自分の存在価値
果林と出会ってからエルゥの生活に少し変化が出た。学校でのいじめは相変わらずだが、暴力は心なしか少し減ってきたかもしれない。帰りは校門前で果林がエルゥを待っていて一緒に帰ってるため、誰もエルゥには近づくことはできない。前からだけど。
果林は中学一年生でエルゥと二つ年上だった。通ってる中学はエルゥの通う小学校と近く、家もエルゥと近い。色んな意味で奇跡だと思う。そう、いるかいないかもわからない神様の中にエルゥを哀れんだ神様が与えた奇跡。休日はいつも果林の家に遊びに行ったり、果林と一緒に遊びに行ったりと、親友とも言える友達はエルゥは生まれて初めてだった。
ゴールデンウィーク中だった。エルゥは果林の家で遊んで、遊び疲れて果林の部屋で昼寝をしていた。目を覚ましたエルゥは近くで考え込んでいる果林を見て、
「どしたの果林。」
と尋ねた。果林はエルゥの顔を見る。
「あ、エルゥ、起きたんだ。あのね、」
「うん。」
「エルゥ、この前、自分の名前が嫌いだと言ったじゃん。」
「言ったね。」
そう、エルゥは家族が大の嫌いだった。なぜなら、昔優しかった母が冷酷な生物へと変わり果ててしまったから。だから、エルゥを愛することをやめた母も、母の優しさを奪った仮の家族もみんな嫌いなのだ。そんなやつらからつけられた名など、持っていて苦しいだけだ。
「それ思い出して私、エルゥに新しい名前を付けるとしたら、何がいいかなって、考えてたの。今、気にいってるのが、「白天 恵瑠」。白天が、エルゥは天使の羽みたいに髪がきれいな白だから。恵瑠はね、「恵」っていう字が思いやりっていう意味があるの。エルゥは優しい子だって私は知ってるから、だからこの字とピッタリな字を組み合わせて、「恵瑠」。」
「・・・・・・いいね、私、そんな名前でいたかった。」
「そう?ありがとう!」
ずっと仲良く遊んでいた。喧嘩も、軽くはほんの少しあったけど、大喧嘩とかは一回もなかった。
そんな状態が、夏休みも続き、9月に入った。
学校が終わった直後、校門にいる果林の元へ行こうとしたとき、後ろから「あのさぁ。」と声をかけられた。エルゥはおびえながら後ろを振り返る。
「最近あんた、あの人と一緒にいるじゃん。」
「なにあれ、きもいんですけど。」
「だらしなくない?そうやって弱くて汚い自分を強い人に守ってもらおうなんてさ。」
「エルゥは弱虫だけど、意気地なしなんだね。あんたうざいのよ。」
きっと、帰り道での暴力ができないからきれたのだろう。暴力なら学校内でもできるが、やりすぎると先生や他の生徒に見つかってしまうため、思いっきり暴力がふるえるのは放課後の帰り道だけだった。
でも、今日はほとんどの先生が出張でいない。思い思いに暴力が出来るのは今日がチャンスだ。
エルゥは走ろうとしたが、「待てよ。」と横で待ち構えていた男子に捕まり、そのまま殴られた。
「ぐぅぅ」
「あはははは!」
「だっさぁ~!」
殴られたエルゥを見てみんなが笑い始めた。そして、笑いながら殴って、蹴って、踏みつけてを繰り返した。
「あははは!死ね!」
「カス!」
「クズ!」
「ゴミ!」
「ゴミ捨て場に帰れ!」
「クソ!」
痛いのは体だけではなかった。色んなものが欠けていく。
「あんたは生きる価値のない生ごみなんだよ!」
いじめっ子のリーダーの最後の蹴りが腹に入った。
「ううっ、おうえっ」
「あっはははははははははははは!」
「ぎゃはははははははははははは!」
いじめっ子達は笑いながら教室を出ていった。
エルゥはゆっくりと立ち上がると、自分の中に疑問が出てきた。
自分の存在価値って、何だろう?




