蘇芳隊長の証言
俺は蘇芳アレン、現場隊の隊長をしています。
……ええ、聞いてます。
俺が知ってることは何でも話します。
どうか月白さんを見つけてあげてください。
……見つけてほしくない……?
月白さんが?
……なるほど、そういう考え方もありますね。
確かに、彼女は物静かで、少し人を遠ざけるようなところがあります。
ですが、こうやって無責任にいなくなるようなことが、彼女の意志であるはずがないんです。
……何故って?
ああ、まだ彼女のデスクを見ていませんか?
見ました?
なら分かるでしょう。
……意外と汚い?
いや、ははっ、まあ、確かに。
意外と整頓されてるようでされてない。
違いますよ。
そうじゃなくて、彼女のスケジュール表です。
彼女の机にB5くらいの卓上カレンダーがありませんでした?
よく見なくてもわかるくらい、3ヶ月くらい先までびっちりですよ。
……予定、まぁそうですね。
予定というか、何か思いつく度にあれに記入してるみたいです。
ということはですよ。
彼女はいなくなる予定では無かったということです。
少なくとも、俺がそれを見た今朝までは。
……ははっ。そりゃそうか。
確かにわかりきったことですね。
荷物もそのまま残っていたんでしょう?
何かわかったんですか?
……なるほど。確かに。
もし本当に事件性があるのなら、全体の情報を把握するのは最小人数であるべきだ。
……いえいえ、いいんです。
俺は、彼女が見つかりさえすれば、本当に。
……当日ですか?
俺は、海にいました。
藤と桜も一緒です。
ええ、そうです。
20時頃までですかね。
……ああ、藤から聞いていたんですね。
そうです。
藤は先に会社に戻りました。
俺たちは、その……。
……いえ、もう解決はしてたんですが……。
桜がその……、首飾りを無くしたというので探していたんです。
母親から貰った大切な物だと……。
藤は呆れて先に帰ってしまいましたが、俺は放っておくなんてできませんよ。
……ええ、見つかりました。
砂浜で、桜が見つけました。
それから会社に戻って……。
……すぐ戻ってくると思ってました。
実家に荷物でも取りに行ったのかと。
それにしたって連絡もないのはおかしいですけどね。
……特に親しかったわけではないです。
さっきも言いましたが、彼女は自分から積極的に親しくなろうとはせずに、一定の距離を保とうとします。
感情を表現するのが苦手みたいです。
……一番って言ったら藤、かな?
というか、藤が一方的に懐いてたって感じですかね。
別に月白さんも嫌がってはいなかったみたいです。
……藤って、わかりやすぎません?
普段はクールな感じだから余計に。
……どうだろう。
気づいてたかなぁ。
うーん。
……気づいてなかったと思います。
藤もニブいけど、月白さんはもっとニブいですから。
……もういいんですか?
ええ、またいつでも協力します。
あ、桜は今日は休みなのでいませんよ。