事件の始まりのはじまり
ある晴れた日のことだった。今日もいつもの日常が始まる。はずだった。
「う・・・、だ・・・る、い・・・・・。」
恵瑠は一人で椅子に座り、デーブルでグデ~っとしていた。どうやら、具合が優れないようだ。
トントン、と玄関をノックする音が響き、恵瑠は重い体を起こし、玄関に向かった。玄関の扉を開けば、そこにはミアがいた。
「あ、ミア?」
「見ればわかるでしょ?あ、あなたの目、節穴だったわ、ごめんね?」
「会って早々ひどいなぁ。」
「どうも~。」
「ほめてないし。」
という会話を続けていたが、ミアは恵瑠の体調がすぐれないことに気づいた。
「恵瑠、顔色悪くない?大丈夫?」
「そうかな・・・・。」
「そうよ。翼は?」
「仕事。」
「うぅぅ~、とりあえず、寝なさいっ、私が面倒見てあげるから。」
そう言ったミアは恵瑠を寝室まで運ぼうとしたが、その前に恵瑠は倒れそうになって家の壁に頭をぶつけた。
すると、不思議なことに、恵瑠の頭の中に映像が浮かぶ。
‘‘ねぇねぇ、恵瑠の奴さ、きもくない?‘‘
‘‘わかる~‘‘
‘‘あいつ、学校に来ないでほしいよね‘‘
‘‘大人しくゴミ捨て場に暮らしていればいいのに‘‘
これは・・・見たことのない‥‥記憶?
恵瑠は頭を抱え、うずくまった。苦しそうなうなり声があたりに響く。
「恵瑠、大丈夫?」
ミアは心配だった。こんな姿を見せられて心配するのは当然だった。
突然、恵瑠のうなり声がやんだ。恵瑠はゆっくりと立ち上がり、ふらふらと数メートル先まで歩くと、ピタリと足を止めた。
「とうとう・・・か・・・・。」
「えっ、何、どうしたの、恵瑠?」
恵瑠のおかしな行動と発言にミアは心配の気持ちがますます強くなった。
「待ちくたびれた。」
「恵瑠?」
「後悔させてやる。」
「恵瑠ってば!!」
ミアの声は、恵瑠には届いていなかった。恵瑠の周りに黒いオーラがまとわりつき、恵瑠の姿が見えなくなった。
「っ!!?」
ミアは驚きで声も出なかった。
黒いオーラが薄くなると、そこには、黒髪の恵瑠らしき人物がいた。そばには恵瑠がいつもつけていた青いヘアバンドが。
「フフフ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
恵瑠は森のどこかへ消えてしまった。ミアは追いかけることを考えたが、一人では危険だと判断し、指をパチンと鳴らす。出てきたほうきにまたがり、焦りを感じながら飛んで行った。