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お金の使い道

ゴーレム討伐を終えたヘリクは帝国のギルド窓口に戻ってきた。

モンスター討伐時に出現するコアを窓口に置いて依頼達成を証明する。


「今日も早かったな……報奨金の5万メルだ。持ってけ」


ほぼ毎日ギルド窓口にいる大男は青く輝くコインが大量に入った袋をドサッと置くと慣れた手つきで依頼達成の報告書をまとめてペンを置く。


「お前一体どうやって……」

大男がヘリクを問い詰めようとした時には報奨金と一緒に姿を消していた。


_________



最近、思っている事を相手に伝えられない自分に苛立ちを覚えてきた。


昔、ある人に言葉を沢山教えて貰ったのだが発音できないという自身の弱点も自覚してしまった。


それからというもの、心では色んなことが浮かんでくるがそれを表現できない。


周りの声は聞こえるので言葉と相手の反応で何となく意味を想像して対応しているのだが、一々書いて伝えるのも面倒臭いし普段から会話用の紙とペンを持って歩くこと自体が嫌だ。


この期に及んで話せないというのはかなり相手との意思疎通に壁を感じる事も分かった──未だに意味のわからない言葉も沢山ある。もどかしさは日々増していくばかりだった。


そんな事を考えながらヘリクは人で溢れる商店街を歩いている。


──ついさっき回収した報奨金で暫くは生活に困ることは無くなった、せっかくだし今日の昼はいつもより豪華なものでも食うか。


そうしてヘリクは少し豪華な造りの食事処に入っていった。






「おい、知ってるか? 最近巷で噂になってるんだけどよ……スキル研究者とか歴史研究者って特殊なスキル持ってる人しか慣れないらしいのよ。そのスキルってのが……っておい、聞いてるか?」


いい歳した男二人が昼間から酒に溺れている。必死に話しかけているのは20代後半だろう。話そっちのけで爆睡しているのは恐らく30代前半、二人はパートナーなのだろう。


若い方が寝ているパートナーを揺すって起こすと再び話し始めた。


「そのスキルがまた特殊で! ……どんなのだと思う?」


前のめりになり目を輝かせて相棒に問う。


「んぁ……あぁ、なんだろうな。何にも知らない俺に教えてくれ……」


寝ていた男は相棒の話を軽くあしらって、続けるよう促した。流された事に全く気づかない相棒は横に置いてあった酒を一気に飲み干すとふんぞり返って話を続けた。


「まったく、仕方ねぇなぁ! 特別に教えてやるよ。アイツら……リーディングっていうパッシブスキルを持ってるらしい! 俺が仕入れた情報だと、それは古代言語とか解読不能な文字を読めるようにしたり、常人では有り得ない速度で文章を認識、記憶出来たりと、言語能力の欠点を完全に補うスキルなんだってよ!」


「ほぉ……そりゃすげぇな。言語学習の必要無しかい。天才ってのは産まれたときから作りが違うんだな。はぁ……この世界は凡人に厳しいな」


そんな会話をヘリクはすぐ横で昼食の《悪魔鯛にスライムを添えて》なる店一ゲテモノの料理を食べながら聞いていた。


──すごく興味深い話を聞いた、少し昼食代を奮発した甲斐があったな。研究者には必須のスキル、か。アルメリアにでも行ったら何か掴めるかもしれない。もし、チャンスがあれば、その時は……。


料金より少し多めにメルを置いてヘリクは食事処を後にした。


_______




《アルメリア公国》人口は約1500万人。《シャクナ帝国》が約2500万人、《シーマニア王国》が約2000万人と人口差は歴然としている。そのせいか、国力では他国にやや劣るが研究分野に力を注ぎ他国を圧倒するスキル研究技術と知識を有している。


円形の城壁に囲まれていて、中枢の城はそのど真ん中に陣取っている。そこから放射状に道が伸びており、城壁を東西に隔てる一本の大きな道がこの国のメインストリート。


そしてヘリクはアルメリア公国直属の魔導式武具販売店に来ていた。


魔導式武具──武器の中に魔法陣が組み込まれていて誰でも簡単に他のジョブのスキルを使用することが出来る優れもの。


種類は色々あるが他にも、自身のスキルを直接武器に取り込む事で威力を高める事ができる物もある。


広く普及されている魔導具は拳大の球体で、魔法陣保護のために専用の防護ケースに包まれている、手間とかなりのサイズになるのでコスパが悪い。


それに比べアルメリア産の魔導式武器は戦士なら剣型、魔導師なら杖型、とそれぞれのジョブに合わせた武器の形で設計されているので武器としても使え、物自体に緻密に魔法陣が組み込まれているので発動時間も早く普及品より扱いやすさが段違いだ。


店には大剣に遠距離スキルのファイアショットを組み込んだもの、杖に近距離スキルのラウンドスラッシュを組み込んで杖で殴り込みができるように調節されたものまである。

──す、すげぇ……


強化ガラスのケースに保管されて陳列されているそれらを見てヘリクは思わず息を呑む。更に店の一番奥、厳重に覆われた魔導具が目に入った──値段は三億万メル。


__さ、三億! こんな金あったら城壁の外に軽く要塞建てれるぞ……。こんなに高いんだからさぞかし凄いんだろうな?


半信半疑で、説明が書かれた看板を読む。


──えーと……《極刀─アマテラス》神をも穿つこの美しい刀身をみよ! 武器自体の性能も前線で活躍出来る一級品で、威力向上率は歴代最高の400%、更に広範囲スキル二種と身体強化二種を兼ね備えた最強の魔導具……って兵士一人で黒紋章数人分ってか。


店の奥で呆然とするヘリク。そこに店員がやって来て、なにかお探しですか?と尋ねてきた。完全に不意を突かれ動揺した俺は店員の好意を無視して足早に店を出てしまった。


一連の出来事を記憶から消しさろうと外の新鮮な空気を大きく吸い込む。が、その行為にあまり意味は無く未練がましく振り返る。


──もう少し金が溜まったら魔導具デビューでもしてみるか。

そう固く決意し、今度こそ店前から立ち去った。

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