開発部部長、常磐の証言
お、あんたが噂の探偵か。
よく来たな。
……ここが開発部で間違いないぞ?
……俺が常磐だ。
なんだ?
研究者は全員顔の青いひょろひょろのもやしっ子だと思ってたか?
……はっはっは!
うちは小さいのもでかいのもここで作ってるからな。
実際体力勝負なんだ。
技術書しか持てないようなひ弱な奴はここにはいない。
……あ、そうだ。
カメラや携帯電話は持ち込み禁止だぞ。
聞いてたか?
……ロッカーに預けた?
そりゃ良かった。
こっちでも情報漏えい対策に色々してるからな。
もし持ち込まれたらエライことになる。
……それで?見学に来たのか?
……あ?そりゃ柳さんのことか?
……ああ、俺の恩師だ。
そうか、もう二十年にもなるんだなぁ。
……その噂は本当だ。
いなくなったのが会社をクビになった老人で、探す者が誰も居なかったから大事にはなっていないというだけだ。
柳さんが自分で歩いて会社から出ていくのを誰も見ていないのは確かだ。
……俺はその時……。
ほとんど会社に棲んでいたと言える彼が唐突に解雇されて居なくなったと聞いた時、会社への憤りよりも、置いて行かれたという失望のほうが強かった。
上層部にも何も聞かなかった。
それは……今でも後悔している。
……今どこにいるのかも知らない。
あのとき既に爺だったから、もう……死んでるかもしれないな。
……柳さんの専門はロボット工学だ。
俺の専門もそれだ。
……大型の戦闘用二足歩行ロボットってことか?
人型で人が乗るやつ?
いやあ夢には夢だが、ここでは研究していない。
ああいうのは虚構だから楽しめるもんさ。
実際に作ってみろ、一生掛かっても出来やしねぇ。
誰だ、想像出来る物は創造出来るだなんて言ったやつぁ。
俺が行ってハッ倒してやりたいよ。
……ここで金を貰って仕事してる以上は、出来の保証はしなくちゃなんねぇ。
うちの連中は凝り始めると止まらなくなるからな。
そういう舵取りも俺が任されてるんだ。
……まぁいいか、そんな話は。
……それで、柳さんのことだが……。
ヒューマノイド研究と言えばわかるか?
ああ、むしろ生体工学の分野になるのか。
……柳さんはいつからかそれに傾倒していた。
それで……。
……本物の人間を使ったんだ。
自分の研究に。
もちろん死体だけどな。
……もちろん違法だった。
あの死体が生きてた頃に合意があったかはわからない。
だが、あのまま続けていたら、柳さんは完成させていたと思う。
……完成形はいつだって柳さんの頭の中にあった。
それがなかなか頭から外に出てこないだけで、そういう回路はピカイチだった。
……回収された。
荼毘に附されて今頃どっかの墓の中さ。
……どうだろうな。
研究には人も金も施設もいる。
そんな酔狂な場所、ここ以外に俺は知らねぇよ。
……確かに、色々知りすぎている柳さんを、会社があまりにも簡単に手放したのを不信に思ったことはあった。
色んな後始末に忙殺されて忘れてかけていたが……。
……もういいのか?
……ああ、もし会ったら、俺が寂しがっていたと伝えてくれ。
……これが俺の仕事だ。
今更、柳さんにも渡せねぇよ。
汝平和を欲さば、戦への備えをせよってな。




