Extra.1 わりと忙しくないエリーゼさんの一日
書きたくてやった。
後悔はしている。
だが反省はしていない。
…(´・ω・`)
「はっ。秋穂様が大変なことに!」
――なっている気がして何処か彼方に向かって叫んでみますが返事がありません。寂しいです。
「と、いいますか。そんな学校で大変なことになんてなるわけないですよね?」
御主人様、もとい雇い主である旦那様は奥様といっしょに赴任中のため家を留守に。秋穂様と春霞様は学校に行っておりまして、私、エリーゼは只今ひとりで留守を預かっております。
学校で二人はどのような時をお過ごしなのでしょうね? 何だかとても心配なのですが、たぶんこれは杞憂でしょう。秋穂様も春霞様もいきなり寄越された私を快く受け入れてくれるような人のできた方々ですから。……秋穂様は少しおてんばですけど。
「まあ、もし学校で何かあったとしても教員の方々が何とかしてくれるでしょうし。そもそも私に何かが出来るわけがありません」
と、自分に言い聞かせて私はここにいて私に出来ることを探してみます。特に何もみつかりません。何てことでしょう!
洗濯物は朝のうちに秋穂様が。洗い物は春霞様が。掃除は午前中に塵一つ残さずやってしまいましたから特にやることがありません。というか、よく考えたら御主人様達に働かせてましたねエリーゼ!
地味に自己嫌悪に落ち込んでいると、ふと空腹を覚えました。何てことでしょう。落ち込んでいる暇すらありません。
「そういえば、お昼まだでしたね」
ふと時計を見ます。ただ今12:58。いいとも選手権はすでに終わっております。今週は何だったのでしょうか?
「……いやいや、そんなことよりもどうしましょう」
実は私、エリーゼは料理なんてできません。見たところ、レトルトや冷凍食品はおろか冷蔵庫には食材の欠片もありません。どうやら昨日の(寝ぼけ眼の)秋穂様に(手作りと嘘を吐いて)出した肉まん(冷凍)で打ち止めだったようです。どうせなら自分で食べておけばよかったと後悔。だってけっこう美味しそうに食べてらしたのですよ?
「よし。外に食べに行きましょう」
肉まんを。なんて自分でも単純だなんて思いながら懐のお財布を確認。
五十円玉が一枚。だけ。
「……あれ?」
こんなに財布の中少なかったでしたっけ? と小首を傾げてみますが何の解決にもなりません。
五十円玉でお昼ご飯が食べられるか、否か。否しかないじゃないですか!?
「何てことでしょうか……!」
神よ! アナタはどれだけ私のことがお嫌いなのですか!?
◆◆ ◆◆◆
「――と、いうわけでしたので」
「他に頼る宛てもなくここに来ました、ってわけですか……」
呆れたようなため息が漏らされ、私は申し訳なさに身を小さくしました。
「そんな困ったような顔しなくとも、……まぁ、困った時はお互い様というやつですから」
そう言って柔和に微笑んでくれるは細い体躯に眼鏡と整えられた長髪が素敵な近所の男性。松竹昭文さん。
私が七草亭にてお世話になることになってから彼には随分と助けられているような気がします。お世話になっているのは昨日からですけど。
「それにしてもまぁ、お金がないってまたベタな理由ですね」
「すみません……」
ああ、いや。なんて困ったように微苦笑しながら昭文さんは言いました。
「秋穂ちゃんも春霞君も、エリーゼさんに最低限でもお金渡してなかったんだな、と思いまして」
「ああ。そういう……」
そういえば私、お金をまったく預かっておりません。信用されてないからでしょうか。
「いや。昨日会ったばかりの他人にそこまでしてくれる程あの子達もバカじゃないか」
なんて、やっぱり苦笑して。
「それともただ単にそこまで気を回す余裕もなかったのか」
どこか遠くを見上げながら、意味深なことを仰っています。何だか格好いいのですけど、見方によっては不審者のようでもあります。
「まあ、あの子達もまだまだ子供ってことで」
けっきょく何事か一人納得したようで。昭文さんは椅子にかけていた黒いエプロンを手にとりまして。
「エリーゼさん、何か昼食のリクエストとかあります?」
「肉まん!」
私は間髪入れずに答えました。
赤いカジュアルシャツと黒いジーンズとエプロンというなかなかお目にかかることの出来ない格好で、昭文さんはまた微笑んで「了解しました」と言って台所へ。
それからしばらくしまして出て来たのは美味しそうな肉まんと冷たい烏龍茶!
「昭文さん大好きです!」
「はいはい。僕も好きですから冷めないうちに食べてやって下さいな」
なんか久々に書いててもうさすがに私なんて忘れられてんだろうなぁなんて思ってたら「待ってました」なんて嬉しいお言葉いただいて、画面の向こうでニヤニヤしてた私きめえw