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がんばれ!ぼくらのファイブレンジャー!

「このいつもの採石場に、怪人と拐われた小学生男子がいるんだな?」



レッドの言葉に、ブルーが頷く。

心なしか、フルマスクに覆われて見えない筈のブルーの目が、期待に輝いているように見える。



「ああ。今日は(・・・)きっと一直線にここにいるはずだ……」



見晴らしのいい崖から辺りを見回す。

ここ、“いつもの採石場”と呼ばれる場所は周囲に人や家屋が無く、思う存分闘ったりうっかり爆破したりしても誰にも迷惑の掛からないとても都合のいい場所だ。

いつもの怪人なら、突如として町中に現れそれほどデメリットのない嫌がらせを民間人に施し彼らを釈然としない気持ちに陥れた後、私達ファイブレンジャーとすったもんだのあげくいつの間にかこの場所に移動しているのだが、今日はその無駄が一切なく、小学生男子が拐われたという一報だけが情報管理室に届いた。

確かに今日は、いつもとは違う(・・・・・・・)



「今日の怪人は何怪人かしらね」



ピンクがいつも通りの、しかしながらまるで舞台にでも立っているような多少オーバーな仕草で呟く。

フルマスクの時はそうしなければならないと私も指導されているが中々慣れない。



「最近は山葵わさび怪人、数の子怪人、高麗人参怪人と食べ物続きでしたからね……」



酒のツマミ感を出しつつも、最後ちょっと健康に気を使った取り合わせが鼻につくなぁと思っているとグリーンが岩かげに何かを見つけた。



「……!ソコ!何カ動イタ!」


「皆、遠隔攻撃武器を構えて!」



レッドの掛け声に、それぞれが武器を構える。


レッドは通称赤星と呼ばれるサッカーボール型爆弾を足元にセットする。

これは昔サッカー選手だったレッドのキック力を活かした極めて殺傷力の高い武器だ。何故着弾したときのみ爆発するのかは企業秘密だそうだ。


ピンクは桜の花弁の形をしたカード型手裏剣、これは桜札と呼ばれていて何度かマイナーチェンジをしている。一部に使用済みを集めている熱心なコレクターがいて、裏では高額で取引されているらしい。


ブルーは少し躊躇いながらも、フジチェリーと呼ばれるいしゆみ型の武器を構えた。この武器は矢尻のアタッチメントを変えて様々な効果を与えることが出来るとても汎用性の高い武器だ。今はトリモチに変えてある。

恐らくアーチェリーのチェリーだと思われるが、そもそもアーチェリーとは弓の種類が違う上、他の暗喩も含まれている気がする。


グリーンはその辺の石を何個か掴んだ。

鍛え上げた肉体こそが彼の最大の武器だ。


私はというと……。



「イエロー……、まだなのか?」


「うう……、ちょっと待ってください……」



レッドの言葉に少し焦る。私はいまやっとヤマブキスティックで何もないところを袈裟斬りをし、先についているアタッチメントを取ったところだ。大した殺傷力もないくせについている誤作動防止システムがもどかしい。それに……。



「私がこれを構えたところで何の意味があるんでしょう……」



どうせこれ以上は何の役にも立たないちっちゃいグローブしか出てこないのだが、一応ロケットランチャーを構えるようにしてスティックを担ぐと、レッドの檄が飛んだ。



「いいかイエロー!みんなでやることに意味があるんだ!」


「……!!来タゾ!!」


「みんな!散って!」



私達が、まるで狙ってくださいと言わんばかりに集まっていた崖に、赤いミサイルが撃ち込まれた。

間一髪、みんな散り散りになりながらも避けると、撃ち込まれたミサイルから何やら怪しい赤い煙が出始め、風に乗り辺りに立ち込める。



「ウッ……ゲホッ!ゲホッ!」


「ゴホッゴホッ!なんだこれ……痛っ!」


「これは……っ!トウガラシスプレー?!」


「なんて、小癪な……!」



トウガラシスプレーは主に猛獣や暴徒に使われる催涙スプレーの一種で、目や喉などの粘膜の痛みや一時的な盲目を引き起こす。後遺症は残らないものの過剰に使うと死亡事故を起こす可能性もある危険な薬品だ。今回私達はマスクのお陰で被害が少ないが、喉がちょっと痛い。



