだが、やたらと耳のいい鈴には聞こえていたらしく、ニヤニヤしながら二人の間に割って入った。

「中部くん、れいんちゃんのこと、嬢ちゃんって呼んでるの?」

「……何か悪いかよ」

「べっつに~?」

 鈴はからかうようにそう言う。柑吉はわざとらしく大きく舌打ちしてみせた。

「ふたりはお付き合いしてるの?」

 ふと、れいんが無邪気にそう言った。柑吉と鈴はひどく驚いて、ギャグ漫画のように転びかけた。

「なっ、嬢ちゃん、そう見えるのか?」

「うん、すっごく仲良しに見える!」

「子供はそういう機微に敏感だしねえ、本当の二人を見抜いてるのかな」

 詩京までもが一緒になってそんなことを言い出した。柑吉が否定するより先に、鈴が珍しくひどく取り乱した様子で否定する。

「店長までやめてくださいよ! そ、それより中部くん、さっきれいんちゃんになんて言おうとしたの?」

「え? あ、ああ……。こんな森の奥に何があるんだって聞こうとしたんだけど、もうその必要はないみたいだ」

「えっ?」

「ほら、前を見ろ。いかにもな社があるだろ」

 柑吉に言われて、鈴は顔を上げて前を見た。そこには、古ぼけた小さな社があった。何かの鳥を模したらしい置物が置かれているが、苔むしていて種類までは分からない。

 社の中は薄暗く、人の気配は感じられなかった。

「この中におばけがいるの?」

 詩京がれいんにそう訊いた。れいんはこくりと頷く。

「そうなの。待たせてるから、早く来て!」

「待たせてるって……おばけをか」

 れいんはどうやら幽霊が見えるだけでなく、意思疎通まで可能らしい。幽霊など非科学的なことは一切信じていない柑吉だったが、こんな森の奥の社を知っていたりするようなので、れいんには何か特別なちからや霊と引き合うものがあるのかもしれないと、少し考え始めていた。

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