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異世界で知ったホントの家族  作者: 桜江 李彩子
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王女? 女帝? いえ、一般人です!!

 皆もよく考えて欲しい。ある日、日本の大統領がぽっと出の誰かよくわからない人に変わったら絶対批判の嵐が巻き起こる。

 それに政治関係の知識ゼロの私に一体何が出来るというのだろうか。黙って会議に出席しても寝てしまう可能性大のこの私に。



「無理を言っているのは承知しています。ですが我々、いえ、この世界には貴女が必要なんです!!」


 ええ……リュツイさんまで手を握って熱い視線を送らないで…………。


「だからむ」

「そこを何とか!!」


 最後まで言わせて!!

 うーん……でも、どうせ地球には帰れないんだよね……。


「あの……リュツイさん。もしですよ? もし仮に私がリュツイさんの望むような返事をした場合私は何をすればいいんですか?」


 ああっ!! そ、そんなきらきらした目で見ないでください…………。まだ仮の話なんですからそんな満面の笑みを浮かべないでください……。


「世界平和連合の会長になって欲しいのです!!」


 私の手を握る力が強くなる。そして、より一層目が輝き出す。


 世界平和連合とは“二度と戦争を起こさないために全種族が手を取り合って生きていける世界を作ろう!”全ての国と地域が加盟している組織だそうです。地球で言う国連ですね。はい。


 その平連の拠点が私がいるこの建物。大昔に建てられたお城を修復したものらしい。


「あの、そういうことでしたら尚更、私のようなぽっと出の一般人ではない方がいい気がするのですが……」

「それが問題になっているんです。実はこの世界平和連合──通称平連は先程話した紅鏡(こうきょう)の王の伝説を実現させようと作られた組織なんです。そのため平連の決定事項は絶対。従わない国家は即制裁をくだすという規則がこの前の会議で決定してしまいまして……」


 ええっ!! 何それ……。


「世界を一つの国家として例えるなら平連が政府、国が都市となります。つまり、平連のトップ=世界のトップ。世界の王となってしまいます」


 なんだかそれ、とっても嫌な予感。


「そして今、誰がというよりどの国のどの種族がその王座に座るかで揉めているのです」


 ここでリュツイさん、私に無言の希望の眼差し光線を発射させる。


韓紅花(からくれない)様にはこの王座に座ってもらいたいのです」


 むーりーでーすー!!

 国だけの政治もあれだけど世界全体の政治とか無理だよ!! 大体なんでその平連に権限が集中しちゃってるの!! 三権分立しないとダメだよ!! 独裁国家だよ!! 国じゃないけど。


 すると私の気持ちを読み取ったのかリュツイさんがふっと笑う。


「とあれこれ言いましたが一つぶっちゃけたことを言ってもよろしいですか?」


 な、なんですか……。リュツイさん今日一番の笑顔で一体何を言おうとしていらっしゃるのですか…………。


「実際はトップが完全に仕切るのではありません。平連の中で各国の代表者たちが話し合いをしたものをトップが発表するだけです。

 トップはあくまで平連の“象徴”なんです」


 “象徴”……。今の日本の天皇陛下のような感じなのかな。


「生活の面は我々が何とかしましょう。何不自由のない生活をお約束します」


 ここで断っても地球に帰れないんだよね。なら、無一文でここで暮らし始めるより仕事も住むところも確保できるほうがいいよね。

 それに、この非日常にドキドキしている私もいる。最近、こういう物語が流行ってるよね。もしかしたら、私もそんな面白そうな体験をしているのかな?

 まあ、いいや。人生何とかなる! 今はできることを精一杯やろう!


「わかりました。そのお話お受けします」


 とリュツイさんの前では言ったものの納得できない部分がたくさんある。

 話がうますぎる。異世界転移している時点で十分非現実的だけどいきなり姫だのなんだのっておかしすぎる。

 あれ? そう言えば私、どうやってここに来たんだろう……?

 気が付いたらベッドの上にいたけどそれって誰かが運んだってことだよね? 

 一体誰が?



「韓紅花様、よければここを案内しますが」


 お言葉に甘えて案内してもらうことにした。

 ここは、古代ソールニチナ帝国の中心だった場所に建っているソール城。

 古代ソールニチナ帝国とは、紅鏡(こうきょう)の一族が治めていた国の名前らしい。

 かなり大きな国だったらしく今も世界中のあちこちで交流の証拠となる遺跡などが見つかっているそうだ。


 それにしても、私、どうやって転移してんだろう。全然、そういうフラグ的なものもなかったのに。

 うーん……。

 しかし、こればかりは考えていてもわかんないな…………。

 聞こうと思ってもリュツイさんはお庭に案内してくださったあと何処かに行っちゃったしな。あとで聞くこと忘れないようにしなくちゃ。


 それにしても綺麗なお庭ですね。赤色の薔薇が見事に咲き誇ってとってもいい香りがします。

 素敵なドレスを本物のメイドさんに着させてもらったので気分はお姫様。やっぱり、いくつになってもお姫様には憧れるなあ。


「わあ! ねえ君!! もしかしてさっきロットの隣にいた紅鏡(こうきょう)の王って子? すごい! 伝説通りのみためだね!」


 半分妄想の中にいた私を現実に引き戻してくれたのは、大きな耳が特徴的な方。もしかして、この方エルフ族? でも、私から見て左の白目の部分が黒…………。


「ねえねえ! そこのところどうなの?」

「え?」

「だから、君が紅鏡(こうきょう)の王?」

「ええ……そうです」


 なんだかグイグイくるヒトだな。


「やっぱりね! 僕はディミータ。エルフとオークのハーフなんだ。よろしく」


 ふふふと笑ってその場でくるっと回ってみせる。

 白いゆったりとした服がふわっと揺れそのあとを波打つ長い金の髪が重々しく追いかける。

 僕ってことは、男性? 髪が長いせいか女の人っぽい。


紅鏡(こうきょう)の一族はこの世界では、とっくの昔に滅んだと思ってたけど生き残りがいたなんてびっくりしたよ! でもでも! 親はもいなくて兄弟とかの家族もいないんでしょ? リュッツイに見つけてもらってよかったね! ここなら野獣に襲われる心配もないし衣食住も整っているからね!」


 なんか今さらっと大嘘が混じっていた気がしたけど……。

 親がいないのは事実だけど兄弟はいます!


「それで、えっと……何ちゃんだっけ?」


 きょろっと大きな髪と同じ瞳に私が見える。


美濃羽(みのわ) 韓紅花(からくれない)です」

「そっか。からちゃんは大丈夫なの?」

「えっと、何がですか?」


 主語がない。主語が。


「いきなり世界の王になるってこと。国だけでも大変なのに世界ってなるともっと大変だよ?」

「正直、不安しかありません……」


 返す言葉がそれしか見つからないよう。


「ん。それならいいんだ」


 にっこっと笑ってそう言い残してディミータさんは庭から出て行った。

 いや、何がいいんだろう。不安しかないのに。不安しかないのに! 不安しかないのにぃ!

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