「はーっはっはっはっは!!口程にもないなファイブレンジャー!!」



岩かげから、先週の高麗人参怪人の顔を赤ピーマンにしたやつが出てきた。

なるほど今回は……。



「唐辛子怪人?」


「いや、形から察するに、あれは“ジョロキア怪人”だろう」


「山葵怪人の時は清涼な空気になったが、これはちょっとキツイな……」


「みんな!いくわよ!」



腕の通信機から聴こえたピンクの掛け声で、怪人に向かって次々と武器が放たれる。

ジョロキア怪人は桜札で行く手を阻まれたところをトリモチで捕縛され、赤星に被弾した後、思いっきり石をぶつけられた。その足元にミニグローブが落ちる。



「よし!いまだ!近づいて止めをさすぞ!」


「いや!待ってくれ!」



焦った様子でレッドを制止したブルーが話し出す。



「今回は、俺とイエローにやらせてくれないか」


「なに?」


「イエローはここ何戦も役に立てていないだろ。経験値を積むためにはそういうやり方も必要だ」


「……ナルホド」


「……一理あるわね。私は構わないわ」


「どうだ、レッド」


「……イエロー、行けるか?」


「……!行けます!」


「よし!ではお前らに任せる!油断するな!」


「はい!」



ブルーと目配せした私は崖を飛び降り、爆発の煙と舞い上がった土埃の中を走る。

煙の中にジョロキア怪人の影が浮かび上がったのを見て、ブルーから個人通信が入る。



「いくぞ!イエロー、わかってるな!」


「…………ええ、参りましょう、ブルーさん」



「トイヤ!」の掛け声と共にジャンプしたブルーが、ジョロキア怪人の目の前に飛び降りながらモンゴリアンチョップを決める。

そのまま肩を掴み、激しく話しかける。



「先輩!愛しています!!」



一瞬止まったジョロキア怪人だったが、すぐさまブルーの腕を内側から払いのけ、ブルーの頭部を小脇に抱えた。ブレーンバスター……いやバーティカルスープレックスだ。

タイツを握られた後真上に持ち上げられ、そのまま背面から落ちるように投げられたブルーは身体を捻り体勢を整える。

猫のように着地したブルーがそのままジョロキア怪人に向かった。



「俺のことを覚えてますか!」



ブルーのフライングクロスチョップを難なくかわしたジョロキア怪人が、戸惑いながらも頷いた、ように見えた。

勝手に飛んで勝手に倒れ込んだブルーが立ち上がる。



「良かった……。俺はもう貴女を一人にはしない!」



少し離れたところで見ながら、なんかもう気持ち悪いなと思っているとブルーから通信が入る。



「なんにもしないとあいつらから疑われるぞ!なんかしろ!」



あいつらとは崖の上にいるレッド、ピンク、グリーンのことだろう。

なんかしろって言ったって、この空気のなか入っていけるのはグリーンくらいのものだ。

そう思いながらヤマブキスティックを構えると、ジョロキア怪人が右手を前に出し、私を挑発する構えを見せた。



「……!主任!すみません!!」



ヤマブキスティックをジョロキア怪人のジョロキア部分に向かって突き出す。

ジョロキアの皮に少し掠るが致命傷は与えられず、そのままスティックを掴まれ放り投げられた。

すかさずジャンプをしながら後ろ回し蹴りをしてみるが威力も打点も低くジョロキア怪人はビクともしない。

倒れ込んだところをそのまま両足を抱えられ振り回される。三周ほどしたところで三メートルほど放り投げられた。強い。



「私は、もう一人ではない」



ジョロキア怪人が静かに、ゆっくりと呟いた。



「家族が出来たんだ。出来の悪い弟ばかりだがな」


「そいつらとは違う!俺が貴女の本当の家族になる!」



ブルーが突撃を繰り返しては投げられる。

さながらぶつかり稽古だ。


……しかしこの人、本当に恋愛偏差値低いな。

色んな段階をすっ飛ばしてプロポーズするのって、相手にとっては恐怖でしかないんじゃないかな。


ジョロキア怪人の中身は私達の予想通り、恐らく月白主任だ。

毎週色んなテーマでやってくる怪人は、あの“奈落”と呼ばれるところで作られる。「ガワだけ作って某たちで操るでやんすよ!」とは榛さんの言である。


あの日、私と藤さんは探偵さんに連れられて奈落へ降りた。柳博士と榛さんに会い、そしてすべての事情を聞いた。主任のことも、奈落のことも、探偵さんのことも。だが今にいたるまで、私も藤さんも月白主任本人に会えてはいない。

結局、私は奈落に落ちなかった。ファイブレンジャーのままでいることを決めた。その上で、奈落に協力することにした。奈落とファイブレンジャーが闘うことで、平和の有難さ、そして維持の難しさを体現しつつ、タカ派の主任を抑える。これが私の目的だ。

