突如現れた者
「もう六時半になるとこでしょう?なんでこんなに暗いのよっ!」
「不思議です。邪悪な気が漂っているのが私でもわかります。」
「奴が動き出したと見ていいだろう。」
「ど、どうしたらいいんだろう。」
「恵瑠っ、今すぐあいつをボッコボコにしてやりに行きましょう!今までの仕返しよ!」
「落ち着け落ち着け。あいつが何をしてくるかわからないし、まずは周りがどうなっているのか見に行くのが先だ。」
「そうですよ、ミアさん。まずは人々の生存確認が先です。」
「むぅ、分かったわよ~。」
「まずはリトル街です。」
「了解。」
四人はリトル街に来てみた。が、街はボロボロになっていた。建物は壊され、中心の噴水は水が噴き出ていなかった。
「こ、これは・・・・。」
ミアは驚愕する。
「嘘・・・、ですよね・・・・?」
春香は顔を青ざめていた。
「っ・・・・・・。」
恵瑠は言葉も出ない。
いつの間にか遠くに行っていた翼が帰ってきた。
「街中を見て回ったが死体と思われるものは何一つ見当たらなかった。きっとどこかに避難しているんだろう。」
「でも、いったいどこへ・・・?」
と悩んでいると、遠くから異様な叫び声が聞こえた。叫び声の方を見ると外には見たことのない生物がいた。
「で、でっか・・・・。何メートルあるのよ・・・・・。」
「う、牛の頭に人の体・・・・?」
「こ、これ、ミノタウロスってやつじゃないですかぁ?」
「ああ、「亜人」だな。」
「亜人?」
「この世界には人間や妖以外にも住んでいる生物がいる。「亜人」は人間と似て非なる生物。」
「ええ、どう見ても人間じゃないわ。」
「こんなに大きい生物、見たことないです・・・・。」
「普段は深い森や深い海、地の底などに住んでいるからな。人間の前には決して姿を現さない。」
「そんな生き物がいきなり人間の住処にやってきて、きっと人間を襲ったのでしょう。どうしていきなり。」
恵瑠は目の前の亜人を見つめた。亜人の額を見ると、黒いもやもやとしたものが見えた。
「気が目に見えているなんて・・・・、きっと、あいつが・・・・・。」
「あいつ」という言葉で思い浮かべる人物はみんな一致していた。
「た、助けてよー!」
急に声が聞こえた。翼は目をつぶり、何かを感じ取った。
「向こうの瓦礫の中に、誰かが取り残されている!」
「ええぇ!助けなきゃ!」
「行きますよ!」
春香は薙刀を構え、走り出すと、思いっきり亜人を斬りつける。斬りつけられた亜人は顔をピクリとも動かさずにこちらを見た。大きく飛んで斬りかかる春香を叩き落とす。
「きゃっ。」
「春香っ!」
「思ったより頑丈だな。」
翼とミアが一斉にかかろうとした時、「まって」と声が聞こえた。
振り返るとそこには亜人に向き合う恵瑠の姿。二人は構えをとき、遠回りで瓦礫の方に走っていった。
亜人は二人に目を付けたが、足元に光弾を放たれ恵瑠を見た。
しかし振り返った時には時はすでに遅かった。手前に魔法陣を構えた恵瑠は魔法陣の中心に魔力を集中させると青い光が集まる。
「‘ブルージェット‘」
魔法陣の中心に集まった光は青い光線となり、亜人に命中した。そして、ひるんだすきに聖なる力がこもった雷が落ちる。亜人は気絶していた。恵瑠は亜人に近づき額の黒い気がなくなっているのを確認すると、瓦礫の下で動けなくなっていた何かの方に向かった。