カギになるのは
私の部屋でもよかったけどルギオスさんが反対したのでいつかディミータさんと出会ったあの庭で教えてもらうことになった。
赤い薔薇が咲き誇る中、白い丸テーブルに用意してもらったお茶とお菓子。そして、美形のお二人。
とっても、とっても絵になります。
なんだか、とても場違いな気がして落ち着きません……。
「お茶とお菓子も用意したし、さっそく始めようか。お茶会」
「勉・強・会だ」
ミルクをたっぷり入れた紅茶を飲みながらルギオスさんが訂正する。
「……からちゃん、やっぱり部屋で勉強しない? 二人だけで」
「韓紅花様、こいつの言うことは無視して勉・強・会を始めましょうか」
ルギオスさんが身を乗り出して私に話しかけたのでディミータさんが私の視界から消える。
「そんなんだから結婚できないんだよ」
「俺ん家のワインは吸血鬼に人気なんだ。なあディミータ、お前、ちょっと材料にならないか?」
「ルギオスは性格もイケメンだから僕、とってもうらやましいな!」
ひきつった笑顔で私の隣の席に着く。
オセロなら私も美形になるのにな。
「ちょうど四人……四柱いるから二柱づつやろうか」
「じゃあ、俺は空間様と運命様をやるから、ディミ、生命様と大罪様をよろしく」
神様は一人、二人ではなく一柱、二柱と数えるように主様もそう数えるようですね。
「まずは、運命からがいいと思うよ。一番単純でわかりやすいから」
ひょいっとディミータさんら私の手から本を取り上げ表紙を眺める。
「様を付けろ、様を。だが、たしかにディミの言うとおり運命様から始めるか」
運命の主様は前にも紹介したように運命を司る主様。
役目は、運命を運命見守ること。
ヒトの個々の運命から家族、会社の団体。そして、社会や世界といった大きなものまで運命を定めることが出来る。
そんな主様は、最も崇拝されている主様で本宮(私が主様とあった場所ね)の他にも世界各国に宮が造られているそうだ。
「司ってる内容が内容だからかなり範囲が広いんだ。その分、味方にすれば心強いけど敵に回れば厄介極まりない。
どんな手を使ってくるか予測不可能だからね」
ディミータさんがルギオスさんの説明に補足を加える。
私、そんな方と気軽に話してたのか……。
「次は、からちゃんの気になる主からいこうか。誰が一番気になる?
あと、生命、空間、大罪が残ってるけど」
「なら、大罪様からお願いします」
大罪と聞くと聖書に出てくる七つの大罪が思い浮かぶ。
それらをテーマにした作品はいくつもあったし、どれも奥が深くて面白かった。
色欲、暴食、傲慢、怠惰、嫉妬、強欲、憤怒。それぞれに象徴となる悪魔がいて人を堕落へと導く地獄の使い。
となると名前から推測するにその悪魔達を束ねるサタンみたいな方なのかな?
「大罪の主の役目は、罪を裁き罰を与えること。
この主には眷属が七体いる。色欲、暴食、傲慢、怠惰、嫉妬、強欲、憤怒の悪魔たち。だけど、彼らはヒトを陥れるような行動は取らない。彼らの役目は監視。罪人がどれだけその事柄で罪を犯したかを監視するんだ。
そして、彼らを従え最後の審判をくだすのが大罪の主ってわけ」
へぇ〜! ということは、サタンじゃなくて閻魔様のような感じなのか。悪魔も結構働き者だなあ。
「次は、誰がいい? 希望がないなら空間からいく?」
特に希望はなかったので空間の主様の説明をしてもらいました。
空間の主様の役目は、空間を創り出し維持すること。
土、風、水、火、闇、光、空気、重力など空間に存在しているもの全てを創り出すことが出来るそうで魔法を使う上で最も重視される主様だとそうです。
また、結界や瞬間移動といった魔法も司っているらしく四柱の中で最強とも囁かれているのだそう。
「この主様にも眷属が居られるのですが、人数は不明なんです。
火の精霊、水の精霊などと呼ばれるモノは基本、この空間の主様の眷属と考えてもらって大丈夫です」
不明ってことは沢山いるってことだよね。わあ、まとめるの大変そうだな。
人数が多ければ多いほどトラブルとか多いもんね。
「最後は、生命か。これも結構わかりやすいよ。
役目は、生命を創り出し与えること。
そのせいで女性っていうイメージが強いけど実際は性別不明。というか、主の性別を記したものは一切ないんだよね」
でもほら、とディミータさんが本の表紙を指す。指先には、ゆったりとした白い服でも分かる豊かな胸。金の髪の間から覗く小さいお顔には、柔らかい聖女の頬笑みを浮かべている。
「あーあ。こんな美女と結婚したいよ〜」
ぐでーんと机に突っ伏してディミータさんが大きなため息をつく。
「お前には、そういうお見合い写真がわんさか来てんだろ。
あの美形ぞろいのエルフ族の貴族から頼まなくても来るってこの前酔った席で言ってたじゃないか」
呆れた赤黒い瞳でじとっとルギオスさんは羨ましそうに言う。
「分かってないな、ルギオス! お見合いなんてロマンの欠けらも無い出会いで結婚なんて真っ平御免だよ! 運命的な恋をしてから結婚したいんだよ! そして、そのお相手がこんな美女だったらいいなって言ってるんだよ!!」
「…………あー、だったら運命様に頼めばいいじゃないか」
ルギオスさん……完全に呆れてる。もう、どうでもいいって顔になってる……。
「頼むってどうやって」
「韓紅花様に頼んで今のことを直接、運命様に伝えてもらったらどうだ?」
「やだ」
即答。
ディミータさんたらガバッて音がするんじゃないかって勢いで立ち上がる。
「あんなやつに頼んで出会う出会いなんて出会いじゃない!!」
金の瞳に熱意がこもっている……。
確かに頼んで出会う運命の出会いって運命的じゃないかも……。
「文句が多い!!」
「いいや! これは、文句じゃないね! 仕組まれて出会う運命なんて運命じゃない!! 偶然、奇跡的な出会いをしてこそ運命だ!!」
「乙女か!!」
ぷんぷん怒りながらディミータさんは金の髪を尖った耳にかける。その姿は、男というより女。綺麗な金髪はまとめていても腰ぐらいまであるからルギオスさんの言う通り乙女みたい。
「それに頼むんだったら自由に行き来できるように頼めばいいじゃないか」
ムスッとした顔でディミータさんは私を見る。
「それなんですが、自由に行き来できるようになるには眷属になる他にないと言われまして……」
そうなんだ、と呟いてディミータさんは探偵のように顎に手を当てる。
「なら、こんなのはどうかな?」




