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03 信じて生み出した上位種族が下位種族に駆逐されるなんて…

 ―――――――地表―――――――――


 「性行為によって生じる快楽が愛などと、そのような事がある筈がない」

 「それがもし、世界の理であるのならば。私達は世界を、神をも殺す」


 いわゆる中世ヨーロッパを連想する城塞の上で、『彼』はそう高らかに宣言する。

 背後には硝煙による黒い煙がくすぶる。彼の手には見た事もない杖とも剣とも言えない、だが明らかに何らかの武器を持っていた。

 城塞には何事かと何人かの群衆が発生した。彼は彼らに演説を行っていたのだ。


 その城塞は、下位種族達を支配する上位種族達の城塞であった。


 だが、今まさにその所有者が変わったのだ。


 「私は転生者。この世界の支配構造を、殺す者だ!」

 転生者を名乗った彼は、杖でも剣でもない武器を掲げる。

 


 「これは我々の人類の!独立戦争の幕開けだ!!」

 転生者がそう叫ぶと、城塞に一人のゴブリンが数人の協力者の人間やエルフ達に連れられて登ってくる。


 「あれはあの城塞の主じゃないか!?」

 見上げていた群衆たちが、そう叫ぶ。


 確かにその装飾品や服装から、そのゴブリンが城塞の持主であると判った。


 「お前ら!こんな事をしてただで済むと思っているのか!!?」

 そのゴブリンは叫ぶ。


 「思っていない。これは戦争なんだよ」

 ゴブリンを抑えているエルフはそう冷たく言い放つ。


 「戦争? お前らと俺達とで!? 勝負になると思っているのか!!?」

 ゴブリンはそう興奮して叫ぶ。


 「なるさ」

 転生者は懐より小型の銃、黒光りする、手のひらに収まるサイズの物、を取り出す。


 「現になってる」

 ガチャガチャリ。と操作を行い、それをゴブリンの額に向ける。


 「借り物の力でいい気になってるんじゃ――――!!!!!」


 ゴブリンの声をかき消すように、銃の声が空間を揺らす。


 カチャン。と銃から小さな金属筒が飛び出し、城塞の床へと転がる。


 「これが、異世界の力だ」


 そう言って転生者は、再び操作を行い、銃から平たい棒を抜き取り、銃から小さな鉄の断片らしき物を抜き取り、群衆に向き合う。


 「皆、銃を取れ!!これさえあればもうゴブリンやコボルト、オークオーガに従わずに済むぞ!!!」


 演説を聞いていた何人かの視聴者の眼前で小さな光が発生し、銃と言われる武器が生成される。

 視聴者たちはそれを思い思いに手に取り、そして決意を胸に、転生者を見上げる。


「「うおおおおおおおおおおおお!!!!」」


 群衆は熱狂した。


 虐げられた下位種族達が立ち上がるのは、さほど時間はかからなかった。


 その日から、下位種族達と上位種族達との戦争が始まった。


 否、それはある意味戦争ではなかった。


 いうなればそれは、()()。であった。



―――――――惑星中核コア―――――――――


 「姐さん大変だ!なんか人間やエルフや小さいのの中から変なのが出て来て上位種族を駆逐しだしてる!」

 は?? 下位種族が上位種族に勝てる訳ないんだが???


 「いや、なんか変な鉄の塊で無双しだしてる」

 は??????? 鉄の塊????????? 意味が分からないが???????


 「姐さんなんすかその喋り方」

 寝起きでいきなりとんでもない報告聞けば誰でもこうなるわよ。

 どれどれ、地表を覗いてみましょう。


 ―――――――地表―――――――――


 リヴァイアさんが見た光景


 それは長い筒が突き出ている長四角型の鉄の箱であった。下位種族達が乗っているのを見るに、恐らく乗り物であろう。


 それらは両脇に小さな車輪がついた無限に回る輪で土を巻き上げて走る。


 そして突き出た長い筒から火を吐き、その長い棒が付いてる屋根の方についている大型の銃も火を噴く。


 その後方では、長い突き出た筒こそないが、似たような形状の長四角形型の鉄の乗り物と、屋根のないタイプの鉄の乗り物が走り、屋根のないタイプからは停止したかと思えば後方部分が開き、中から銃で武装した茶色と緑がまだら模様に混ざった服を着た下位種族の戦士たちが飛び出してくる。


 筒がないが大型の銃がついた鉄の乗り物の大型銃が火を噴き、周りの戦士たちも手に持った銃で敵を撃つ。


 その上空ではけたたましい音と破壊的な暴風を巻き起こしながら明記しがたい形状の物体が空を飛んでいた。

 その物体は屋根に大きな刃が4枚、高速で回転しており、恐らくこれがけたたましい音と破壊的な暴風を生み出しているのは誰の目からも明らかである。尻尾と思われる部分にも小さいながら刃が4枚ついている。

