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はじめての冒険。


「あの、なんで治療士なんですか?」

「んー?なんでって、そりゃあ」


僕とエルマさんは冒険者ギルドを出て、スライムとゴブリン退治の依頼の為に王都から近いある村の洞窟へ向かっていた。数ヶ月前から村の畑を荒らしたり、夜な夜な村で騒ぎを起こしてるらしい。


「ポーション代、浮かせる為だな」

「え?」

「ま、まぁ、いいだろ!私は魔法もそこそこ出来るけど、どうしても治療魔法だけは苦手なんだ!」


まさか、ポーション代を浮かせる為にパーティに誘われたなんて。複雑な気持ちで僕は、エルマさんを見つめる。


「⋯⋯あーだけどなっ、パーティを組んだからにはちゃんと仕事はしてもらうから安心しろ!なっ!」

「う、うわっ!」


エルマさんはガハハハと笑い僕の背中を叩いた、あまりに強い力で思わず転びそうなった。

(大丈夫かな、思ったよりずっと荒っぽい人だった⋯⋯)


「お、着いたな!」

「え?」

ふとエルマさんの足が止まり僕はハッとして前を向いた。王都に近い小さな村、木造りの家が数件並ぶ。人口は少ないけど皆が皆助け合って暮らしている、ルフル村というらしい。

「ここ周辺の洞窟でスライムとゴブリン退治、ですよね」

「そうだな。まずは、村長に挨拶に行こう!」

「あ、ちょっと、待ってください」


エルマさんはズカズカと村へ入っていく、その後を僕も慌てて追った。


「村長の家はここか、よしっ」

エルマさんは一際大きな家の前でまた足を止め、息を大きく吸った。


「たぁーのぉーもぉー!」

「エエェエルマさん!め、迷惑ですよ!近所迷惑!」

「ははははっ、この言葉一回使ってみたかったんだっ」


エルマさんは無邪気にお腹を抑えて笑う、信じられない、初対面の人の家でこんな事が出来るだろうか。きっと酷く叱られる⋯⋯。


「おぉ、元気のある若者じゃな。なんだなんだ、何の用だ?」

杖をついたしわくちゃのおじいさんが、扉から顔を出した、口元の立派な白髭が目につく。


「おっ、アンタが依頼主の村長か?」

「依頼⋯⋯?あぁ確かに、わしがこの村の村長で、洞窟の魔物退治の依頼を出したぞ」


「やっぱりそうかー!私は、いや、私達はその魔物退治にきたんだ、早速依頼に取り掛かるから挨拶にと思ってな!」


「そうかそうか、君達二人がやってくれるんじゃな。有難い。二ヶ月前からずっと困ってての、だが依頼を出せるほどの金もなく、我慢してきたんじゃ」


おじいさんは、目細めて顔をしわくちゃにして微笑みを見せた。


「もちろん、任せときな!私達にかかったら一文字、ん?いち、いちもう⋯⋯?」

「えっと、一網打尽ですか?」

「それだそれっ、流石私の相棒だな!」


ドンドンッ

「わっ!」

(背骨が、折れそう⋯⋯)


「さぁ、そうと決まったら早速行ってくるな!すぐに終わらせるから、もう報酬用意して待っててくれ、ワッハッハッハ!さぁ行こうぜ、テオルド」

「⋯⋯はい」


エルマさんはそう言うとさっさと洞窟へ向かって歩き始めた、僕はまた慌ててその後を追う。


「あ、あの」

「んー?どうかしたか?」

「いや、エルマさんは勇者?なんですよね」

「周りはそう呼んでるな、私は自分のこと勇者だとは思わないぞ」


「なら、どうしてゴブリンとかスライムとか一番弱い魔物の依頼を選んだんですか?」

「なんでって、おまえの腕試しに決まってるだろ?」

「は?」


(腕試し?剣士でも魔導師でもない治療士が?)


僕の足はなぜか止まった、僕の意思じゃない。エルマさんの足が止まったからだ。


「おまえ、なんか勘違いしてないか?」

「⋯⋯え?」

治療師(ヒーラー)だって戦うんだぞ」


そう言って真っ直ぐな目で僕を見る。


「でも、前線で戦う訳じゃ⋯⋯」

「そうか。なら、おまえに待ってるのは死だけだな」



冷たい表情でマントを翻して再び歩き始めてしまった。


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