困った主様
図書室にいた司書さんに聞いたらわかりやすくまとめられた文庫本サイズの本を薦められた。
主様は魔法を使うにのも重要なのでそういった本がたくさんあるから一通り頭に入れて詳しものを読んだらいいとも言ってくれた。
宇宙のような背景を背にしてこちらを見ている四人がきっと主様なんだろう。
勘だけど右から二番目の分厚い本を持っているのが運命の主様だと思う。男よりの中性的な顔立ちでキリリとしたまなざしがかっこいい。さらに派手すぎない威厳のある服装がヒトならざる者であることを物語っている。
実際は中学生ぐらいの女の子なんだけどね。
本物にあってから想像で書かれたものを見ると違いすぎて面白い。
想像はヒトの自由だよね、と考えながら俯いて角を曲がったらいきなり白い布の中にドサッとぶつかってしまった。
うっ……。地味に痛い。
こんなところにモノなんてあったかなあ?
「あ、ごめんっ! あれ? からちゃんじゃん」
上から聞こえてきたのは、ディミータさんの声。
反射的に顔を上げると超美形の深い金色の瞳に私が見えた。
状況を理解したらかぁっと耳があつくなった。なんだか頬から湯気が出てきたような気がしてバッと後ろへ下がる。
「し、失礼しましたっ!」
「?」
不思議そうに首をひねってからニヤッと笑った。
「ねえねえ、なんでそんなに顔、真っ赤なの? なに? 僕にでも惚れた?」
否定するまもなく腰に手を回されグイッとディミータさんの方へ引き寄せられた。それか、自分で言うのも恥ずかしいけどいわゆる顎クイというものをされた。
何コレ、めちゃくちゃ恥ずかしい!!
好きとか嫌いとかの問題じゃないよ、これ!! 純粋に恥ずかしいよ!!
…………それに美形だから見とれちゃう。
最初は不気味だなって思ってしまった左眼も美しいなって思っちゃう。
「ねえ、僕のこと好き?」
うっ……。そ、そんな真剣な目で見られたらNOとは言えないよ! 逆にNOと言えるヒトを見てみたいよ!!
「ノーコメントなら僕、勘違いしゃうけどいい?」
ふぎゃぁぁぁぁぁあぁあああああ!!
顔! なんで距離縮めるの!? 近すぎだよ!! 心臓爆発しちゃうよ!!
「なにしてんだア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!
ディミータあああああああああああ!!」
「グハッ!!」
いつか聞いた怒号と共に飛んできた分厚い本がディミータさんの後頭部にクリティカルヒットした。
純粋に痛そう……。
「何するんだ! ルギオス! 痛いじゃないか!」
「白昼堂々とセクハラ行為するな! ドアホ!!」
ディミータさんはとっても小さな声でセクハラじゃないもん……と呟いたけどルギオスさんにひと睨みされて黙った。
こっちの世界にもセクハラってあるんだ。
「ぼ、僕はただ、からちゃんにぶつかったから謝ってただけだよ!」
「謝るだけで体をあそこまで引っ付かせる理由を五百文字以上で言えたらセクハラ行為という言葉を取り消そう」
「口答えしてすみませんでした」
「分かればよろしい。分かれば」
なんだろう。このやり取りの感じがとても懐かしい。
ああ。これ、姉さんとアスランとのやり取りだ。
仕事サボった言い訳をしているアスランとお小言を言っている姉さん。
やり取りしている本人は真剣なんだろうけど横で聞いているとクスッと笑っちゃうようなやり取り。
仲がいい証拠だよね。
「さて、コレのことはひとまず置いといてあれから扉については何かわかりましたか?」
コレとは失礼な、コレとは! と横でお怒りのディミータさんを無視して話を続ける。
「いえ……とくには」
ない。と言いかけてさっきの主様との会話で重要なことを思い出した。
主の眷属になればあらゆる世界を自由に行き来できるようになる。
主や眷属たちが手引きしたら一回ぐらいは生きている魂を移動させることが可能だね。
「あの、先程、運命の主様とお話ししてたんですが時空を移動するには膨大な魔力が必要で主や眷属でないと自由に行き来できないそうです。それか、主か眷属が手引きすることによって一回ぐらいなら移動させることができるそうです」
「主や眷属……」
ルギオスさんの視線が私の目を外れ下に下がっていく。
運命の主様の話が本当なら私は主様たちの手によって来たことになる。そして、アスランもそういう超人的な力で地球に来たということだ。
「というか主が来ていたんだ。僕はてっきり宮にこもっているとばかり思ってたよ」
暗い空気を吹き飛ばすようにディミータさんが会話に戻ってくる。
「それで、主のことを知ろうとその本借りたの? もう読んだ?」
「いえ、これから部屋に帰って読もうかと」
疲れたからあったいお茶でも飲みながら読もうかなって思ってる。
図書室にこもるのもいいけどお姫様らしくテラスで優雅に飲むのも悪くないかなって。
「なら、僕たちが補足説明とかしてあげようか? ちょうど今日の会議全部終わったからついでにい茶でも飲みながら勉強しようよ」
ニコッと目を細め私の肩に手を回す。
男らしいたくましい手だな。兄さんたちの手よりがっちりしてる。
「は!? お前、正気か!? 女の子の部屋に押し掛けるとか図々しいぞ! 破廉恥にもほどがある!」
ルギオスさん、顔真っ赤。
「わールギオスの変態ー(棒)。僕は純粋に親切だと思っていったのにルギオス君は一体何を想像しちゃったのかなあ? によによ」
「お前、ワインの材料にするぞ」
「それは、ご勘弁を」




