藤隊員の証言
……ああ、あんたが内部調査の……。
……それで?何が分かったんだ?
……はっ、状況把握中、ね。
先輩が、3日前、この会社で、居なくなった。
これが事実。
あの先輩がこんなふうにいなくなるわけがない。
きっと事件に巻き込まれたんだ。
……自分の足で出ていったんなら、エントランスを通らないのはおかしいだろ。
裏口は面倒くさすぎるし、何処へ行くにも不便だ。
先輩は、普段そんな回りくどいことはしない。
……誘拐、脅迫。
いろいろあるだろ。
……わからないからあんたが調べてるんだろ。
……検討違いもほどほどにしろよ。
本当にちゃんと調べてるのか?
俺が何か知ってたら、とっくに助けに行ってるよ!
……関係が、本当にあれば良かったのに……。
……後悔?
ああ、してる。
先輩から目を……。
いや、何でもない。
……その日は、ずっと外で現場対応していた。
俺と、蘇芳と、桜。3人だ。
切り上げたのは19時くらい。
流石に、外が暗いと何にも出来ないからな。
それ専用の装備がない限りは。
戻って話を聞いたのは多分20時頃だ。
それから先輩の家に行って……。
……え?
いや入ってない。
入れないだろ。
鍵が掛かってるんだから。
外から見ただけだ。
……外から見ただけだと言ってるだろう。
……入ったことはある。
もちろん招かれてな。
……あんたは、何が言いたいんだ?
……なるほど。
いや、協力する。
それに、それは多分、この会社では俺にしか出来ない。
……招かれたのは同じゼミの連中だけだ。
招かれたというか、……押しかけたというか。
そもそも月白先輩は、部屋に人を招くのがあまり好きではない。
だから、この会社で、先輩の部屋を知っているのは俺だけだ。
……いない。
先輩にそんな暇はない。
毎日仕事と家の往復だといつも言っていた。
最近は家に帰ることも面倒なようで、よく仮眠室を利用していた。
そんな状態で恋人などいるはずもないだろう。
……俺は……。
ああ、そうだ。
俺は、先輩が好きだ。
ずっと前からな。
だが、まだ伝えるべきじゃないと思っていた。
……さっきも言っただろ。
先輩は忙しいんだ。
俺は好意をただ伝えたいわけじゃない。
無理やり恋人になりたいわけでもない。
確実に、こっちを見てもらうには、今じゃないと思っていただけだ。
……くそ、なんでこいつにこんなこと……。
……家族は知らない。
月白先輩はそのことを話したがらなかった。
……ああ、精々役に立ててくれ。
アンタが不甲斐ないようなら、すぐにでも変わってやるよ。