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異世界で知ったホントの家族  作者: 桜江 李彩子
2/14

普通の女の子のはずでした。

 妖怪、魔法、神様などなど想像の世界は非日常で溢れています。


 なら“日常”ってなんなのかな。


 妖怪が常にいるのならそれは日常なのかな。

 魔法が常に使えるのならそれは日常なのかな。

 神様が常にいるのならそれは日常なのかな。


 あと、よく自己紹介である『私○○!! 普通の女の子!』の“普通”の意味も実際よくわかんない。


 何をもっての普通なのか。

 普通の基準がわかんない。


 そのせいで私が本当に“普通”であるという根拠が得られない。


 さて、ちょっと遅くなりましたが自己紹介をしようと思います。


 私は美濃羽(みのわ) 韓紅花(からくれない)

 五人兄妹の末っ子です。


 かなり変わっている名前でしょ? 一般的にからくれないという漢字は韓紅または唐紅と表記します。色彩の(あか)を表す言葉です。

 名前の由来は私の容姿からきています。


 皆さんはアルビノというものをご存知ですか?


 簡単に説明しますと遺伝子情報の欠陥によりメラニン色素がなくなることによって髪や肌が白く瞳の色が(あか)色になる現象のことです。

 瞳の色は紫になる方もいらっしゃるそうです。


 私はアルビノのため髪は白く瞳は(あか)色です。そのため韓紅花(からくれない)という名前になったそうです。


 私はアルビノですが中身はいたって“普通”です。

 勉強やスポーツが飛び抜けて出来るわけでもありません。非現実的な力もありません。


 そんな私は非日常が訪れたときの対処法が分かりません。


 ですから今、この状況にとても困っています。


「その雲よりも白く長い髪、その燃えるような(あか)い瞳! 貴女こそこの王座に座るのに相応しいお方なのです!!」


 うう、私の手を握り熱のこもった目で見られても私には人をたばねるリーダーシップはないよ…………。

 あと、そのテカる額、眩しい……。


「なんて素晴らしいことでしょう!! 二千年もの時を超えて紅鏡(こうきょう)の王が戻られたのだ!!」


 困る私に構わず後ろを振り返り声を張り上げて彼は観衆に喜びを告げる。

 わー!! と喜びに満ちた歓声が嘘みたいに広い部屋を埋め尽くす。天井が高いのでより一層声が部屋と私の中で響きわたる。

 部屋に集まったごつい鎧をまとった騎士たちは自分の持つ剣をかかげ貴族たちは扇子をかかげている。


 あの……私……何も返事していないんですけど…………。


「あ、あの! 私、家に帰らないと行けないんです! 家族が家で待ってますから!!」

「何を言いますか紅鏡(こうきょう)の姫君。ここが貴女の家ですよ」


 先程まで私の手を握っていた前の方の髪が薄い(というか一本もありませんが)方が悪気のなさそうな笑みで答える。


 なぜそんなにも私を無視して喜びの笑みを浮かべれるのか地球の日本で生まれ育った私には到底理解できない。話を聞いてほしい。


「どうしましたか? 姫君? 顔色があまりよくありませんよ?」


 いいはずがありませんよ。

 私は普通の女の子。そりゃあ、見た目は普通じゃないかもしれませんが、中身は普通です。

 第一、あまりにも話が突拍子です。

 見知らぬ部屋にいて、説明するのでこちらにと言われたからついてきたのに……意味が分かりません! 結局、説明されてないじゃないですか!

 そうです、きっとこれはただの夢です!


「ああ!! 姫君!! どうしたのですか!? いきなり頬をつねるなんて!!」


 うう……夢の中まで頬が痛いなんて……。とてもリアルな夢……。

 早く起きて兄さんたちとお洋服を見に行かなくてはいけないのに…………。

 そうだ! 夢では死なないってテレビで言ってたような。限界まで息を止めていれば夢から覚めれるかもしないな。よしっ!


「ひ、姫君? 今度は顔がだんだん青くなってきていますよ?」


 ご、ご心配なく。ああ、だんだん視界がぼやけてきました。きっと夢から覚めようとしているんだ…………。さあ、早く出かけよう…………。





























 目が覚めたのですから夢から覚めたと信じたかったです。

 ですが、この、私が寝ていたベッドで泣きじゃくっている額が輝いている方を見る限り失敗したようです。


「ロット様、いつまで泣きじゃくっているのですか。貴方、今年で五十四になるのでしょう? そんな姿を見られてはお子さんはもちろんお孫さんにも嫌われますよ」


 その一言でロットと呼ばれた額がテカっているオジサ……おじ様は涙をふく。

 ロットと呼ばれた人をたしなめたのは軽く180cmはこえるメガネをかけた大柄な男の人。

 ふわふわのほとんどプラチナの緑の髪は雪をかぶった草原を想像させる。それを否定する桜を思わせる薄い薄い瞳がとても印象的な人だった。さらに私に向けた人当たりの良さそうな笑顔で大きさによる圧迫感はあっても怖そうな雰囲気はない。


「お初目にかかります。(わたくし)、リュツイフェールと言います」


 深々と腰を折り挨拶をしてくれた方は私の手をとり…………え? き、ききキス!? え!? な、なぜ手の甲にキスを!! そんなの本の中の世界だけだと!! とっても紳士的でカッコイイですか……え、あ、えぇ〜…………。


「どうされましたか? 姫君?」


 キョトンとした顔を向けられた。これってこっちでは珍しくないものなのかな?


