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ゴーレム討伐依頼

一人の青年がモンスター討伐依頼を受けにギルドを訪れた。


名はヘリク=ブロッサム。銀色の短髪。蒼色の瞳。いつも左の手には包帯を巻いている。身長は170前半くらいだろう。


彼の声を聞いたことがある人は俺の知る限りだと恐らくいない。何故かって? 俺の経験上の推測だが、 彼は話すことが出来ないのだ。


だからいつも指をさして意思表示をしてくる。


「これでいいかい? 銀髪の兄ちゃん」


青年は黙って頷く。


「おーけー。じゃあ今日もよろしく頼んだ! くれぐれも深追いしないこと。危険を感じたらすぐに撤退する! いいか?」


青年は余計なお世話だ、とでも言いたげな顔をしてギルドを後にした。

「はぁ……一体何もんなんだアンタは」


あの青年、身元を洗ってみたが名前以外一切の情報が掴めなかった。

この世界の人間は左の手の甲に紋章がある。その紋章の柄や色で対象のジョブや熟練度を判断する事が出来る。


黒色紋章が最強で、子供とか本当に才能の無い者は青色紋章、と他にも色々あるのだが……あの青年は年中左手に包帯を巻いているので肝心の紋章が見えないのだ。


名前以外の身元不明、熟練度不明、ジョブ不明と分からん事だらけ。

そんな奴が一体何をして一人で強力なモンスターを討伐しているのか猛烈に気になる──いずれ本人から聞き出してやろう。


そんな事を密かに誓って、俺は今日もギルドカウンターで騎士団に入れなかった落ちこぼれ達の相手を始めた。






シャクナ帝国から身体強化のスキル『アクセルエンハンス』を使って東に15分程走った所にあるシャクナ帝国領の草原地帯──周りには小さな池や低木、小型の野生動物がいる。そして目的地はそこにあった。


今回受けた依頼は危険度ジャック級のギガントポイズンゴーレムの討伐。


特徴は大型・緑色の召喚陣からしか召喚されない事、生身で触れると致死量の毒が体内に入り込み死に至る事、物理攻撃が効かない事、デカいのに攻撃が超速い事。


ジャック級以上のモンスター討伐は複数の職業でパーティーを組んで互いにサポートし合うのが定石。


本来ならばソロで依頼を受けることは出来ないのだが、ヘリクの実力をよく理解した上での特例措置らしい。


──緑、大型の召喚陣。これで間違いなさそうだ。


……見た限りだとゴーレムらしいのはこの近辺には見当たらないな。先に討伐されたか……?


ヘリクは足元の土を指でなぞる──すると、辺り一面に寝ていた草花がふわりと起き上がり顕になった素肌を目詰める。だが、戦闘の痕跡は無く獲物を横取りされた可能性はあっさり捨てる。


そうなると……まだ召喚されていない? だが、ギルドが召喚されていないモンスターの依頼を発注する事などあるのだろうか。あまりに事例のない出来事に足踏みをせざるを得なかった。



── 一旦戻るか……?


途方に暮れたへリクが諦めて帝国に帰ろうとした時だった。 突然周辺の地形が歪み、盛り上がる。


──地面から四階建てのアパートと同じくらいの大きさのゴーレムが現れた。






──地中から出てくるとか聞いてねぇんだけど……! と心の中で文句を言いながらもヘリクは臨戦態勢に入る。


一旦距離を取るためにその場から大きく後ろに飛ぶ。その直後、さっきまで居た場所が爆撃でもされたかのように大きく抉られる。


マジで速いな……腕が一瞬霞んだと思った時にはもう手遅れってか、油断するとあっという間に粉々だな。

実際に戦うのは初めてだが、危機感は少なく率直な感想を心の中で述べる。そしてすぐに気持ちを切り替えると自分の置かれている状況の把握をするのであった。



──素手で触れることは禁止、デバフも恐らく効かない。そうなると俺が今使えるスキルの中でコイツに有効なのは身体強化型《《全般》》と広範囲攻撃の「グランドショック」くらいだろう。


──コレだけでいけるか……?



ギガントポイズンゴーレム──生身で触れたら即死、体感だが全ての攻撃が音速を超えている、ついでに言うとチョット苔が生えてる。ゴーレムというよりかは超性能の動く要塞って感じだ。


独自の視点でゴーレムを分析しながらも安全に、確実に撃破出来る方法を考える、オーバーキルする分にはいいが僅かでも体力を残すと命取りになるからだ。



普段から一人でモンスター討伐をしているヘリクは攻撃よりも防御に意識を集中している──このゴーレム相手でもそれは変わらない。


ヘリクはゴーレムの攻撃をギリギリまで避けず、直撃──する前に少しだけ身体を捻る。顔のすぐ横をゴーレムの左手が通り、後ろの地面が音を立てて爆発的に吹き飛ぶ。


体力の消耗を最小限に抑えるための技術、スキルでの補正があっても常人にはなせない神業だ。


超高レベルの戦闘を繰り広げる中、ヘリクは周囲を改めて確認。少しずつ後退しながらゴーレムの攻撃を回避し続ける。


ふと、一羽の鳥が視界に入った。その鳥はゴーレムの頭上で旋回し、口に咥えていた木の実を落として飛び去っていった。


それを見たヘリクは──



──ゴーレムの討伐方法を閃いた。






回避に専念し続け、かれこれ一時間。周りには完全に何も無い平野までゴーレムを誘導してきた。


──ここまで来れば被害は最小限に抑えれるはずだ。


最後にもう一度周りを確認しゴーレムが投げてきた巨大な岩を右側に大きく飛んで回避、そして

「パワーエンハンス」「アドバンス:アクセルエンハンス」「インビジブルオーラ」


攻撃強化、速度超強化、ステータス倍加──三個のスキルを同時詠唱し、身体が悲鳴をあげる限界まで強化。すでに体はきしみ、至る所から出血が収まらない。だが、多少の無理をして倒せる相手ならこの程度の傷は無いに等しい──自己犠牲の精神こそがへリクのなせる底力であった。


その後何故か動こうとしないヘリク目掛けて高速で打ち出されたゴーレムの左腕。

──俺の勝ちだ


ヘリクはゴーレムを再認識すると自分目掛けて迫ってくるゴーレムの腕を右脚で蹴り上げる──それによって発生した衝撃波で地面が割れ大きく隆起する。


もろに衝撃をうけたへリクは反発してくる力を回転力に変換、その場で一回転すると即座に地面に着陸。 攻撃を弾かれたゴーレムは未だに大きく仰け反り正面はがら空きだ。だが、面と向かって攻撃を繰り出すことは無く股下を通り抜けるためにヘリクは一歩前に踏み込む──次の瞬間ヘリクが音もなく消え、少し遅れて大地が爆ぜ、爆音と共に土煙が登る。


一瞬にしてゴーレムの背後に回ったヘリクは間髪入れずにゴーレムの頭上に飛翔、そして遥か上空で「グランドショック」の魔法陣を構築、そしてゴーレムの頭目掛けて発動した。


──空気が振動し数秒後ゴーレムを中心とする辺り一面が消し飛んだ。

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