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29話 神様

 国際会議から帰った俺は真っ先にウルルとエレーナが待つ自宅へと向かった。

 逸る気持ちを抑えて鍵を開ける。


「帰ったぞ、無事か?」


 リビングに駆け込むと、驚いた様子のウルルとエレーナがいた。


「ご主人様! お帰りなさいなのです!」

「私たちは元気だったのじゃ。シュウも息災だったかえ?」

「ああ、特に何もなかったぞ」

「あれを何もなかったで片づけてしまうんですか……、さすがシュウ様ですね」


 遅れてミリアがリビングへと到着した。

 その意味ありげな言葉にウルルとエレーナは興味津々である。


「何かあったのですか?」

「気になるのじゃ!」

「最初から順に話していきますね。まず岩石地帯を通った時のことですが――」


 ミリアは俺の功績を事細かに2人に伝えた。俺自身は凄いことをしたつもりはさらさらなかったのだが、改めて第三者の口から聞くと中々なことをしたな。なんたって俺は世界王になってしまったのである。


「――と、このように、シュウ様は世界王となられたのです」

「――っ! ――っ!」

「Are you kidding me?」


 あまりの衝撃だったのか、ウルルは声を出さずに気絶し、エレーナは英語に戻ってしまった。


「やれやれ、2人とも落ち着けよ」

「落ち着いていられるわけないじゃろ! つまりシュウはこの世で一番偉い人ってことじゃろ?」

「ああ、そうなるな」

「凄すぎるのですっ! ウルルの語彙力じゃ凄いとしかいいようがないのです!」

「無理もないですよ。私も現場に居合わせたときは驚きで開いた口が塞がらなかったもの」

「お祝い! お祝いするのです!」

「おいおい、大げさだな。たかが世界で一番偉くなってくらいでお祝いだなんて」

「何を言っておるのじゃ。シュウが王なら必ず世界は平和になるに決まっておる。だから今日はこの世のすべての生物にとっての記念日なのじゃ!」

「そうですね。私も今日ははめをはずしちゃいますか!」


 3人があまりに嬉しそうだし、断るのもよくないか。

 俺は3人と一緒に世界王になったことを記念してお祝いをした。








 その翌日から、俺は大忙しとなった。

 なんせ俺は世界を統率する王である。俺に万が一のことがあった場合、この世界が負う損失は計り知れない。少しでも憂いをなくすため、俺はウルルとエレーナ、それにミリアと共に新しい家に引っ越すことにした。


「それにしても、ミリアは本当に俺と同じ家でいいのか? 元国王のお前なら、一人でも十分な広さの家が買えるだろうに……」

「シュウ様さえ嫌でなければ、私も皆さんと一緒に暮らしたいです。元国王としてではなく、ただのミリアとして」

「もちろん歓迎なのですよ。そうですよね、ご主人様!」

「ああ、そうだな」

「家がにぎやかになるのはいいことじゃ。家族が増えたみたいで楽しいからのぅ」


 俺たちは新しい家を見上げる。今度の家は、今までの家よりさらにでかい。

 具体的に言うと、運動会ができる広さのリビングが20個あり、さらに小部屋が100個ある。トイレは65個、風呂は20個で、家には備え付けの体育館が2個、プールが2個ついている。


「この世界の大工は慎みと言うものを知らないな」

「なにせ、世界王たるシュウ様の住処を作るわけですから、彼らも張り切ったのでしょう」

「狭いよりは広い方がいいのです!」

「家の中で迷子にならないように気をつけなくてはならんかもの」


 俺たちは半日がかりで家の中を見回った。エレーナの不安が的中し、家の中で道に迷うこともあったが、概ね問題はない。


「これからご主人様の世界王としての生活が始まるのですね」

「ああ、そうだな」


 そうウルルに返事をした次の瞬間、頭の中に声が響いてきた。


「儂が眠っている間に随分と様変わりしてしまった……。こんな世界にしたのは誰だ? 」


 どこから聞こえてきているのか分からないその声の出どころを探してあたりを窺う。


「この声はどこから聞こえてくるのです!?」

「頭に響くのじゃ……」

「不思議なこともあるものですね」


 どうやら3人にも聞こえているようだ。


「……なるほど。儂が眠っていた間に起きた出来事の原因は、全てお前のようだな、シュウよ」

「お前は誰だ?」

「儂か? 儂は神だよ。この世界を創った唯一かつ絶対の神だ。今儂は人間と魔族の全てに直接語りかけているのだ」


 どうやら神が話しかけてきていたらしい。


「その神が今更何の用だ。今まで姿も見せずにいたのに、突然世界の支配者をきどるわけじゃないだろうな」

「気に食わんのだよ、今の世界が」


 神は腹立たしげにそう言った。その言葉には強烈に怒気が込められている。


「気に食わないだと? 俺はこの世界をより平和な世界にしたつもりだ」

「それが気に食わないと言っている。儂が見たいのはな、人間と魔族が仲良く手を取り合って暮らしているようなぬるい世界ではないのだ。憎しみ合って殺しあうような、そんな世界を観察するのが儂の楽しみなのだ。それを奪った罪、万死に値する」

「ひっ、ひどすぎます!」

「ウルルたちを創った神様はとんだ悪神だったのです……」

「私たちが争うのを見て楽しんでいたじゃと……? 性根が腐っておる」


 こんなやつが神なのか。この世界も可愛そうにな。だが、俺がこの世界に来たからにはもう安心だ。


「残念だったな、神よ。俺たちは神様の操り人形なんかじゃない。お前がどう思おうと、俺たちは平和に生きてく」

「……儂がそんなことを許すと思ったか?」


 神の声が脳内に反響しだす。

 そしてそれと同時に、目の前の景色が白く褪せていった。

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