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14話


読みは外れなかった。読み通りに魔女リンゴと銘打った我が村のリンゴは売れに売れた。

吟遊詩人が面白おかしく物語をつくり、毒リンゴの話も盛り込んでくれて、大陸を歌い歩いたも良かったのだろう。

人手不足は解消されてはいないけど、何人かは戻ってきてくれた人もいるから、嬉しいことだ。リンゴを売りに出さなくとも村にいるだけで売れるのだからこんなにいいことはない。

冬前の蓄えはあるだけいいし。

ただ、物足りない感じはどうしても感じた。売れなくてもお兄さんに会いに行っていたあの頃、今じゃお兄さんが何してるか分からない。

スノウがたまに送ってくれる手紙に書いてあったが、王都でスノウを助けているわけではないようなのだ。

何処に行ったか分からない、と。

あの村にも戻ってないのかもしれない。

捜しに行こうとは思った。だって、あの時なんでサーシャルを誘ったように誘わなかったのかとか、告白しとけば良かったとか、思ってたから。

今わたしはあの森にもう一度入ろうかと思っている。というか、森の一歩手前まで来ていた。

お兄さんがここにいるか分からないけど、あの時みたいにお兄さんに会えるかもしれないっていう思いが消せなかった。

「……よし」

気持ちとしては、よし行くぞと思っていた。

「よしじゃねえだろ。馬鹿やってんな」

馴染みのある声だ。振り返った先には相変わらず綺麗とは言いがたい格好だ。でも、清潔そうな格好になっていた。染み一つないシャツとズボンなんて持ってたのか。

「なんで、」

「こっちが言いたい。危ないだろ」

「そう、だったね。でも、ここに入れば会えると思ったんだ。お兄さんに」

「……今会っただろ」

「そうだね。でも、わたしは」

会いに来てほしかったよ。

そう言ったときのお兄さんの顔はすごい複雑な険しい顔だった。

「あのエルフと上手くいってんだろ」

「上手くってなにが? 確かに村には上手く馴染めてると思うよ」

「付き合ってないのか? 」

「サーシャルなら村に戻ってきた女の子と婚約したよ」

「は? 」

「来月入籍だって。そういうお兄さんこそスノウとはどうなの? キスまでして姿くらませるとか流石に酷いと思うよ」

お兄さんの細い目はさっきから丸いままだ。

「……キスしてねえよ」

「は? 」

いやいや、そういう流れだったじゃん。否定しなかったし。

「え、なんで? 好きなんでしょう? 」

「いつ言ったよ、そんなこと」

言ってはいない。確かに言ってはいない。

わたしの勘違い?

「でも、」

「エラ。わかれ。言わなきゃ分からないか? 」

「だって、否定しなかったよね。好きだって。ならスノウはどうやって目覚ましたの? 」

「喉に引っ掛かってたんだよ。リンゴの欠片が。体を倒したら出てきた」

「出てくるか、んなもん」

そんなことあり得るわけないじゃない。真面目な顔して冗談いうなんて、変だ。

「出てきたんだよ。そうじゃなくても俺はしてない。惹かれてたのは否定しないが、それはエラに会ってなかったらの話だ」

「は? 」

「ガキだからとは思ってたんだがな、駄目だった。おまえじゃなきゃ駄目だ」

好きだと言われるより恥ずかしい言葉を聞いた気がする。

「もし、もし、お兄さんが本気ならわたしの村で、わたしの家に来てくれる? 一緒にお墓入ってくれる? 」


「ああ、エラがいいなら」

じゃあ、これからお兄さんのことちゃんと名前で呼ぶよ。


「……ライリーってこれから呼んであげる」


リンゴ売りはこうして想いを実らせ、幸せに暮らしましたとさ。

エルフに見守られ、女王を友達にもち、好きな人とお墓を共にした。

語られはしなかった物語の続きだ。


めでたし、めでたし。



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