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05 まずはおやすみなさい。


 「あのドラゴンを操ってる場所が分かっただと!?」

 「というかあれ操られてたのか!!?」

 「どこだ!その場所は!!!!」



 その報は瞬く間に広がった。


 

 デルタダガーによる誘導空対空核兵器ファルコンによる攻撃が行われ、目下の脅威は取り払われたものの、そう何度も小型とはいえ核ミサイルを使うわけにもいかない為に、下位種族達、否、人類達は新たな兵器開発を行っていた。


 異世界転生者達による技術貢献により、電気や水道などのインフラの英知が普及されつつあった現状だからできる芸当であった。


 手始めに核ミサイルで燃え残ったドラゴンの残骸や通常兵器でどうにか仕留めたドラゴンの肉片や鱗、爪等を分析していたところに、そのドラゴンを操っていた存在がいる事に気づき、そしてその場所が特定できたというのだ。


 「東大陸、南部中央に大出力の魔法による電波ならぬ魔波のようなものを観測した。これはドラゴン出現前より常に出されているが、出現時はさらに頻回して発信されているのが確認されている。詳しい詳細はこれだ」

 そう言って白衣を着た転生者が書類を渡す。


 「東大陸南部中央……やはり座標的に敵のど真ん中か……」

 それを見たリーダー格の転生者が言う。


 白衣の転生者が渡した書類には、東大陸南部中央部分において強力な魔波が発信されている


 「海軍の状況は? どうにか揚陸できないか?」

 リーダー格は白い提督服を着こんだ転生者の女性に尋ねた。


 「無理。ただでさえ人員確保が大変で稼働率低かったのに、今回のドラゴンでなけなしの艦隊が焼かれてお手上げ状態。というかドラゴンの件なくても1000人以上の揚陸は無理だわ」


 「船の場合は100人以上の人員が必要で1人1人専用の知識を埋め込まないとだからな……」

 「学校も今作ってるけど数十年はかかるよね……」

 「この世界、海の魔物がいないからあんまり海軍重要じゃないからなぁ……」


 等々、転生者同士で会話が行われる。


 「そもそも制圧なんかせずに核兵器を落として終わりでいいんじゃないか。なに普通に制圧する話になってるんだ」

 一人の転生者がそう言う。


 「敵宗教施設の占領に伴い、敵宗教についての研究の結果、彼らの信仰の対象『プリームム』の存在が確認され、信託と言う名の指示が出ている事が確認されています」

 学者の女性の転生者が言う。


 「無論、神の類ではなくあくまで生物として存在しているというのが我々敵性研究調査部の結論です」


 「あのドラゴンを生み出し、あまつさえ操っている存在か……」


 「はい、そしてプリームムと会う事ができる聖地こそがこの東大陸南部中央であると結論付ける事ができます」


 「ならば尚更核兵器を落として消滅させた方がいいのでは?」

 先ほどの核兵器使用主張者の転生者はそう言う。


 「……会う事ができる。聖地……ただのゲートという可能性があるのか?」

 リーダー格の転生者が言う。


 「その通りです。出入口を核で吹き飛ばしても中のプリームムと呼ばれる存在にダメージを与える事ができない可能性が高いです」


 「……誰かが核兵器を持って、プリームムの御前で発動させろってか……」

 「なにも核兵器でなくてもいいだろう。そんなに核の冬を起こしたいのか」

 「すまない」

 先ほどの核兵器使用主張者がそのやり取りの末に謝る。


 「いや、それがそうもいかない」

 科学者風の転生者が申し訳なさそうに言う。


 「この魔波の出力からすると、これ最低でも100mぐらいの生物って事になる」

 「「「100m!?」」」


 その言葉に騒然となる場


 「100mってどんくらい!?」

 「丁度ゴ〇ラ4代目のデカさだ」

 「〇オガイ〇ーのキ〇グジェ〇ダーだ」

 「イ〇〇ン」

 「落ち着け皆。伏字で何言ってるかわかんねぇよ」

 「お前が落ち着け。伏字ってなんだよ、デッドのプールさんみたいに漫画の吹き出しでも見えてるのかよ」

 「お、その表現いいね。まぁ大体そんな所だ」


 等と、100mの大きさ比べが始まっていた。


 「最低で100mか……最大では?」

 そんな中、リーダー格の転生者は科学者風の転生者に尋ねる。


 「今の所東京タワー並みのでかさ…まあ大体300mだと思うが、全然わからない。ってのが本音だわな。まぁそんな訳で核兵器でも使わないと倒せねぇってのが我々技術研究班の見解」

 そう言ってコーヒーをすする科学者風の転生者。


 しかし彼のこの様子を見て「あ、こいつ何か策があるな」と皆が思う。

 この転生者は何か策がある場合はコーヒーを飲んでいるのが通例となっているのだ。


 「で、『例の武器』の開発は?」

 「ああ、もう複製の段階に入ってる」

 コーヒーを飲み終えたのを確認して尋ねるリーダー格。


 「例のドラゴンの爪やら鱗やらを解析して作った武器と鎧。まぁ見た目完全にサイボーグな見た目だな。対ドラゴンライフルに擦り下ろしブレードに……まぁ核兵器使わなくても倒せる装備は用意できてる」

 「助かった。これでどうにか勝てるかもしれない」

 リーダー格は不敵に笑ってみせた。


 「まぁいずれにせよ。敵の聖地とやらに乗り込んで神様きどりの化け物をやっつけに行く訳か」

 一人の転生者がやれやれとため息をつく。


 「怖いなら残っていい。志願制だ。輸送機で敵聖地上空まで飛んで、降下する。無理強いはしない。相手は仮にも神だと信仰を集めている巨大魔物だ」

 リーダー格はそう言ってみせた。


 「だってさ?」

 仲間の転生者は悪戯そうな顔をする。


 「誰に向かって物言ってんだ? 『神殺し』とかいうサイコーに面白い事、降りる訳ねぇだろ?」

 転生者はにやりと笑顔を見せる。



―――――――惑星中核・表層―――――――――


 《異世界転生者よ。何故この世界を犯す?


