DOUSHITAMONKA? (下)
「いったい何がどうなって――……どういうことになってんのよ……」
わけがわからない。
とにもかくにも、こぼれた水を掬うなんてことはできない。なってしまったものはしょうがない。あきらめよう。それしかない。でも、でもだ。人間はこぼしてしまった水で汚して困ることができてしまうようにできている。
なんというか、ちょうど今そんなことを真面目に考えてしまうような、そんな困った状況。
「だから、本当に旦那様に雇っていただいたんですってば」
「…………」
……ええ。そうね。
それは間違いないみたい。
さっき電話で親父から聞いたわよ、エリーゼさんが前に働いていた屋敷でお皿を棚ごとぶち壊してクビになって途方に暮れていたところをたまたま通りがかった私の優しい優しい親父様に拾われて無休で雀の涙よりも軽そうな給金で働かされる予定だなんてあまりに不憫なお話を。
なに? その変な現代っ子向けのコメディ漫画みたいな展開。お皿って棚ごと壊れてしまうようなものだったの? 初耳ね。
このままエリーゼさんを追い出すのはたぶんというか、赤子の指を折るどころかシャープペンの芯を折るよりも簡単そうだけれども、それだとあまりにエリーゼさんが不憫すぎる。彼女をうちに置くくらいは許そう。どうせ給金を払うのは親父だ。
だから、ここまでは別によしとしよう。問題はそれからだ。
明日から親父は単身赴任するということが決まっていて、お袋さんはそれについて行く予定。ってのを、何で私は今の今まで知らなくてこっちのメイドだか家政婦さんが知っているわけ? おかしいじゃない。普通そういうことはこれから置いていかれてしまう実の娘に話しておくような重要なことなんじゃないだろうか、どう考えても。
「だから、そんな秋穂様と春霞様のために優秀なメイドの私が雇われたんじゃないですか」
皿割ってクビになった使用人のどこが優秀なのよ?
「ってゆうか……単身赴任して、家に残るのは高校生が二人になるから家政婦一人拾ってきたって、いったいどんな笑い話だっていうのよ……」
つまりは、そういうこと。
これからしばらくはあの鬼畜親父と万年発情糞母上がいなくなって、私と兄さんだけの甘い生活が始まる、はずだったはずなのに……。
エリーゼさん。彼女という賞味期限が三ヶ月前くらいに切れた未開封のポン酢みたいな不安要素たっぷりの調味料が私と兄さんの甘くなる予定の生活にものの見事に入り込んでこれからどうなってしまうのだろうかなんて不安を煽りまくったりなんかしてくれちゃうのだ。
「……なんというか、大変なことになったもんだね」
昭文さんは、私をひどく哀れむような目で見ながらそう言った。
微妙に空気が読めないらしいエリーゼさんは、その昭文さんの言葉を自分に言われたかのように一度だけ噛み締めるように頷いた後、
「だからこそ、私はここで働くのです。ですから、秋穂様、どうかご安心下さい」
彼女は恭しく腰を折った。
私はそれにつられて一礼するも、不安はどうしても込み上げる。
……ってゆうか、安心なんて、できるわけがないと思う。
なんとなくだけれども……。
どもども。作者です。いきなりですが前回の後書きのことについては忘れて下さい。私も疲れていたんですよ。今の辛い現実に。たぶん。
まあ。そんなことはさておき。今回のお話でございますが、まさかの新キャラ登場。しかもまだ出たことないのに糞とか鬼畜とか言われてる親父さんお袋さんがいなくなってしまってわぁい自宅に私と兄さんだけの二人の愛の巣出来上がりじゃんイエイっていう展開だったはずなのにまさかの第三者が登場ついでに近所のお兄さんまで登場というベタなコメディの展開に走ってるはずなのに何か違くない? ってゆうお話でございます。
次回はそんな秋穂ちゃんの生活一日目について――
は書きません。
普通に書きます。普通に秋穂ちゃんが学校で頑張るお話を書きたいです。いや、本当に。