「あ、いえ、少し驚いただけです。それより少しお聞きしたいことが」

「はい。なんですか?」

「その、姫ってなんですか? 私、至って普通の一般人ですよ?」


 その質問に部屋の空気が氷柱となり私に突き刺さる。

 空気が『コイツ何言ってんだ?』といい、二人視線が槍となって私に向けられる。


「もしかしてですが、紅鏡(こうきょう)の王の話をご存知ない?」


 当然そんな話は知らなかったのでリュツイ……えっと……聞きなれない名前だったのでイマイチ覚えられてないのでリュツイさんとお呼びしましょう。

 リュツイさんに教えて貰った話によりここが異世界であることが確定しました。(そもそも最初に目を覚ましたときに窓の外に見えたドラゴン的なものを見た時からうすうす感じてたけどね)


 この世界には大きくわけて二つの種族があるようです。

 一つ目が魔族と呼ばれる魔法が使える種族。

 二つ目が私たちのような魔法の使えない種族。

 少し前までこの大きくわけて二つの種族は世界を巻き込んで戦争をしていました。

 今は互いに手を取り合い共存できるよう協力して世界の運営をしているようです。

 しかし、まだまだ課題も多く思うように話は進んでいないそうです。


 そんなこの世界各地で全く同じ内容で伝わっている伝説があるのだそうで。


 昔々、両種族は一つの大きな国で暮らしていました。そこでは争いはなく、大地は潤い作物は豊富で平和なところでした。

 国の王は髪は雲より白く燃えるような(あか)い瞳をもつ紅鏡(こうきょう)の一族によって治められていた。王は天地の声を聴きいて災害を回避し昼夜の声を聴き星を読んだという。

 だが、ある時、王座を羨んだものによって一族は滅んでしまい争いと飢えに苦しむ時代が続いた。

 新たな王の政治は続かず、いつの間にか国は分裂し今のように争いの多い世界になってしまった。


 聞いた内容はだいたいこんな感じ。


「話は分かりましたが、残念ながらお力にはなれません」


 確かに私はこの話に出てくる王様みたいに髪は白で目は紅いよ。

 でもね、 私、至って普通なの。平凡なの。一般人なの。

 天地の声なんて聴けないし昼夜の声を聴くことなんてできない。

 第一、私、こっちの世界の人間じゃないもの。


「それは…………なにゆえですか?」


 眉間にシワを寄せてロットさんが私の手を強く握る。


「ロット様、少しお席を外してもらってもよろしいでしょうか? 伝説を知らないところを見る限り何やらわけアリのようですし……。ここは(わたくし)にお任せ下さい。

 ロット様は残っている今日の分の書類をお願いします」


 ああ、わかったとリュツイさんの言葉に頷きロットさんは部屋を出ていった。


 もしかして、私、今、男の人と部屋で二人きり?

 この部屋、嘘みたいに広いから少女漫画みたいに“密室でキャー”って感じはないけどなんだか緊張するな…………。


「姫君」

「は、はい!!」


 うわっ! 声裏返っちゃった!! いや、それより……。


「あのっ! その、私、美濃羽(みのわ) 韓紅花(からくれない)って言います。なので、姫ではなく名前で呼んでください」


 姫じゃないのに姫って呼ばれたらなんだか騙してるみたいだもんね。


「そうですか。では、韓紅花(からくれない)様と及び致しますね」


 様付けも違和感あるけどまあいっか。


「それでですが、韓紅花(からくれない)様。なぜ、お引き受けして貰えないのでしょうか?」


 こてんと首を傾けて話を聞く姿勢は小さな子供みたい。実際は結構大きい男の大人の人だけど。


「簡単です。私はこの世界の人間ではないのです」


 家に帰りたいこと。仮にここで暮らすとしても一度家に帰って家族に詳細を伝える義務があること。

 今の自分の心境をありのまま話した。 


 リュツイさんは見た目通りのいい人でこんな嘘みたいな話を信じてくれた。

 だけど


韓紅花(からくれない)様のお気持ちはわかりました。しかし、我々の魔術を駆使しても元の世界に送り届けることができません」


 はい、でましたー。

 異世界転移あるある元の世界に帰れない!!

 当事者になってわかる。これは困る。

 例えるならいきなりだだっ広い草原に捨てられて言葉の通じない人達と一緒に暮らせって言われてるようなものだよ。不安だよ! お先真っ暗だよ!


「それに……」


 え、なになに? まだ、何かあるんですか!?


「先程、各国の代表者たちを集めた大広間でロット様が韓紅花(からくれない)様のことをその……」


 もしかして私が途中で窒息して倒れちゃったやつ? 各国の代表者?? 


「それって、まさか…………私には拒否権がないってことですか?」


 リュツイさんは申し訳なさそうに俯きはい……と消えそうな声で返事をした。

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