55最終話
もうもうと立ちこめる煙に何も見えなくなったが、それも一瞬のことだった。意外と近くににオーウェンがみえる。無事だったか。良かった。
ロイズは……?
いた。遠くに倒れている。様子はよく分からない。
思わずオーウェンを見ると目が合った。微妙な顔をしている。彼自身、止めを刺せたのかどうか分からないのだろう。オーウェンと共にゆっくりとロイズに向かって歩を進める。緊張で握りしめていた拳はそのまま固まってしまっていた。
そっと顔を覗きこむ。見てわかる程度には呼吸があった。まだ生きている。しかしもうほとんどの魂が流れ出してしまったのか、蒸発していく魂は無かった。
「もう、終わりだな……」
今にも途切れそうな、かすれた小さな声でロイズは言った。しかし、言葉は続く。
「……俺は、今までたくさんの悪事ってものを働いてきた。俺の住んでいた町が燃えてからずっと……。でも、それを悪い事だなんて一ミリも思ったことは無かったんだ。だって、俺には夢があったから。世界を平和にしたいって。その為ならなんだってしようと思った……。そんな俺についてきてくれた人達もたくさんいた。なのに……、俺は……。間違ってたのかな。ははっ。どこで道を間違ったんだろうなぁ…………。なあ、リリア……」
ロイズの瞳はどこか遠くを見つめたまま、動かなくなった。
「ロイズ……」
こぼれ落ちた言葉は、誰のだったのだろうか。
「アズ……、行こう」
「……ああ」
二人とも声がかすれていた。
ロイズの、その先にある扉に向かって歩き始める。長くて短い距離だった。
扉の前まで着くとオーウェンはじっと一点を見つめて言った。
「なあ、やっぱり俺には扉は見えない。……でも 、鍵穴が見える」
「鍵穴?そうか、その為のお前、だったのか。鍵穴があるなら鍵がどこかにあるはず……」
「鍵……」
ふと見ると、オーウェンは右手を上着のポケットに入れていた。でも顔は前を向いたままだ。そしてそっとポケットから手を出した。右手には、小さな鍵が握られていた。
「その鍵は?」
聞くと、
「……え?や、よく分からん」
ハッとしてこちらを振り返った。そして続けた。
「よく分からないけど、とりあえず差し込んでみよう」
そう言って少し笑った。泣きそうな、困ったような表情も混ざった顔。
ゆっくりと鍵を差し込んで、右に180度回す。
ガチャリ
開いた。
俺は…私はドアノブをひねって、扉を、開いた。
うまく終わらなかった……




