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第一印象で決めてました

 あの日の興奮が、目の前によみがえってくる。時計を見ると、午前11時前。日曜だというのに、今日の俺の目はいつもより、200%ばかしギンギンに冴えている。思えば、あの日の俺も、こんな感じだった───


────2035年11月3日 東京アミューズメントショー会場


「おい!まじか、おい!今出てきた兄ちゃん、リアルに腰抜かしている!どんだけだよ、リベルテ!いやいや、ありえねぇだろ、ふつう!どう思うよ⁉」

「ありゃ、オーガか何かに襲われそうになって、死ぬ直前で強制ログアウトさせられたと見たね。まだ立てないとか、どんだけ衝撃だったのやら。」

「いやいやいや。オーガなんか現れるか⁉そりゃゲームじゃ超定番だが、そんなお楽しみは、やっぱりサービスインからじゃね?さすがに今回の体験版でそんなとこまで作りこんでいるとは、思えねぇよ!」


 話す俺らのテンションは、高い。例えるなら、日曜の朝6時にロックを流して、全力で歌って、ヘドバンしているくらいに高い。近所迷惑?ほっとけ。


 いや、俺らだけじゃない。周りの奴らも、先に体験した人を見て、嬉々としてあーでもない、こーでもない、と言い合っている。今から始まる夢の時間が楽しみで仕方がないのだ。千葉にあるのに東京と言い張っているテーマパークで入場を待つ何百倍もワクワクしている。これ以上待っていたら、体から変なものがあふれ出しそうだ。


 東京アミューズメントショー2035。前身である、新作ゲームの公開発表イベントが、その垣根を超え、様々なアミューズメントコンテンツを包括するようになったのは、記憶に新しい。空中を走る自動車レースや、眼鏡型の携帯デバイスなど、毎年革新的なコンテンツがこのイベントを通じて、公開されており、今年も例に漏れず、その熱量は高かった。しかし、そんな中でも、今年の盛り上がりは、格別だ。なぜか。あえて言おう。ついに始まるのだよ。VRMMOの時代が‼


 数年前、北米でとある研究が発表された。無覚醒状態の人間に対して、特定の電気信号と刺激を与えることで、人体を媒介とした電子データのやり取りが可能になる、というものだった。もとは、医療用に行われていた研究だったらしい。詳しくは、ようわからん。


 が‼ちょっと考えてもみてほしい。人間の体を媒介として、無覚醒状態の人間に特定の電気信号と刺激を送ることができる。ということは?…と、いうことは?


 そう!愛すべき人類はついにやってのけたのさ!人が、電脳空間で、過ごすことができるようになった!あぁ、なんていい時代だ!俺が生きている間にそうなってくれて、ありがとう!神様!今だけ最大の感謝を!


 そこから始まったのは、怒涛の技術革新さ!電子データを送受信できるということは、メールや、携帯なんかはいらないし、今では、出社せずに会議を自宅で行う企業なんかも出てきている始末。もちろん倫理上の問題や、アクセス権を踏まえたプライバシーの問題、宗教上での問題なんてのもあったけど、そんなあれこれは徐々に整備されていったね。


 そして、ついに、ついに先日、ある企業から、発表されたのが、「Liberte」である。曰く、新しい世界の創造、「Liberte」内でできて現世で出来ないことがないなど、超強気の謳い文句と供に公開されたそれは、衝撃的なPVと共に全世界に広まった。時間にして、約一分弱に満たないその動画に、俺は魅了された。大きなバザールを行きかう人、エルフ、獣人、ドワーフ、そう。彼らがそこに、居た、のである。


 そして!その動画の最後に、「Liberte」の初お目見えの場所として、ここ東京アミューズメントショーが書いてあったってわけさ。閑話休題。


 あぁ、そして、いま!まさにその夢の時間が!俺に訪れようとしている!


「一世!次だぞ!なぁ!ちゃんと中で何があったか覚えとけよ!Tritterでも、人によって体験した物が違うって言うし、お互いに何があったか、共有だかんな!」

「あたぼうよ!まかせとけよ、満。あぁ、マジか。もう本当に始まっちまう!」


ドクン、ドクン。

 前の2人が呼ばれてついに一番前まで来た。昨日の深夜から並んで、約半日。いや、例の動画を見てから、もう三か月か。長かった。でももうここまで来ると、少し落ち着いている。今あるのは、内に秘めた膨大な好奇心だけだ。


 受付係のお姉さんが俺らを呼びに来る。

「受付番号1264番、1265番の方、大変お待たせいたしました。整理券のご提示をお願いいたします。…はい。確認できました。さっそくリベルテへお二人をご案内したいと思いますが、よろしいでしょうか?」


「「はい!よろしくお願いします!」」


 少し驚いた顔のお姉さんはにこりと微笑んだ。

「はい♬それでは、ご案内いたしますね。中に入りましたら、ご自身の番号が書かれている部屋に進んでください。中に入りましたら、荷物を置いて、部屋にあるヘッドギアをつけ、ベッドに寝ておいてください。それでは、いってらっしゃいませ。」


 いよいよだ。今日、俺は新しい世界に触れる。果たして、出るのは、鬼か蛇か。俺と満は顔を見合わせる。

「んじゃ、逝くか」

「おう、逝こう。」

そして、一歩を踏み出した。


皆様初めまして。南戸と申します。本作品は、私の処女作でございます。


私自身、本作と一緒に成長できたらと思っておりますので、

至らぬ部分が多い私でございますが、何卒よろしくお願いいたします。

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