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異世界で知ったホントの家族  作者: 桜江 李彩子
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これが現実ですか?

 会場の重い扉がゆっくりと開かれる。


 人がいないってことは大掛かりな自動ドアかな。


 中は絵本で見たパーティ会場そのもの。

 私が歩く足元は赤い絨毯が敷かれている。

 ここを真っ直ぐ前を見て転けずに歩けばいいだけの話。がんばれ私!

 背筋を伸ばしてゆっくりスローモーションで歩く。よしよし! あと、階段を上がればロットさんが待ってるよ!

 冠貰えればそれで仕事終わり!!


 壇上に無事着いたとのろでロットさんが口を開く。


「皆もここ連日のニュースで知っていると思うが一ヶ月前に紅鏡の子孫が我々の前に現れた。

 長きに渡る戦争が終わり世が平和へと歩こうとしているこの時期にだ。これは、まさに運命と言えよう。

 歴史は繰り返すというのなら再び紅鏡の王がこの世界を治め再び平和な世を築こうではないか!!」

「「お――――!!」」


 なんだろう、この漂う武道会感。舞踏会のほうがいいよお……。


「紹介しよう。

 紅鏡の姫君、韓紅花様だ」


 一歩前に出て優雅にお辞儀をする。日本式のお辞儀じゃないよ。ヨーロッパ式のドレスの裾をつまで体全体を使ってお辞儀をする。

 顔を上げると会場にいるヒトというヒトが私を見ている。


 ひえぇぇ。心臓が耳まで上がってきたよおぅ…………。

 うう……足が無意識にカタカタ震えだしてきた。

 え、笑顔引きつってないかな……。


「それでは冠を」


 ロットさんの声に従ってかなりガチゴチの動きで頭を下げる。

 頭に重いものが乗っかる。これがきっと冠だ。


「顔を上げてください」


 小声で囁かれもう一度顔を上げ会場に笑顔を見せる。


 よし! これで今日の仕事終わり!!


 ほっと胸をなで下ろし用意された椅子に座ろうと一歩引いた時


 キーンっ


 金属が触れ合う高い音。

 さっきまで立っていた場所に太い槍が一本突き刺さっていた。

 一瞬、状況が飲み込めず呆然とその槍を見つめる。


「襲撃だ!!」


 誰かが叫んだ。いや、叫んでないかもしれない。

 我に返ったときには悲鳴と爆発音で会場は埋め尽くされていたのだから。



 地震のような衝撃を受け頭を抱えてその場に座り込んだ。

 何が起こったんだろう?


「逃げろー!」

「助けてー!」


 あちこちから声や音が聞こえるが、視界が煙で塞がれていため右も左もわからない。


 どうしよう、どうしよう……!

 逃げなくては行けないのは分かっている。でも、上手く立ち上がれない。足に力が入らない。


「こっち」


 聞こえるはずのない懐かしい声が聞こえたようなきがした。直後にふわっと私の体が浮き会場をものすごいスピードで駆け抜ける。

 どうやら私は目元を隠す仮面を付けたこの人に助けられたらしい。でもってお姫様抱っこされているようだ。


 会場にこんな人いたかな?

 だってこの人、魔法使いみたいなローブにハリウッド映画に出てきそうなスパイスーツで全身真っ黒な服装なんだもん。いたら絶対目に入っていたよ。


 突然の状況に戸惑っていると急に視界が明るくなった。

 煙を抜けたようだ。


「へ?」


 何故か青い澄んだ空が見えた。

 外に出たってこと?

 でも、確か会場は二階だったはず。階段を降りた気配はなかったけど…………。


 そう思ってチラッと下を見ると一本のロープと小人のようなヒトの群れが見えた。


 まさか、この人、このロープの上を走っている?


 無意識に例の真っ黒な服を握りしめる。


 純粋に怖い。

 第三者から見るとカッコイイなって思うかもしれない。でもね、これ、ベルトなしのジェットコースターに乗っているようなもんだよ。

 万が一この人がロープから落ちたりなんかしたら私、冗談抜きで死んじゃうよ。死ななくても大怪我するよ。なんか、一周回って冷静になるよ、これ。変に暴れたら寿命縮まるよ。


 ドンッとこれまでで一番大きな爆発音が会場の方から聞こえた。


「うわっ!?」


 音とともにやって来た爆風はロープを波のように揺らし私たちを空中に放りだした。

 もうダメだと本気で思ったが、間一髪のところで建物の屋根の上に着地できた。(したのは私じゃなくて助けてくれた人なんだけどね)


