ふ プロテインマンドラゴラ
人型の根を持つ魔法植物の一種。霊薬の材料として、また滋養強壮に良い物として有名。
根の部分の長さはおおよそ20~40センチ程度。ダイコンとよく似た葉を茂らせるが、色は暗緑色が多い。
黒土の養分豊かな地面に生えるが、成長した雄株(後述)は砂利や小石の混ざった土壌も好む。
根の形は人間の首から下を思わせるが、根の先端は細くなってひげ根が生えている。別段手のひらや足の裏があったりはしない。色は生育環境等により様々。
両手足が揃った胴体の上部、人間で言うと頭や首にあたる部分は地面から外に出ている葉っぱである。
雄株と雌株があり、それぞれ根の形状が異なる。
・雄株
筋骨隆々とした人体に似た、ゴツゴツした根。特に胸板は厚く、たくましい。
・雌株
しなやかな流線型の、女性を思わせる根。人間で言うと胸部にあたる辺りに乳房のような突起を持つ。
雌株が成熟すると、それを感知した雄株達が自分の生えている穴から抜け出し、行列を作って雌株のところまで行進し始める。
雌株は雄株達によって掘り上げられ、うやうやしく御輿のごとく担がれて森の岩の上等に据え置かれ、その前で雄株達が己の肉体美を競うかの如くよく発達した根を見せびらかす。
やがて、雄株の中の一株が雌株と共に良い土壌に並んで埋まり、一定期間が過ぎるとその近くに子株が生える。
他の雄株は、また元の場所や別の場所に埋まって次の雌株の成熟を待つ。
この一連の現象を「プロテイン・マンドラゴラの婿取り行列」と呼ぶ。
なお、引き抜く時に雄株は「むっはー!」「うっほー!!」等独特の悲鳴を上げ、抜いた者とその近隣にいたモノを混乱させる。
かなり重度の混乱症状となるため、正気に戻ったように見えてもなるべく早く精神的な治療の出来る薬草師か霊液調合師の所に連れて行った方が良い。
昔、混乱の極みで何かを幻視したのか、目覚めなくてもいい物に目覚めてしまった採取者がいたという話が伝わっている。
雌株も悲鳴を上げるが、これは絹を裂くような悲鳴であり混乱に加えて近隣の雄株を呼び寄せるもの。混乱しているところを信じられない数のプロテイン・マンドラゴラに踏みつけられた、という記録もある。
安全に採取するには、婿取り行列について行けずに出遅れている若い、あるいは力の弱い貧弱な株を捕まえるのが一番。この時に捕まってしまうかどうかの「運」も婿取りの条件になっているのか、一本捕まえても他の株が襲って来るような事はない。
ただし、雌株を奪おうとすると行列のルートによっては往来の真ん中で悲惨な目に会う遭うのは確定である。
こういった一連の行動から、プロテイン・マンドラゴラを森の植物種族として扱うべきだという意見もあったらしいが、採択された事はない。
なお、滋養強壮剤として栽培されている品種もある。魔術的・人工的に土魔術師が増やした栽培品種の苗木を買って来て植えるのが一般的。
これらは割と実が肥大化しやすく、霊液の材料にするには何かが足りないものの料理に使うには最適である。
抜く直前か抜くと同時に葉っぱに叩きつけ等の衝撃を与えると、悲鳴があがるのを防ぐ事ができる。
なお、野生種はその程度では黙らず、また抜いてから数十秒は全力で暴れるので、無事に引き抜いても採取者が怪我をする事もある。
抜いたプロテイン・マンドラゴラはなるべく早く素材等に利用した方が良い。採取したまま放置すると、筋肉が落ちてひょろひょろとしてくるかのように実が痩せてくる。
また、水耕栽培で長持ちさせようと水につけると、何故か水を吸ってブクブクと丸くなる。