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11話


スノウにはすぐ会えた。


お兄さんの背中で寝ていたから、本当にすぐだった。

台座に横たわっていて、エルフの王子が手を握っていた。

「ああ、生きてたんですね」

エルフの王子は目を向けることもなく、スノウに目を向けたまま話していた。

エルフは人に関心がないとはよく言うが、これは酷い。誰のせいでこうなっているのか教えてあげたいぐらいだ。

「スノウは……駄目だった、か? 」

「ええ、私では駄目でした」

「そうか」

二人とも暗い表情だ。お兄さんはわたしをそっとスノウのそばに座らせた。動けないから。

スノウの頬はあの薔薇のような色もなく、子供のように輝いていた目は閉じられたまま、その手は冷たい。

「私としたことが、あんな狂言を信じるなんて、馬鹿でした。彼女が生き返るなど」

スノウから目を王子に移すととても冷めきった目をして自嘲していた。

「……外へ出ています。あなた達も話しておきたいことがあるなら今のうちにすませておきなさい」

王子が完全に居なくなったところでわたしは少し離れた場所にいるお兄さんをみた。

「生き返るってなに? 」

「魔女が言ったんだよ。愛したものとのキスで目覚めるってな」

「あの人、やったの? 」

「だろうな」

確かに彼は全身からスノウ愛してますと言っているように感じられたが、スノウはそうだったのだろうか。

わたしたちは短い間しか一緒に居なかったけど、スノウは恋愛に疎そうだった。お兄さんのやることなすことに頬を赤くしていたから、あの人よりお兄さんのが好印象だろうに。

「お兄さんがやってあげたら? 」

「……冗談だろ? 」

「だって、お兄さんスノウのこと好きでしょう」

認めるのは嫌だった。わたしもなんだかんだでお兄さんが好きだから、スノウにとられるのが嫌だった。


お兄さんは何も言ってくれなくて、わたしはスノウに声を掛けるのも忘れて外に出た。

後はお兄さんが決めることだから。

外に出て、自分がどこにいるか分からなくなった。

一面木に覆われていて、石でできた家が淡く光っていて、歩いている人みんな耳が尖っていた。

顔の前を光が何度も横切り、深く息を吸うと新鮮な空気が感じ、幻想的な光景だ。

「それは妖精ですよ。あなたを歓迎しているようです」

近くを通った男の人が光の正体を教えてくれた。

妖精、なんて馴染みのない言葉だ。エルフもドワーフもそうだけど、おとぎ話の中の話だと思っていた。迷いの森だってただ深いだけだと思っていた。


一生分の体験をしてきた気がした。

まだ何も終わってはいないのだけれど。


スノウがいた場所は教会として使われていたらしく、言われれば台座もあるし、長椅子もあった気がする。

通りがかりの男の人は通りがかりではなくて、見張りの人だったらしく、熱々のスープともちもちのパンをくれた。なくなれば追加してくれる。


お兄さんはどうするかは分かりきっている、か。

やってもやらなくてもこれ以上悪い方にはいかないわけだし。

「ローウェン様を恨まないでくださいね」

「え? 」

「あの方にとってスノウ様はかけがえのないお人なのです」

「スノウにとっては違ったみたいだけどね」

一方通行の想いほど報われないものはない。

「これは手厳しい」

「でも、スノウが生き返ればチャンスはあるかもね。わたしも王子も」

わたしは思うのだ。

死ぬことが一番相手に想いを伝えるのに効果的だと。

だって、自分は好きでもないけど目の前で自分を好きだって人が死んだら、それから目は背けられないでしょう。

わたしならそうする。お兄さんが愛してくれないなら、お兄さんの前で死んで、お兄さんにとって忘れられない思い出にしたい。


「……生き返った、みたいだね」

お兄さんと一緒にスノウが出てきた。

悔しくて、嬉しいのに喜べなかった。




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