第0話
どうも、はじめまして。言伝のような文章に敢えて挑戦してみた形です。
実のところ、一人称と三人称視点のほかに、別の書き方を試してみてどれが一番伝えやすいか、という試行錯誤の一環のようなお話です。
拙さのある文ですが、お楽しみ頂けると私も嬉しいです。
─それは、とてもありきたりな理由だった。でも、それは間違いであったとは思わない。思いたくはない。彼は、そう思い続けた。
ここではない世界が一つ。人からすれば気が遠くなる程の昔、信仰を失いつつあった神々は地上から姿を消し自分達の理想郷を作った。
そして、神との決別を強いられた人は神の手によらぬ不完全な秩序を組み上げ営みを続けることとなった。
だが、ある時。いつの頃からか。神とも人ともならざるモノが姿を現した。人々が「悪魔」と言い伝えてきたそれらは「魔王」と呼ばれる事実上の最高権力のモノが旗下に集い着実に勢力を伸ばしていた。
人はそれらが自分達に害なすモノであると恐れ、見下し、迫害し、遂には完全に平行線上の存在となってしまった。
魔王は人の行動に激怒した。奴等の血をもって断罪をさせん。と、統べるモノ達へと号令を飛ばすのだった。
悪魔達は人を蹂躙し、殺戮し、そして圧政とともに尊厳すら陵辱せんと血を流し、嬲り殺し続けた。
これに対し、外界たる理想郷から見物を決め込んだ神々は気まぐれによって啓示を人を統べる王達に授け、世界から選ばれた一騎当千の勇者達に魔王の討伐を託す事とした。
やがて、運命は王の玉座にて対峙を果たした。相対するは世界を暗雲に閉ざす圧政者たる魔王、片や叛逆の旗を上げる四人の勇者達。
魔王は自らの眼に映る、力ある若者達へと告げる。勇者と魔王。このふたつは殺し合わなくてはいけない宿命だと。仮に手を取り合うコトを当人達が認めようと、世界がそれを許してはくれないのだと。
この言葉を最後に、死闘の火蓋は切って落とされた。双方ともに自らの限界以上のすべてを叩きつけた。神々の遺し最強の武具。至高の賢人が遺し叡智。途方もない月日を経て培いし技と経験の数々。
それらを総動員させた決戦は熾烈を極め、舞台となった魔城の玉座はおろか、その城すべてを硝子状に変えるほどの破壊の暴風を生み出したのだった。
──この決戦の結末を述べる前に、その舞台の演者がひとり、今なお語り継がれる、勇者と呼ばれた者の話を語ろう。
この話は本来は短編としてひと纏めにするつもりでしたが、賞に応募用も兼ねていた為にもろもろ考えた結果、細かく解体し載せ順次追加していく事となりました。
しつこいかも知れませんが、拙い文ながら続いていく所存でございます故、今後ともお目通ししてくださると光栄です。