 謎紳士(仮)さんは私を抱えたまま何軒か屋根を渡り空き家と思われるボロボロの建物の中に入った。


 うう……ガビとホコリの臭いがする……。私、敏感だからこういう所入ると鼻がムズムズするんだよね……。


 中は探偵ものの映画に出てきそうな廃ビルって感じ。薄暗くて灰色の無機質な壁がむき出し。所々に引き出しやらなんやらが残っているけどホコリと蜘蛛の巣で覆われている。

 外がヨーロッパ風の赤い屋根だったから本当に同じ世界なのか疑いたくなる。


 中に入ってからも私は抱っこされたままどこかに運ばれていた。


 あれ? これ、もしかしてやばい人なんじゃ…………。

 顔隠してるし服も全体的にやばい人って感じがする。


 と思った矢先優しくホコリが被った灰色の床に降ろされた。


「そ、その、あり……がとうございます。助けてくださって……」


 私と同じぐらいの背丈。

 女性か男性かもわからないその人は黙ったまま。

 お互いに見つめ合い無言の時間が過ぎていく。


 スっと相手が息をすい口を開きかけたがすぐに閉じた。

 あたりを警戒するように顔を動かす。

 そして、ある部分をじっと見つめだした。

 そこに何かあるのかと思って見てみたけどなにもない。

 なあんだと視線を戻すとそこには誰もいなかった。人のいた気配すらなかった。


「え?」


 左右上下を確認するが誰もいない。今のは……夢?


「わ、まさか、本当にこんな廃墟にいるなんて驚きだよ」


 いきなりのヒトの声に驚いて振り向くと見覚えのあるヒトが立っていた。


「ディミータさん! どうして、ここに!?」

「それは、こっちのセリフだよー。てっきりあのリュッツイが誘導して逃げ出していると思ってたから驚きだよ。やっぱり頼るものは君たちだよね」

「ピヨっ」

「ポッポ」

「チュンっ」


 可愛らし声で返事をしたのは鳥たち。種類だけで五種類、数にしたらざっと二十羽はいる。


「この子達がね、君がここにいるって騒いでてさ。ウソだーっていいながらきたんだよね」


 動物とおしゃべりなんてなんとメルヘンチックな。


「生物系の魔法しか使えないけどこういう時に便利だよね。ヒトの情報より信用出来るし」


 なるほど。魔法なのか……なら、私も動物とおしゃべりできるのかな? 出来たら嬉しいなあ。夢がある。


「どうやってここに来たかはひとまず置いといて一緒にお城に帰ろっか。もしかしたら、歩きになるかもしれないけど大丈夫?」

「ディミータア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! お前は一国の王なんだぞ!! 護衛の一人ぐらい付けてあるかんか!! それと、俺は召使いじゃない!! 自分とこの奴に頼め!!」


 大丈夫ですと言いかけて飛び込んできた怒号に遮られた。


「まあーまあー、落ち着いてって。親友のお前だから頼んでるんだよ」

「お前はもう少し王としての自覚を…………って! ええ!? な、なぜこんな廃墟に紅鏡の姫君が…………?」


 現れた黒髪に黒縁のメガネをかけた男性は怒るのを忘れて私とディミータさんを交互に見る。


「お、お前……結婚には興味がないって言ってたけどまさか……こんなところで……」


 うっ、うううと声を漏らしメガネを取って目頭を抑え始める。


「え、ちょ、ちょっと待って! なんか、色々勘違いしているぞ!?」

「そうか、そうか……。お前も結婚するんだな。悲しいよ、唯一の独身仲間同級生が結婚してしまうなんてさ」

「話しを聞けよ! ルギオス!!」


 なんでしょう……とてもキャラの濃い方の登場ですね。はい…………。


 私たち(正確にはディミータさん)を馬車で迎えに来てくださったのはヴェーチェル公国 大公 ルギオス・ベネット・レヴィンスさん。

 ディミータさんの幼なじみなんだそうです。


 ヴェーチェル公国は、主に吸血鬼の住む国でルギオスさんも吸血鬼なんだそうです。

 吸血鬼って太陽がダメなイメージがあったけど大丈夫なのかな? いや、それより気になることが……。


「いやー、ホント、ルギオスの勘違いぶりは面白かったよ!! 動画取っておけば良かったよ」

「いい加減笑うのはやめろ!」

「そうはいってもね……ふっふふ……ふふふ」


 お腹を抱えて笑うディミータさんに対しルギオスさんは頭を抱えている。


「ん? どうしたのからちゃん? 難しい顔して」

「ディミータ! 姫君にちゃん付けなんて……」


 顔をのぞき込むディミータさんを右手で制するルギオスさん。


「すみません、姫君。こいつ、ちょっと女たらしなところがあって」

「大丈夫です。姫君って言われるよりそっちの方が慣れているので」

「そうですか……」


 似ている。なんとなく似ている。


「ルギオスさんってご兄弟とかおられますか?」


 別に変な質問じゃないと思ったんだけどルギオスさんとディミータさんは驚いた顔で顔を見合わせる。


「誰かから聞きましたか?」


 馬車の中の空気が変わる。

 ルギオスの暗い赤色の瞳がぼんやり輝いたような気がした。


「いえ、なんとなく……」

「そう……ですか……」


 少し声のトーンを落として服の内ポケットから出したのはロケット型のペンダント。

 パカッと開くとそこには金髪緑瞳の青年が微笑んでいた。


 息を飲んだ。


 だって、その顔は私がよく知る顔だったから。こっちにいるはずのない人物の顔だったから。


「腹違いの弟です。名前はアスランっていいます。五年前に行方不明になってそれっきり会えてないんです」


 間違いない。姉の夫で私の義理の兄の名前だ。

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