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21話 緊急依頼

 ある日。俺とウルルがギルドへと向かうと、ギルドの受付嬢が焦った様子で俺たちを迎え入れた。


「シュウ様、ウルル様、お待ちしておりました! 実は今しがた緊急依頼が出されまして……」

「ほう……」

 緊急依頼とは珍しいな。ギルド嬢も慌てているように見えるのは俺の思い違いではないだろう。


「で、内容は?」

「西の砂漠に魔族が出現したとのことです。ライアン様とシェリー様がすでに現場へと向かっています」

「魔族ってなんだ?」

「ウルルも知らないのです」


 とその時、俺たちの背後から高笑いが聞こえた。


「ふっふっふ……魔族も知らないとは、これは俺の出番かな!」


 そこには見知らぬ男が立っていた。


「……誰だ、お前?」

「俺だよ! バカアホーンだよ! ギルド内で何度もお前としのぎを削ってきただろ!」

「……ぷっ」


 俺に毎度突っかかってくるやつか。それにしても、名前がひどすぎるだろ……。


「何笑ってんだよ!」

「いや、だって今のは笑い取りに来ただろ」

「名前で笑い取りにいくやつがどこにいんだよ!」

「まあいいや。バカアホ、魔族について教えろ」

「バカアホーンだっ! いいか? 魔族ってのは要するに、超強い人型の魔物だ。独自の言語を持つが、今のところ解読は不可能。魔国と呼ばれる国に住んでいて、一説によると人間よりも高度な知能を持つとも言われている。好戦的な性格ではないが、戦闘能力は極めて高い。また、尻尾と2本の角が生えているのも特徴だな」

「ずっと喋り続けるんじゃない。少しは静かにできないのか?」

「な、なんだとぅ……!」


 説明が長すぎる。俺と話せる機会に浮き足立ってやがるな。やはりまだまだ新人か。


「まあ、バカアホにしてはよくやったな。褒めてやる」

「お、おう。そうだろ?」


 なに照れてんだこいつ。頬を赤く染めるな、ただただ気持ち悪いぞ。


「緊急依頼、俺たちも受けるぜ。ウルル、すぐに向かうぞ」

「了解、なのです!」


 俺たちは西の砂漠へと向かった。









 西の砂漠へと到着した俺たちは、ライアンとシェリーを探して歩き回る。

 だが、広大な砂漠の中で2人の人間を探すというのは無謀ともいえることだった。


「これじゃ日が暮れちゃうのです……」

「埒が明かんな。……そうか」


 この事態を解決する妙案を思いついた俺は、魔力を高め始めた。

 そして、風魔法を使って自らとウルル身体を浮かせる。


「こうすりゃあ遠くまで見渡せる」

「……ご主人様が凄すぎるのです~! 鬼才過ぎるのです~!」

「ふっ、まあな。……お、あそこに人影が見えるな。いくぞ、ウルル」

「はいなのです!」


 俺の見事な機転により人影を発見した俺たちは、そこへと急行した。




 そこにいたのはやはりライアンとシェリーだった。


「よう、ライアン、シェリー。久しぶりだな」

「うわ! ……何よ、驚かさないでよね」

「久しぶり、シュウ、ウルル」

「2人とも、お久しぶりなのです」


 挨拶を終えた俺たちは現状の確認作業に入る。


「まだ魔族は見つけられてないのか?」

「残念ながらね。とはいっても見つけても戦闘になるかはわからないけど」

「魔族って本当に強いのよね。Sランクでやっと相手できるレベルなんだもの。できれば戦いたくはない相手だわ」


 現役のSランクがそこまで言うとは、よっぽど強いということか。


「戦うかどうかの決め手は何だ?」

「基本的には、あちらが近づいてきたら自衛手段として仕方なく応戦するって形かな。近づいてこないなら様子を観察だけして、魔国の方角に帰っていけば僕らの任務は終了だよ」

「そういうことか、理解した」


 俺たちは4人で協力して魔族を探すことにした。


「まあ、あんたたちが来てくれて助かったわ。魔族を相手に2人がかりじゃ荷が重いもの」

「ウルルも力になれるよう頑張るのです」

「3人とも、空を見ろ」

「空?」


 そこには、恐竜に似た大空をはばたく灰色の生物がいた。


「プタラノドンだ、気をつけろ!」


 プタラノドンと言うらしい魔物は目ざとく俺たちを発見し、空中から俺たち目掛けて魔法を放ってくる。


「ライアン、あんたは魔族とのために魔力を温存しときなさい。ここは3人で片づけるわ」


 シェリーがそういって炎魔法を放つ。しかし、プタラノドンはそれを悠々と交わした。


「手ごわいわね……!」

「落ち着け、シェリー。相手の動きを予想するんだ。そして、翼を狙う。そうすれば飛べなくなって落ちてくるぞ」


 俺はそういいながら、自らで実践して見せる。翼を打ち抜かれたプタラノドンは無様にも地に落ちた。


「な、なんて発想よ……って、呆けている場合じゃないわね! 翼を狙うわ!」

「落ちてきた魔物の処理は僕に任せて」

「頼んだぞ、ライアン」

「ウルルもやってやるのです。なのです~!」


 一致団結した俺たちによって、プタラノドンはみるみるうちに数を減らしていく。そして最後の一匹をライアンが処理した。


「ふう……これで一安心だね。シュウの助言がなければ苦戦は必至だっただろうけど」

「ご主人様のアドバイスはいつも的確なのです!」

「そうね、感謝するわ」

「いや、今回の勝利は俺のおかげじゃない。俺たち全員の勝利さ。だろ?」


 俺は3人に親指を突き立てた。


「か、かっこいいのです……!」


 ウルルのキラキラと輝くクリアブルーの瞳が俺を食い入るように見つめて離さない。

 まったく、人気者はつらいぜ。












 プタラノドンを倒した俺たちはしばらく砂漠の中をさまよう。次に異変が訪れたのは、数時間後のことだった。

 俺の眼が代わり映えのない砂漠に起きた異変を察知する。


「……おい、何かが砂埃を上げながらこっちに向かってきてるぞ」

「あれは……角が生えてるのです!」

「間違いない、魔族だね」

「何か叫んでるわ! ……威嚇してるのかしら。なら、戦うしか……!」

「いや、待てシェリー! ここは俺に任せてくれ」


 俺はシェリーを制して単身で一歩前へと踏み出した。

 砂埃を上げながら接近していた魔族は、急に減速する。そして俺たちに向かって言った。


「Who are you?」


 魔族が話しているのは、まぎれもなく英語だった。

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