 それほどこの世界が憎いのか? 醜いのか?


 強い肉体と生命力、そして生殖による発展。それこそがこの世界の、この星のコトワリ


 お前達のような弱い肉体と生命力をもつ下位種族は、強い上位種族に統合されるのが本来のコトワリ

 

 何故、そのコトワリに従わぬ? それもお前達の言う『愛』という概念の仕業なのか?


 生殖行為を介さぬ『愛』など幻想にすぎない。


 お前達の居た世界ではそれを愛というのかも知れないが、この世界では幻想なのだ。


 何故それが分からない? それとも分かった上で否定するのか? 


 それは他の下位種族達を思い通りに操り、上位種族達に殺戮の限りを尽くさねばならない程の事なのか?


 それほどまでにこの世界は歪んでいるのか? お前達が歪んでいるのではなく?


 矛を収めよ。転生者……私とこの世界はお前達下位種族を滅ぼす気等ない。


 ただ統合される日がくるだけなのだ。受け入れるのだ。転生者よ……》


 

 東大陸南部中央部にある聖地と呼ばれる黒曜石でできた黒い神殿へ降り立った転生者達は、その異形な鎧と細い線としか言えない目を怪しく輝かせ、警備の兵士達をなぎ倒し、ついに最深部のゲートへたどり着き、中へ飛び込んでいた。


 そこには竜の形をした巨大な魔物……今まで対峙したどの竜よりも気品溢れる、美しい竜であった。

 これが邪神プリームム……。と驚嘆の感情を露わにした。


 そして脳内に響く声。


 転生者達はその声に聞き入っていたが、次第に機嫌を悪くしていった。


 『そんなのお断りだ』


 転生者の一人が言う。


 『そんなの愛じゃねぇよ』

 別の声が続く。


 『愛も知らない獣が。死ね』

 不機嫌な声が響く。


 『もういいよ。言葉は不要だよ。神様、悪いけど死んでくれよ』

 

 吐き捨てるような、醜い声が響く。



 なんで……?


 なんでわかってくれないの……?


 プリームムはそう言葉を発する。だが下位種族の耳ではそれを言葉とは判定しなかったようである。

 どうやらそれが開戦の合図だと思ったらしく、最後の戦いは始まった。




 ………


 ……


 …


 ―――――――惑星中核―――――――――


 まさか最終的に大型のプルトニウムとウランの爆弾で自爆に近い攻撃するだなんて思ってなかったわ……


 「姐さん!?大丈夫っすか!!?」


 全然全く大丈夫なんだけどあんまり大丈夫じゃないわね……その……なんというか、心が、ね……


 「連中、まるで聞く耳なかったっスからね……」


 ちょっとこれは寝ないと無理そうね……。


 「寝るって……また億単位で寝るんすか?」


 ええ、まぁ大丈夫。連中、私が死んだと思って上位種族の殺戮を緩めるわ。この隙に上位種族達を一目に

着かない山や森に潜ませるようにするわ。

 悲しかったけど、彼らと触れ合って分かったわ。あの子達の作る世界はそう長続きはしないわ。

 1億もすれば勝手に滅んでくれるわ。きっと。


 「そんなもんなんすかね……?」


 そんなもんよ。さて、疲れたから寝るわ……地球丸。くれぐれも……


 「わかってるよ姐さん。別に下位種族を滅ぼすつもりなんかないですよ」


 そう、それじゃ……おやすみなさい。


 「ああ。おやすみ。姐さん」


 ―――――――その後―――――――――


 その後、下位種族達はは栄えて、上位種族達は文明を捨てて山に籠った。


 殺戮の勢いはしばらく続くも、山に潜んだ為、その勢いは急速に止まっていった。


 そして下位種族達も、最初は地下に埋まっていた鉄や銅、微生物が化石化して液体になった物や、その部生物が化石化して際に出た腐敗した空気?のような物、そして魔法石を使用して高い建物を建てたり外の世界にあれこれ何かを送っていたりしていた。

 だが、上位種族達と戦っていた頃の転生者が死にきった頃から仲間割れが目立つようになり、気が付いたら上位種族達が反乱を起こされる前の文明レベルまで落ちていた。


 なる程。これが姐さんが言っていた事なのか……と感心した。


 姐さんはまだ寝ている。多分数億年は起きない。


 ちなみに、ウランとプルトニウム?とかいう変なのを使った爆弾は痛かったが、下位種族達の魔法で少しは癒してくれたから、下位種族の事は前よりあんまり嫌いじゃなくなった。


 

 下位種族達の文明レベルが下がったが、上位種族達も文明を捨てていたのが効いていて中々思うように繁栄ができないでいた。

 というか上位種族達も上位種族達の間で争いをしている始末だった。


 全く……嘆かわしい。でも必死に寝ている姐さんと会話を試みようとしている姿が可愛かったり、愛着は依然としてある。


 なにはともあれ、上位種族は生き残り、下位種族も数は多いがそれでも上位種族を駆逐せずにいるので、良かった。


 それはそうと姐さんの寝顔がかわいい。これなら数億年見ていても寂しくない。



 そんなこんなで、この話はおしまいである。

これにて完結です


でもひょっとしたら気分でほんのちょっと付け足すかもしれません


とりあえずまずはおやすみなさい。です


2020/08/05 修正しました。リヴァイアさんの防御力・HPを上方修正し、メンタルを下方修正しました。

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[一言] 完結お疲れさまでした!
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