新生活と入学式
けっこう長い間飛行機に乗っていた。何時間もかけ、やっと日本の空港に着いた。
飛行機から降り、空港の外に出ると、父の会社の社員がいた。
「アイリッシュさん。ようこそいらっしゃいました。わたくし、鈴木と申します。」
そう言って鈴木さんは黒い車に乗せてもらった。それで、役所に連れてってもらい鈴木さんの助けをもらいつつじゅうみ・・・・、ま、いろいろ済ませて、それから家まで送ってもらった。家は会社が用意してくれたらしい。ごく普通の一軒家だった。家具はすでにそろえてもらっていた。ともかく、エルゥの日本での生活はここから幕を開けたのである。
しかし、その幕開けは地獄の始まりだったのかもしれなかった。
時は3年後の4月となり、小学校入学式を迎えた。エルゥは一年生となる日だった。エルゥは小学校生活が楽しみだった。入学式は父と母と一緒に登校した。
時間は飛んで体育館での入学式が始まる前、保護者等が集まった体育館の入り口で入場の前だった。エルゥはふと周りを見てみた。元気そうな男の子、優しそうな女の子、緊張してる男の子、賢そうな女の子、色んな人がいた。
「おーい、一年生!そろそろ入場するぞ~!列に並んで六年生と手を繋いでちゃんと連れてってもらうんだぞ。」
エルゥははっとし、隣の六年生を見た。自分よりも大きな六年生はエルゥにとっては怖かった。六年生はエルゥを見ると、優しい目で見て、優しい声で「よろしくね。」と言った。エルゥはホッとして差し出された手を取る。
「一年生の入場です。」
一年生が列になって体育館を歩いて行った。そして、舞台の前に設置されていた台のようなものの元へ六年生に誘導され、順番に座っていく。
「始めの言葉、校長先生、お願いします。」
「これから平成XX年度、入学式を始めます。」
それから、国歌やら校歌やら歌い、校長先生の長い話を聞き終わった。
担任の先生が今から名前を呼ぶそうだ。名前を呼ばれたら「はい」と言うのだ。色んな子の名前が呼ばれ、「はい!」と言う声が体育館に響き渡った。エルゥの番になる。
「エルゥ・アイリッシュ。」
「はい!」
周りから小さな声が聞こえてきた。
「えるぅ・・・・、何だって?」
「外国人かしら。」
「てか、なんで髪の毛白なの?」
なんだかんだ入学式が終わり、一年生で帰りの挨拶が終わると父と母と一緒に家に帰った。
それから3週間ぐらいたった。
「エルゥ、ガッコウはどう?」
「楽しいよ!みんなね、アメリカって、どんなとこって聞いてくれるし、日本の話もしてくれるの!」
「おお、それはよかった。父さんもシゴト頑張ってるよ。」
「あとね、先生に日本語が上手すぎてびっくりしたって誉められたの!まるで日本人みたいって!」
「エルゥは日本に来る前からニホンゴ好きだったもんね。」
「父さんや母さんよりもずぅっとジョウズだよ。」
「まぁ、もうこんなジカン。エルゥ、お風呂入って寝ましょう。」
「はぁい。」
母と一緒にお風呂に入ってるときにエルゥはこんな話をしていた。
「大きくなったら、たくさんの人が喜んでくれることをしたい。」
「ステキなユメね。エルゥならできるわ。」
入学して一年は、問題もなく楽しく通えた。エルゥは楽しい生活だと思った。次の学校の時は二年生、新しい一年生と仲良くなれるだろうか、なんてことを考えていた。
これから、恐ろしい悪夢が牙を向け始めることも知らずに。