恵瑠が起きた!
お知らせです。この連載小説の登録必須キーワードに「異世界転生」というタグをつけていましたが、転生とは全く違ったものだったので、消させていただきました。
なんていうか、申し訳ありません。
それでは、引き続きお楽しみください。
前回、恵瑠の奪還に成功した翼、春香、ミアは恵瑠の家に行き、恵瑠をベットに寝かせ、今後の問題について考えていた。問題というのは、影の恵瑠のことだ。
「あの影恵瑠、次は絶対に逃がさないんだから!」
「お、落ち着いてください、ミアさん。」
「まいったなぁ、まさか、目的も明かせずに逃げられるとは・・・。」
「い、今は恵瑠ちゃんが目を覚ますまで大人しく待ちましょう。」
「あ、それにしてもさ、翼。」
「ん?」
「なんで翼が恵瑠を斬った時に二つに分かれたのよ。普通死ぬわよ?」
「ああ、あれは恵瑠斬ったんじゃなくて、恵瑠の精神を斬ったんだよ。」
「まさか、本当にミス・ソルシエールの言うとおりにできたの?」
「目に見えてしまえば、個体として存在するものもしないものも関係ない。」
「ふぅ~ん、あんたなぞねぇ。」
「話がそれたが、あの影、どこに行ったんだ?もう森の中には気配は感じないな。」
「あいつをどうやって倒すかわかれば、こっちの勝ちは決定なのに!」
ミアは握りこぶしをぎりぎりと握る。
「あの、それは・・・、恵瑠ちゃんにしかできないことだと思います。」
「え、どうしてそう思うのよ、春香。」
「影の恵瑠ちゃんが放っていた黒い光、何だかだいたい予想できたんです。」
「あ、あれか・・・。何なのか私にはわからないわ。」
「あれ、影の雷、なのだと思います。」
「影の雷、か。恵瑠が光の雷を操れるのなら納得がいくな。」
「そうだとしたら、影の雷の対となる雷、つまり光の雷だけが、たった一つの抵抗力だと思います。」
「なるほど、つまり春香は恵瑠が起きないと何も始まらないというのね。」
「はい。」
「悔しいけど、確かにそうね。でも、どんだけ寝る気なの!?こいつ!」
「落ち着け。体を乗っ取られていたんだ。思ったより疲労が溜まっているんだろう。」
「ゆっくり待ちましょう。」
それから何時間もたった。気が付けば外はもう暗くなっていた。翼は春香とミアに「もう帰ってもいい」と言ったが、「起きるのを待ちたい」と言いここに残っていた。
「・・・・・ん・・・・・・・。」
恵瑠がピクリと動く。三人は恵瑠に目を向けると、恵瑠の目が開いていた。
「え、恵瑠ぅ!もうっ、心配したのよ!?」
「恵瑠ちゃん!よかった、どこか悪いとことかないですか?」
「春香、ミア。」
恵瑠は起き上がり、奥から見て安心した表情をしたいた翼が立っていた。
「翼・・・。」
「記憶はしっかりしているか?」
「いいや・・・、ただ、夢を見ていた。ずっと昔の夢を。」
翼はこれまでの出来事をゆっくりと話した。
「そっか・・・、私がみんなを・・・・・。」
「なにを、あんたじゃなくて、あんたの影がやったんでしょ!?」
「恵瑠ちゃんは何も悪くありません。仕方のないことなのです。」
「でも・・・、私が・・・ここに来なければ・・・・・。」
「落ち着け、目覚めたばかりだから混乱してるんだろう。夜明けまで休んでろ。春香とミアも。作っといた味噌汁あっためてくる。」
と言い翼は下の階のキッチンに行ってしまった。それから四つのお椀が乗ったおぼんを持ってきた。
みんなで食事を済ませ、翼以外はそのまま眠りに落ちた。
午前六時、翼は外に出てみたが外は暗いままだった。いや、むしろ寝る前よりも暗くなっているのは気のせいだろうか。家の中に戻り白米と味噌汁を用意し恵瑠たちを呼びに行き、食事を済ませ、今後のことを話し合うことにした。




