51一瞬の現実逃避
例のあの日々…
ニスモで俺が助けられて強制的に修行をした日々である。
まあ一言で言えば、辛かった、に尽きるのだが、充実した日々 、と言えばそうだったかもしれない。
「光…の属性…」
あいつの声で過去に飛んでいた意識が戻ってきた。
はっ!こんな余裕こいてる場合じゃない。
再び剣を振るう。
切っ先が奴に触れる。
先程よりは効いていると言えなくもない。
思い出す。あの人の言葉を。
『敵の表面ではなく、核となる部分を切るイメージで常に攻撃しろ』
核となる部分…。
イメージするんだ。
剣が触れあう度に火花が散る。そこから一歩退いてすぐさま右下から左上に向かって切りつける。だが脇腹辺りで遮られた。しかしそれは想定内。即右手を剣から離し胸の内ポケットからダガーを取りだして思いっきり左から切りつけた。
すぐに1メートル程離れる。
あいつの、顔が、ぱっくりと裂かれていた。
…
…
…何かおかしくないか?
何故血が流れない?
と思った瞬間、黒い液体が溢れてきた。溢れてきた液体はそのまま顎を伝っていくが、空中に放り出された瞬間真っ白になり、ジュワッと音をたてて蒸発した。
後から後からぼたぼた落ちていくのに、地面には一粒も到達せずに蒸発していった。
「…な…」
言葉が出ない。