終わりと始まり
大学が決まり、高校の卒業まで数日となったある日、家でゴロゴロしていたら親に牛乳を買って来てほしいと頼まれ、シエルはコンビニに向かって歩いていた。
「後少しで卒業かぁ~。高校生活も終わりだし、大学入ったら1人暮らしだし楽しみだな。」
シエルが新しい生活に思いを馳せながら歩いていると交差点で信号待ちをしている女の子が見えた。
シエルが交差点の方に近づいているとキキィーというブレーキ音と共にトラックが女の子に向かって突っ込んできた。
「危ない!」
シエルは女の子に向かって駆け出した。
「間に合え!」
女の子を突き飛ばすとドンッという音と共にトラックとぶつかった衝撃と浮遊感がシエルを襲った。
トラックが走り去る音とシエルに近づく小さな足音が聞こえる。シエルがゆっくり目蓋を開けると、泣きながらシエルの顔を覗き込む女の子がいた。
「だ、大丈、夫?怪我は、無い?」
女の子は涙を腕で拭いながら頷いた。
「そっか、よかった。」
シエルは再び目を閉じると、此方に向かってくる救急車のサイレンの音を聞きながら意識を深く沈めていった。
ーーー???sideーーー
ベッドとテーブルだけの真っ白な部屋にベッドに寝かされたシエルと、男女問わず惹きつけるような美女、シエルが助けた女の子がいた。
「この子があなたを助けてくれたの?」
「うん。」
「じゃあ目を覚ましたらお礼をしなきゃね。」
「うん!おかーさん。このおにーちゃんね、スッゴく綺麗な目をしていたんだよ。」
「それは楽しみね。それはそうとリュミ?何故勝手に下に降りたの?」
女性の顔は微笑んだままでも、纏っている雰囲気が怒りを表している。
「え、えっと、下に行ったことがないからどんなところか気になって・・・」
「はぁ、まったく。私に言えば良かったじゃないの。」
「ご、ごめんなさい。」
「罰としてこの子が目を覚ますまで面倒看なさい、出来るわね。」
「うん。」
「ならしっかりね。私は部屋に戻るわ。」
「はーい。」
「目を覚ますのは3日後かしらね。」
女性は呟きながら部屋を出て行った。