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戦いの知恵。


「足場悪いから、気をつけるんだぞ」

「は、はい」


ゴツゴツの岩で足場が悪い洞窟は、狭くランプをつけても中は暗く先はよく見えない。なのに、エルマさんは怯える事もなくドンドン先へ進んでいく。大剣は邪魔になると言って、外へ置いてきたらしい。短剣や縄はあるから平気だ、と言った。


(待ってるのは死だけ、か)


ずっと頭の中で繰り返されてる、耳について離れない。エルマさんの声は、幼いのに重みがある。力強さがある、歩き方だって喋り方だって今洞窟にいるのと、さっき村を歩いてきた時は全く違う。何というか、たぶん、僕よりずっと色んな事を経験してきたんだと思う。


まだ良く知らないけど、この国で一番有名なら本当に凄い人なんだ。


(そう思うとなんか、僕なんかと一緒にいていいのか不安になってきたな)


僕には治療しかできない。


(戦うって、どういう事なんだろう)


「見えてきた、スライムの跡だな。あっちはゴブリンの糞」

「糞⋯⋯に、匂いますね、だいぶ」


思わず鼻をつまんだ、エルマさんはただじっくりと地面を見つめて足跡を追っていく。しばらく歩くと、広い所に出た。


「広い、ですね」

「ここがアジトだろうな、魔物の匂いがする」

「魔物に匂いなんて、あるんですか?」

「あるぞ」


(全然分からない⋯⋯ )


洞窟内は静まり返って、遠くでピチャリと水の音がする。


「でも、姿は見えないですね」

「⋯⋯そうでもないぞ」

「え?」


エルマさんは徐に短剣を取り出して放り投げた、鉄の音が洞窟内に響く。


「え、あの、エルマさん武器投げていいんですか?」

「あれ一本なわけないだろ?だいじょぶだ」

戦意の熱に溢れた勇者様の目元が笑い、すぐ様もう一つの短剣を取り出した。


「おまえも、戦う準備しとけよな」

「あ、はい!」


(そうだ、僕も見てるだけじゃ⋯⋯いや、待てよ。エルマさんが傷を負う事なんてあるのか?)


名の知れた勇者、剣士、魔法だって使える。戦いってる所は見たことないけど、それこそ実力なんて誰にも測れないような人なんだろう。あの人だかりは、エルマさんの凄さを何よりも物語ってた。


相手はゴブリンとスライム、数は少ないらしいし何より新人冒険者向けに用意されてるような弱い魔物だ、その弱さはよく知ってる。だって、僕でさえ一度倒したことがあった。スライムは特に、小さい頃家の近くの草むらでたまたま遭遇して、たまたま手に持ってた木の棒で何回か叩いただけで倒せたんだ。ゴブリンだってその弱さはよく知られてる。


(でも、これは僕の腕試しな訳だし、ちゃんとやらないと⋯⋯)


僕は持ってきた一冊の本のページを開いた、他の荷物は村に預けてきたけど、この本がないと治療魔法は出来ない。もっと、上手くなれば本無しでも出来るようになるけど、まだそれは遠い話。


「ヒールのページは⋯⋯あった」


「準備はいいか?」

「はっ、はい!」


「来るぞ」


「ギイィィィッ!ギィッギィッ!」

興奮したゴブリンが目を赤く光らせてる、緑色の体、それぞれが手に持った木の棒や弓、鉄の棒。体はエルマさんの膝ぐらい小さく、数も少ない。


(良かった、依頼通りだ)


「ギィィ、ギィイイイっ!」


カチャン、カチャンと鉄の擦れる音が響く。でもエルマさんは一切身動きを取らない、ただ一方を見つめてただ立っているだけ。しかも、少し離れた僕の横にいる。


(前には出ないのかな、あの人なりの構えなのか⋯⋯?)


そして、ゴブリン達の敵視はエルマさんに向けられた。次々に弓矢が放たれ、次々にゴブリン達がエルマさんに向かって走り出す。


「え、エルマさん!ゴブリンが!」

「⋯⋯」



ピュンっと放たれた弓は見事にエルマさんの足首に命中した。


「エルマさん!」


なのに、動かない。エルマさんは、ただ立っているだけ、足首からは確かに血が流れてる。痛いはずなのに。

「っ、エルマさん!」

何度呼びかけても反応がない、でもエルマさんの目は変わらず戦意に燃えている。


(なんで反撃しないんだ?このままじゃ、やられる⋯⋯いくらなんでも、そんな馬鹿な)


「っ」

「ギィイ!ギィイ!」


鉄の棒や木の棒で足元を何度も殴られて、弓は足に擦り刺さり、血はみるみるうちに地に溜まっていく。次第にエルマさんの顔も歪み始めた、3分も立った、それでも剣を振るおうとはしない。見ていて痛々しいほど、傷は増えていく。


「エルマさん、なんで戦わないんですか?!」


「何いってんだ!」

「エルマさん⋯⋯」


「これはおまえの腕試しだ。戦わないと、死ぬだ けだ。わたしが戦って終わったら、意味がないだろ、っ。戦えない奴に背中は預けられない」

「⋯⋯」

「おまえのやり方で戦えばいい」


(あぁ、そっか)


「ーーー地なる神よ、傷を、癒し給え」


(戦うってことは、剣を振るう事じゃない。パーティは一人(ソロ)じゃないんだ)


「ヒール!ヒール!ヒール!っ、ヒール!からの、ヒール!」


僕の足元とエルマさんの足元に魔法陣が現れる、傷はみるみる癒えて、流れる血は止まっていく。魔法陣は更に拡大していく。


「ま、まだヒールいりますか!?」

「いや、もう十分だぞ」


エルマさんはにんまりと笑った。とても楽しそうに僕より数歩前に出た、その背中がとても強く見える。


「ギィイ!」

「おまえら、悪かったな。相手してやれなくて」

「ギィイ、ギィイ!」

「そう怒るなって。今から、わたしも戦ってやるぞ」


片手に短剣を構えた。赤い瞳は燃えながら笑う。




「さぁ、戦おう!テオルド」

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