20理由
大体の所、人を庇って自ら犠牲になる奴は漫画の読みすぎだと思う。
アズがわざわざ犠牲になったのは、別にオーウェンを助ける為ばかりではない。確かにそれもあるけれど、理由としては全体の20%位にしかならない。
一番の理由としては、こいつらがローイに連れて行ってくれると言っているのだから極端に言えば渡りに船だったからだ。だから、これに乗らない手は無かった。旅費はかからないし、楽である。もっと上手くいけば、そのままローイに行くよりもあるいは内情をより詳しく知る事が出来るかもしれなかった。
「しっかし、何を考えてんのかね、うちの帝は」
「本当だよな。いきなりコイツを探せとか言ってきて。しかも手掛かりは一枚の写真とトライトで用心棒雇った、って事だけ。意味分かんねぇよ」
「大体の所さぁ、今こんな奴探してる余裕ないだろ。国的に考えて」
余裕ねぇ…。
どういう事になっているのだろうか。
荷台に転がりながら考える。
未だにアズが気絶している筈、と思っている男達は話し続けた。
「もう田舎の方は土地が痩せて仕方ないらしいぞ。何にも育たない。焼き畑だって、限界があるし」
「国債も過去最高額に達したらしいし、一部の地域では伝染病が蔓延しているって」
どこまでが本当なのだろうか。噂で聞いたような話し方なので、信頼性がない。
でも、それらが全て本当だとしたら。夢の中では何が起きてもおかしくない。そこを利用してどうにかしてくれ、とか頼まれるかもしれない。
最悪だな。
…自分の妄想により勝手に一国の帝を軽蔑してしまったが、そうでないかもしれないだろ?行ってみなければ分からない事だってある。
夢?…あ、夢で待ってないといけないんだった。忘れるところだった。
面倒くさいなぁ。
アズは欠伸をひとつかみ殺して、眠りに落ちた。