4目的
「自己紹介も終わったし、次は目的だろ」
歩きながらオーウェンは面倒臭そうに言う。
そんなに面倒臭いなら聞かなければいいものを。
「何でアズは旅してんだ?」
「…いきなり馴れ馴れしいな。そもそも何故アズなんだ?」
「だってアストラムって長いし、呼びづらいし、アスって変だしトラムって感じもしない。だから、アズ。別に偽名なんだろ?」
途中から「聞かない」を選択した。
雨が降りそうだ。
「で、目的は?」
「まあ、大したことではないんだが…。いや大したことなのかな…」
アズは話し始めた。
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俺の一族は代々、泉を守護する家系でな。今守護しているのは俺の叔父だ。
だが先日、叔父から手紙が来て、いろいろあって守護者を交代することになったんだ。でも、俺の出発する日の前々日、村で火事が起こって殆どの人が死んだ。
唯一泉の場所を知る長老も亡くなってしまい、場所が分からない。
「だから、この世界中旅をしているんだ」
「そうなのか。…どーでもいいこと言って良いか?お前、一人称俺なんだな」
本当にどうでもいいな。
表には出さないが。
話している間にかなりの距離を歩いていた。
そしてついに雨が降り出してしまった。
「あ、雨だ」
「走るぞ」
「…え?」
「濡れたくないんだ。それに、もうすぐ宿に着くはずだ」
そう言って駈けていった。
仕方なく後に続く。
雨はどんどんその量を増していった。