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10話

わたしは雑に袋にくるまれて馬に乗せられた。彼らがなんであそこにいるのかもスノウがどうなったのかも、止めようとしたお兄さんがどうしたのかも結局分からないけど、多分知るすべもないと思う。


だってスノウは死んだ。

わたしが殺した、ことになるのだろう。

だから、わたしは人殺しとして殺されるのだろう。


エルフの人達から王国軍にかわり、王国に向かっていた。

じめじめとした牢屋で女王と顔を会わせてここが王国だと確信した。

「あなたには感謝しているわ。王女を殺してくれるなんて、褒美をあげなきゃね」

「なんで、? わたしは人を殺して」

「違うわ。いえ、違わないわね。あの子は死んだ。あなたが毒リンゴに気付かなかったから、死んでしまったのよ。でも、私はあの子に死んでほしかったの」

「そんなの、って」

「でも、そうね。どうしても償いたいというなら、私が貰ってあげるわ」

「何言って……」

女王が怖い。

咄嗟に後ろに下がって距離をとる。わたしたちには牢屋という檻を挟んでいるけれど、それでも彼女がすぐそばに立っている気がしたのだ。

「心臓が私ほしいんですの」

「……」

自分の胸を見た。先程からドクドクと激しく恐怖している音を奏でる心臓。

それをどうやって? どうして?

「あなたには教えて差し上げるわ。褒美としてね。あなたの心臓は私の美しさを保つための一部となるの。あの子も鏡が言わなければすぐに体の一部となっていたものを。ふふ、まあいいわ! あなたのもとってもおいしそうだから」

そう言って彼女は腕を伸ばした。檻なんてものは初めからなかったかのように格子から腕が抜け、体が抜けようと……、

「女王様! 至急ご報告申し上げます! 門の前でなにやら騒ぎがおきているようです! 王女様が生きていると言っていまして……」

「……戯言を。いいわ。すぐ行きましょう。あなたは後で、ね」

女王は檻から何事もないように腕を抜くと歩き去って言った。呼びにきた近衛もこちらを見ることもなく、後に続いていった。

ここで意識を失えればもう怖いもなにもないのだけれど、実際はそうも行かなかった。

牢屋の前に見張りはいなかった。逃げることを想定していないのか、それとも必要がないのか。分からない。

ただ、誰も来ないのでパンの一つも差し入れがなくて、備え付けでおいてあった水も残り少なくなっていた。


流石に死ぬかもしれない。

いつもと同じ飢えを感じながら、これが当たり前になったのがいつだったか思い出す。

お婆ちゃんが死んで、お父さんが帰ってこなくてお母さんが死んだ、何年も前のことだ。村のみんなは優しくしてくれた。老い先短いからとご飯を分けてもらったことあった、その代わりのようにリンゴの世話を率先して行った。


懐かしい、すごく遠い。


「…………エラ!? エラ、起きろ! 寝るな! 」

声だ。わたしを呼んでくれる。わたしはこの声が好きだ。いつもリンゴを買ってくれるし、会話にも付き合ってくれる。優しくしてくれるから好きだ。

言う機会がなちと思うけど、本当に好きなんだ。

「ライ、リー? 」

わたしを抱き起こしてくれる腕に初めて触れた。かさついた手が前髪をかき分け、頬を軽く叩く。

それがとても心地好い。

「本当に……スノウ、殺しちゃったのかな」

「おまえのせいじゃない。大丈夫だ」

「本当? わたしここから出れる? スノウにも会える? 」

「ここから出れるし、スノウにも会える」

ゆっさゆっさと揺れる体はお兄さんの背中と触れていた。顔を押し付けると汗の匂いがした。お兄さんの匂いだ。

「あの、人は? エルフの……」

「あいつはスノウについてる」

「この斧、なに? 」

「貰ったんだよ。魔女を倒すためにな」

お兄さんの腰に掛けてあるから足が当たって痛い。けど、言わない。いったら歩かなきゃいけないかもしれない。

「魔女なんておとぎ話だよ」

「そうだな。そうだと良かったよ」


背中から顔を離してお兄さんの顔をみた。いつになく真剣な顔をしていた。



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