探偵さんも奈落に常駐することはなく、協力はするものの事務所は継続することにしたらしい。



「俺だって!貴女が望むなら機械にだってなってみせる!」



藤さんの目的は、どさくさに紛れて月白主任を口説く、この一点のみのようだ。

奈落に行っても会ってくれないそうだから仕方ないのかもしれない。



「貴女の体を駆け巡るナノマシンに俺はなりたい!」



でも気持ち悪いものは気持ち悪いな。

そう思ってると、ジョロキア怪人が肩を震わせはじめた。



「ぶふっ!…………も、もう駄目でやんす…クッ……耐え……きれない……!」


「……………!?ブルーさん!こいつニセモノですよ!」


「なに!!」


「げ、げえぇ!バレたでやんす!!」



身を翻して逃げ出すジョロキア怪人の頭に、続いて両手、両足にフジチェリーが撃ち込まれる。容赦がない。

岩に後ろ向きにはりつけになったジョロキア怪人の背後から、ブルーが話し掛ける。



「おい、こんなに時間を無駄にしたのは初めてだ。何か成果を寄越せ」


「ひっ……成果強盗……!」


「もう、騙した榛さんが悪いんですよ」


「某、嘘はツイてないでやんす!」


「……おいお前、そんな態度でいいのか?」



ブルーがフジチェリーに小型爆発付きの矢を装填する。



「その体、二度と使えないくらいバラバラにしてやろうか?」


「わ、わかったでやんす!こ、これはとっておきの情報でやんすが……」


「なんだ」


「マキナさんは毎週水曜日午後五時から一時間、あの会社の前にある白い自販機に乗り移ってるでやんす!」


「なに」


「ファイブレンジャーを監視する為でやんすよ!ね?いい情報でやんしょ?」



「お前が先輩を名前で呼ぶのが許せん、死ね」



「いやああああああああああああ!!!!」



フジチェリーにより小型爆弾が撃ち込まれ、ジョロキア怪人は爆発四散した。


闘いが終わった……またなんの活躍もしないまま終わってしまった……。



「えーっと、ブルーさん、私の経験値なんたらの話は……」


「……まぁ、またチャンスはあるだろ」


「怪人の体も……」


「…………まぁ、あっちでなんとかするだろ……」


「あの拐われたっていう小学生男子は……」


「……忘れてた……まぁ狂言だろ……」



私が少し落ち込みながら皆のところに戻るとピンクが出迎えてくれた。



「イエロー、頑張ったわね」


「は、はい……あの……拐われたっていう小学生は…」


「大丈夫、近隣の市区町村の小学校に問い合わせたけど、誘拐された子はいなかったわ。周りも探したけど誰も居なかったし」


「そ、そうですか」



頭を撫でられながらピンクの顔を見上げると、フルマスクの奥に不敵な笑みが見えた。

ピンクが私の耳元でささやく。



「……でも、良かったのかしら。あれじゃああの体、もう使えないんじゃない?」


「……………え、さ、桜先輩、それって……」


「さぁ帰るわよ、ミチル」



この人は何処まで知ってるのだろう……。

私はまた、桜先輩の闇を見てしまったのかもしれない。




あれから、藤さんが自動販売機を口説いているのを何度か目撃した。

一度、あの自販機が「ばっぼん」と音を出して炭酸水を吐き出したのを見たのだが、当たりだったのだろうか。

最近ギターを始めたそうで、これからは毎週水曜日、弾き語りをする藤さんが見られるかもしれない。

会社では、藤さんがおかしくなったともっぱらの噂だ。

教えてあげたほうがいいだろうか。

その方法では、周りに恐怖を撒き散らすだけだと。



そうそう、探偵さんと私がどうなったかは、私たちだけの秘密です。










_人人人人人人人人人人人人人人人人人_

> この紅の豚エンドに関しましては <

> 当方不甲斐なさを感じております <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


面白いと思って書いた文でも何度も読み返すとよくわからなくなりました。

不安だらけで書いた文ですが少しでも楽しんでいただけたのなら、どんな感想でもいいですし、評価やレビューなどもしていただければ嬉しいです(欲深)

因みに戦隊ものの元ネタは秘密戦隊ゴレンジャーです。

コメディが過ぎる演出や愛嬌がありすぎる怪人が面白いです。

ゾルダーも出したかったんですがドMの変態になりそうでやめました。

藤や山吹、というか後の戦隊ものの原型がそこにあります。

お暇なら観てみてください。

では、お付き合いいただきありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなこせいてきでおぼえやすかった! [一言] ちょっとむずかしかったとこもあったけど、おもしろかった! みんなすきだけど、ぶちょうのふたりすきかも! ペンのとこわらった!
2019/11/08 22:44 退会済み
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