電話にて、藤隊員の証言3
おい、渡航履歴の開示請求はしたのか。
……いくらうすら馬鹿なお前でもそれくらいは出来たか。
……そうか、まあ届くのに時間がかかるのは仕方ない。
それより、ボンクラなお前と違って、こっちは大発見だ。
月白先輩の父親が、アイスランドにいるかもしれない。
……ああ、俺がヨークルスアゥルロゥン氷河湖に行った時の話なんだが。
……ヨークルスアゥルロゥン氷河湖。
……もういい黙ってろ。
そこでガイドをしていた女性がツキシロという名前の男性と働いていたことがあると言うんだ。
……いや、住所まではわからなかった。
レイキャビクに居たそうだから、夜が明けたらその職場に行って聞き込みをするつもりだ。
……先輩がアイスランドに行きたいって言ったとき、何となくって言ったんだろ?
言いたくない理由があったはずだ。
ズカズカ立ち入るつもりはない。
だが、行きたいってことは、それでも父親に会いたかったってことじゃないのか?
……想像しても仕方がない。
そっちはなんか収穫があったのか?
……ホワイト教授の娘がアイスランドに?
……あの人、そんな名前だったか……?
あれ、ちょっと待て。
ヴァイツ?
Waitz?
……いや、そんなまさか。
だって全然そんな話も、そんな素振りも……。
…………。
いや、まだ混乱している。
まだ信じられない、が……。
……先輩の祖父母の名前。
日本人の祖父の名字で登録されてたろ。
……そう、なんの変哲も無い名字だが、問題は祖母の名前だ。
……ドイツでは結婚した際に姓を選べるんだ。
先輩の祖母は、旧姓も残すダブルネームを選んだらしい。
祖母の旧姓、それがヴァイツだ。
……シンプルに考えるとそういうことになる。
ホワイト教授が月白先輩の母親だ。