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15話 名は体を表す

 「……ウ様。……シュウ様!」


 俺は誰かからの呼びかけで目を覚ました。今は……午後か。どうやら寝すぎてしまったかもしれない。

 俺は目の前のにいる人物を確認する。


「……ん、なんだ? ミリアか?」


 そこにいたのはミリアだった。ここは俺の家だから、ウルルが起きてミリアを迎え入れたのだろう。

 ミリアはなにやら大層慌てた様子だ。


「はい、ミリアです。急で申し訳ありませんが、至急お伝えしておきたいことがあります。王様が……王様がシュウ様を呼びにやってきます!」

「王? そんなやつが俺に何の用だ?」


 全く心当たりがないのだが。


「食生活の改善と2足歩行、それに加えて今回の冷蔵庫。シュウ様の成果を聞いた王が『ぜひ会ってみたい』と申されまして、使者をこちらに送っているようです」

「今は眠いから断ろう、な、ウルル」


 俺はそわそわとしているウルルに話を振った。ウルルだって眠いはずだ。第一急に会いたいなどと言われてもこちらは別に会いたくなどない。


「それはできないのです、ご主人様。王様は絶対なのです。逆らったら死刑なのです」

「……なんだと?」


 俺は真偽を確かめるべく、ミリアの方を向く。

 ミリアは気まずそうに首を縦に振り肯定を示した。


「ウルルの言うことは本当です。シュウ様は知らないだろうと思い、使者に先んじてここを訪れたのです」

「そうか……ありがとな、ミリア」

「ありがとなのです、ミリア」

「いえ、私としても2人にはなんとか穏便に済ませてほしいですから。シュウ様、今代の王様は……誤解を恐れずに言いますと、かなりの愚王です。シュウ様の素晴らしい功績を理解しておられない可能性もありますが、何卒広い心で許してあげてください。愚王でも、権力だけは一人前です」

「……そんなにか」


 ミリアが人の悪いところを言っているのを初めて聞いた。聖女のような人間にそこまで言われるやつなどには到底会いたくないのだが……。


 そんな時、玄関の鐘が鳴った。


「来たようですね。どうぞ、お気を付けて、シュウ様、ウルル」


 ミリアは心配そうに俺たちを見る。


「わかった、忠告感謝する」

「ミリア、ご主人様はウルルが守るから、安心して待っているのです。心配しすぎると、ウルルのように昇天しちゃいますよ?」

「うん、わかったわ」





 玄関には立派な鎧を着た兵士が待っていた。


「突然のご訪問、お許しください。シュウ様に我が国の王、クオウ・グーオウから招待がかかっております。至急馬車にお乗りください」


 兵士は本当に申し訳なさそうに俺に言った。どうやらこの人間はまともなようだな。

 そりゃ、愚王に仕えているからと言って愚かな兵士であるとは限らないよな。


「いくぞ、ウルル」

「わかったのです」


 俺とウルルは馬車へと乗り込んだ。


 そして馬車に乗ること10分、俺たちを乗せた馬車は王宮へとたどり着いた。


「私の後についてきてください。国王がお待ちですので」


 兵士の後に続き、俺たちは立派な門構えの屋敷へと足を踏み入れた。


 王宮については、「金がかかっている」という印象だ。複雑な意匠をふんだんにこらし、絵画や彫刻が並べられている。


「いくらなんでも金をかけすぎじゃないのか?」


 俺は兵士にそう尋ねてみた。いくら王宮としての拍が必要だといえ、ここまでお金をかけるのはいかがなものなのか。


「私どももそう思ってはいるのですが、なにぶん王が望まれるので……。ここだけの話、国家予算の4割を王が私的に使用しているという噂もあるくらいです」

「それは酷いな」

「許せないのです」


 国民としてはたまったものではない。


「なんでそんなやつが王なんかやれてるんだ?」

「世渡りだけは上手いんですよ。その才能だけなら国で一番ではないかと」


 王についていい評判をまだ一度も聞いてないぞ。会う価値がなさそうで、会うのが本当に嫌になってきた。


 そうこう話しているうちに王の間へと到着した。

 王の間はこれまでに増して高級な飾りがこれでもかと散りばめられていた。


「過ぎたるは及ばざるがごとし、という言葉は至言だな」

「ゴテゴテしすぎで逆に安っぽいのです……」

「否定できないのが我々の辛いところです」


 門の前で王に文句を言い、俺は扉を開けた。

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