信じてる。
「ふふふ、痛いでしょ?」
ニヤニヤと笑顔をした時の神「ウール」、その先にはよろよろと立ち上がった翼の姿があった。その体にはたくさんの切り傷が走っていた。
「がっ、ハァ、全く、今日の天気は最悪だ。」
先ほどつむじ風と光弾の雨に身をさらしていた。普通は立てるはずがない。
「人間とは全く違うんだから、こんなものじゃ、死んだりしないわよね?」
ウールは矢を背から取り出すと、一匹の妖精がその矢に着く。すると、矢に宇宙空間にあるかのようにのように水がまとわりつく。
「‘ホールドアクア‘」
ウールが放った矢は翼の腹に突き刺さった。
「ぐっふ」
矢が突き刺さった所から赤い血が飛び出す。そしてその血は透明になり、膨らみ、翼を包む。いきなり視界がぼやけ、傷の痛みが増し、息苦しくなるという事態に驚く。
「あーーっははははははは!窒息死しなさい!」
翼は周りの水を剣で切り裂くが、隙間はすぐにふさがり元に戻ってしまった。
「無駄無駄、ホールドアクアはそんなんじゃ抜け出せないのよ!」
翼は周りの水を突きをし、穴をあけてみるが、やはりすぐにふさがってしまう。
翼は息の限界を感じていた。
このままでは、影の恵瑠を見つけられなくなる。どうすれば・・・・。
「あきらめなさい!このまま死んだ方が楽よ!」
翼は腹の矢を抜き、水の空間の外に投げる。
そう簡単に・・・・・・、
再び水を切り裂いた。
「だーかーらー、無駄だって言ってるで、ええぇぇ!?」
「死ぬかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
切り裂かれた水はそのままビッシャーン、と地面に落ちた。
「うそでしょ!?あんた、何で?」
ウールは驚きでパニックになっていたが、後から怒りが込み上げてきたのか、怒鳴り始めた。
「あんた・・・・・、どうして!どうして!どうしてそこまでできる!?どうしてそこまでして戦う!?あいつのためか!?あんの絹糸頭のためにそこまでできるのか!?意味わかんない!どうしてお前はそこまであいつのために戦える!?どうしてあいつのそばにいることを選ぶ!自分の死を止めてくれた!?そんなの、そんなの命を懸けなくてもできたでしょ!あいつはあんたのために命なんか張っていない!それなのにどうして、戦うことを諦めない!?」
ウールは弓に矢を引き絞り、放つ。
「‘ソニックアロー‘」
矢は素早く翼の腹を貫いた。
しかし、翼は倒れなかった。
「どうして、ここまで痛い思いをして!戦う!?お前にはここまで戦う理由なんてないじゃない!」
「戦う理由なら、ある。それは恵瑠が気づかせてくれた。私の死を止めてくれた。初めはそうだった。私が、あいつのそばにいることを選んだ理由は。でも、あいつは、何かを恐れていた。何かに縛られていた。何にかはわからない。でも、それは私と同じだった。だから、守りたい。支えたい。」
「あぁ、もういいわ!‘フェアリーインベイション‘」
妖精の大群が翼に向かって飛んでいく。翼は自身の「気」を」刀身に込める。刀身は紫色を帯びていた。
「‘鷹爪百鬼夜行‘」
翼は幻烈斬を放つと宙で止まり、そこから更に幻烈斬が飛び出し、妖精たちを切り裂く。
「なななぁ、よくも、妖精ちゃんたちを!」
ウールは上に飛んでいき、弓矢を構えた。
「‘ジャイアントアロー‘」
ウールの放った矢は何百倍の矢になり、翼の元へ飛んでゆく。
「それに、あいつは、恵瑠は負けないって、戦うことも諦めてないって、信じてる。だから、私は、私らは負けない。諦めない。」
翼は精神を集中させた。自分の「気」を刀身に込めた。今度は青色を帯びる。
「‘鷹爪大入道‘」
翼が剣を振るうと、いつもの数千倍の幻烈斬が放たれた。ウールの矢よりも圧倒出来に大きかった幻烈斬は矢を簡単にはじき、ウールに飛んでゆく。
「そんなっ、わたしは時の神!絶対に、負けない!はずっ」
幻烈斬がウールに直撃する。ウールはそのままどこかへ落ちていった。
「感謝するぜ、時の神ウール。」