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お金はほしい。

作者: あき勝

 私は貧乏だ。


 貧困ではないが狭く駅から遠い、安いアパートに住んでいる。


 毎月決めた額で食費を賄い、余った分を嗜好品に充てるささやかな生活。


 特に不満を持った事はない。


 強いて言うならばそこそこの年数住んでいるので家賃をもう少し安くしてほしいくらいか。


 ただ問題なのはその生活に慣れてしまった事。


 ぬるま湯に浸っているような緩い暮らし。


 独りに慣れてしまった他人への不快感。


 何れ訪れるであろう、誰にも知られぬまま腐敗してようやく周りに気付かれる孤独死。


 将来にどうしようもない不安を感じてしまうこともしばしばある。


 しかし解決策は無い。


 いや見つけられない。


 見つけられないなら無いのと同義だ。


 認めたくないが、その程度の人間なのだろうと思う。


 もう少し節制すればお金を多少は貯められるかもしれない。


 お金があれば可能性が生まれるかもしれない。


 可能性とはなんだ。


 お金を貯めて得られる可能性とはなんだ。


 もし何かの拍子に大金を得たとして、私は何ができるというのか。


 最も愚策は貯蓄だろう。


 考えているようで何も考えていない。


 現状維持と現実逃避という最も発展性の無い答え。


 ならば家を買う、だろうか。


 これもあまり良い選択とは思えない。


 家賃は掛からなくなるが代わりに固定資産税や家屋の維持等というランキングコストが発生する。


 今の賃貸なら契約に記載された湯沸し器などの修繕費用は家主持ちである。


 生涯払っていく家賃と比較して長期的に見て安く上がりそうなら間違いでもないとは思うが。


 まして一人暮らしで家を持ったとしても持て余す可能性の方が高い。


 部屋を持て余す分、要らないものを溜め込んでゴミ屋敷にする可能性を否定できない。


 もし仮に恋人ができて結婚したいとして、相手の両親に持ち家であると言えば少なくともマイナスの印象は持たれないだろう。


 インテリアに興味があり、予算があるなら理想の家に作り変える事も可能だろう。


 現状そんなことに興味は無いが。


 ならば投資か。


 大金を元手に利息で生活できるようにするのだろうか。


 そもそも何に投資するのか。


 投資に関する知識はどれだけあるのか。


 インターネットを検索すれば不動産投資や(ゴールド)、投資信託などが引っ掛かる。


 ただお金を突っ込めば儲かるのだろうか。


 そんなわけがない。


 ならどういうモノに投資すれば儲かるのだろうか。


 数年で資産を数倍にしたとかいう話も出てくるが、それに自身もなれるという根拠がどこにあるのだろうか。


 つまり私に足りないのは大金に見合うだけの知識なのだろう。


 豚に真珠。


 猫に小判。


 宝の持ち腐れ。


 パソコンだって使い方を知らなければ金属とプラスチックの塊でしかない。


 知識の貧困こそが貧乏の根源なのだ。


 なら知識を身につければ良いのだろうか。


 それをやれる意欲があるなら最初からやっているだろう。


 それより今はスーパーの特売や余ったお金の嗜好品への割り振りの方が気になる。


 久しぶりに勤め先からの寸志も出た。


 さらに今日はお肉とお酒の特売日である。


 自宅から30分は離れたスーパーへ原付を飛ばして買い出しにいく。


 こうして緩い生活を続けていくのだった。

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