30あの方
夢から4日後
ガチャリ、と重い扉が開かれた。
少しずつ光が差し込む。眩しくてアズは目を細めた。
「立て。歩けるか?」
と、聞きながらも答えは聞いていない兵士に連れられた。アズはふらふらしながら必死に階段を上った。そして、最上階の牢獄に容れられた。
何故地下牢に容れられたのか理解に苦しむ。
暫くすると牢獄の扉が開かれた。
「こちらです」
国王に連れられて入ってきたのは初老の男。
豪奢な服だった。
「間違いない、こいつだ。お前らは下がれ。少し、話がしたい」
そう言うと国王らを部屋から出した。
「あんたは誰だ?」
「もう忘れちゃったかな?僕だよ」
ばさり
と、ローブを脱ぐと現れたのはロイズだった。
「な…!」
「そんなに驚いてくれるなんて、嬉しいなぁ。今まで化けてた甲斐があったよ」
「それは…魔法なのか?」
「そうだけど?あぁ、皆こんなには出来ないんだっけ」
信じられなかった。
魔法なんて日常範囲内くらいにしか普通出来ない。小さい火を出すとか、ちょっと物を浮かすとかその程度だ。もう少し出来る人はアズのように武器化することも出来るが、姿形を変えるなんて聞いたことも無い。
しかし、とにかく冷静にならねば。
「で、俺をどうする気だ?」
「夢の世界を利用する」
「だと思った」
「それしかないでしょ」
「今すぐあんたを連れて行くわけじゃない。もう少ししたら面白いモノが見れるから、それまではここに居ようと思っている」
「面白いモノ?」
「そう。もう少ししたら、ここに暴徒化した国民が来る」
そういう事か。
おそらくローイ帝国は急激な発展により人口が増え、食糧不足や水不足その他諸々の問題が出て来た。しかしその問題を解決するだけの財力などがこの国には無い。そこで助けを求めた先が(経緯は分からないが、)こいつだった。でもこいつには国を救う気が無い。俺を捕まえる為だけに王の話を利用したにすぎない。
「じゃ、そろそろ行くよ。やることもあるし」
再びローブを被ると始めの初老の男に戻った。そしてそのまま部屋を出て行った。
去り際にニヤリと笑って。