 信じられないが、頭部と思われる部分はガラスで覆われており、中に下位種族が不思議な兜をかぶって操縦しているので、これも乗り物なのであろうと判る。



 さらに遠くの場所ではさらに在り得ない光景が広がる。


 青い装甲に覆われた鳥とも虫とも言えない形状の物体と、灰色の装甲に覆われた青い方より大型でがっしりとした形状の物体が、空を飛んでいたのである。

 これも頭部とされる先端部分がガラスで覆われており、操っている下位種族が見える為、乗り物であると思われるが、それにしては物々しい姿である。


 その物体は、あらゆる空を飛ぶ生物よりも超高速で飛び、腹から黒い物体を投擲し地面に当たると爆発する事から黒い物体は爆破物であるとわかる。


 その爆破物が投擲される先には上位種族の軍事拠点がある事からも、そういう用途で作られた乗り物であると理解できる。



 ……有り体に言うと。

 長い筒が突き出ている長四角型の鉄の箱……つまり戦車、さらに言えばM1エイブラムスとレオパルド2の混成戦車部隊が戦端を開き

 プーマ装甲歩兵戦闘車に守られた装甲兵員輸送車……一応の名はAAV7……の一団が後に続き、周辺の残兵を輸送車両から吐き出された歩兵達が始末を行う。


 その上空を飛び交うのは戦闘ヘリのアパッチ・ロングボウであり、未だ戦意を失っていないか脅威と判断された簡易拠点等を攻撃している。

 さらに遠方の空を飛んでいるのはF-2とF-15E ストライクイーグルであり、これも敵軍事拠点を爆撃していた。


 幾ら何でも敵に航空戦力いないのだから戦闘機はオーバーキルだろう。火力なら火砲や自走砲でいいだろ。補給整備や搭乗員育成どうなってんの。なんで米海兵隊のAAV7? どうせチートで片付けられるのならなんで西側兵器で固めてるんだ。東側兵器も出せやオラァ! せめて国籍統一しろよ……


 ……と今日こんにちのネットで色々言われそうな光景が広がっていた。



―――――――再び惑星中核コア―――――――――


 なに これ

 「わからん。なにか知らないが、とにかく異世界転生者と呼ばれる存在が現れて、下位種族の皆を扇動して、ポンポンと鉄の塊を生み出したんだ」


 異世界転生者……?

 確かに、命は死んだら魂になってなんか消えたりどっか行ったりしてるっていうけど……

 まさか時々文明がある惑星を覗いたら『なんかここだけ・あそこだけ気配がちがうなぁ』とぼんやり思っていたら、あれが異世界転生者だったのかしら?

 でもポンポンと鉄の塊を作り出すなんて……

異世界転生をすると何か不思議な力がつくのかしら?

 「多分そうだと思う。その異世界転生者も1人じゃなくて、あちこちに数人いて別々の不思議な力を持っていて、合流したり独自に決起したりして上位種族側も収拾がついてないんだ」


 なんてこと……

 そもそも下位種族は上位種族に逆らえないようにフェロモンとか体質とか分泌液とか色々弄ってたのに……これも転生者の不思議な力のせいかしら?

 「明らかに上位種族と関係を持っていた下位種族の男や女が、決起軍と合流したら数日したら決起軍に加わっているのを見るに、そうと考えたほうがいい……」


 これは不正行為チートよ……ズルよ。インチキよ。製作側の意図しない操作よ。

 こんなの下位種族の、人間のやる事じゃない……。どうして……どうして……。


 「とにもかくにも。上位種族の国々が鉄の剣や斧、強力な弓や魔法の応用がやっと出てきた頃なのに、それを粉砕する下位種族の兵器チートじゃあ一方的な虐殺だ……」


 おのれ異世界転生者……

 おのれ不正行為ことチート……

 時代に合わない兵器で上位種族を大量虐殺するなんて人の心がない殺戮者め……


 ゆるさない。


 「どうするんだ?」


 私に考えがあるわ!!

 今に見てなさい異世界転生者!!!

 ぎゃふんといわせてやるんだから!!!!!


 「具体的にどうするんだ?」


 私の血肉でドラゴン? というすんごい生き物を生み出して、鉄の化け物をやっつけるわ!


 「ああ、あの上位種族の間で流行ってる宗教の中に出てくる架空の生物か」


 多分あれモデル私だから私の血肉で作れば大体辻褄は合うわ!!


 ふふふ。待ってなさい。異世界転生者ども。貴方達の思い通りなんかさせないわ!!

 私が下位種族による上位種族の大量虐殺なんか絶対止めてみせる!!!


 つづく。

サブタイの案はこれの他に「おのれ異世界転生者!また異世界が破壊されてしまった!!」「上位種族絶滅の危機!!転生者はチートだった!!」等がありました。

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